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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL28

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「……ジェラルド? っ!? もしや私は……!」
 イリスは上体を起こし、自らの手の裏表を見て、何度か握って開いてを繰り返した。そして自らの姿にぎょっとした。
「きゃあっ!? 何で私こんな格好を!?」
 イリスは顔を紅潮させ、慌てて自分の肩を抱いて乳房を隠した。
「あの、それは……ええい! 時間がない、理由は後で話すし、いくらでも謝る! みんなを止められるか!?」
「皆さんを、止める? 一体どういう……」
 イリスははだけた胸元を直すと、すぐに気が付くことになった。
 ロビンにメガエラ、そしてそれぞれに味方する者が、互いに殺し合いを行おうとする一触即発の状況だった。
 ガルシアだけはどちらにも味方することなく、何が起きているのか、事態が把握できていない様子だった。
「できるか、イリス?」
 状況を目の当たりにした後、イリスは少し驚いている様子を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻した。
「この部屋一帯に呪詛がかかっていますね。ですが、私の力をもってすれば……!」
 イリスは立ち上がろうとした。しかしふらつき、地面に膝をついてしまう。
「おいおい、大丈夫かよ!?」
「……平気です。石に封じられていた時間が長すぎて足元がおぼつかないだけです。それよりも早く……!」
 イリスは立ち上がらずに、背中の翼を羽ばたかせて宙に浮き始めた。
 そして浮遊しつつ、ジェラルドに声をかける。
「この部屋にかかる術は、あの二人に強くかかっています。私の力だけでは、二人の魔術を解くのに少し時間がかかってしまいます。その一瞬で戦いが決まってしまうかもしれません。そこでジェラルド、あんな姿にした責任というわけではないですが、あなたにも手伝ってもらいます」
「オレが? 一体何をすりゃいいんだよ?」
「もうお話している時間はありません。手段はお任せします!」
「そんな無茶な!? ぐわっ!」
 イリスはジェラルドに丸投げするように言うと、翼を大きく広げ、浄化の光を放った。
「眩しいっ!」
「何だ!?」
「あれは、イリス様!?」
 不意の眩しき輝きにより、一同の視線はイリスに向いた。
「イリスが!?」
 魔術の影響を非常に強く受けていたロビンとメガエラの二人の目も、イリスの虹色の輝きに奪われていた。
 好機だった。これを逃せば、もうチャンスは絶対に訪れない。
「うおおお!」
 ジェラルドは本能のままに駆け出していた。この絶好のチャンスを逃すまいという思いを一つに。
 何故このような行動を取ったのかは分からない。分からないが、ジェラルドは、イリスの光に見とれるロビンとメガエラの頭を掴んでいた。
「喧嘩両成敗だ!」
 そしてジェラルドは、掴んだ二人の頭をぶつけ合った。
 その後、デュラハンが残していったと思われる魔術はすべて消え去り、全員が正気に戻った。
 後になってからジェラルドはあの時、どうしてロビン達の正気を取り戻すためにあのような手段に出たのか分かってきた。
 それは、ジェラルドがまだ幼い子供だった時の話である。
 おてんばだった姉とよく喧嘩していたジェラルドは、母から姉と喧嘩する度に、このような制裁を受けていた。
「喧嘩両成敗! ごっつんこ!」
 その後は姉と二人で、夜になるまで外に放り出されていた。
 苦い幼少期の思い出が、ジェラルドを反射的に行動させていたのだった。
    ※※※
 ジェラルドから全てが語られ、一同は筆舌に尽くしがたいもどかしさを感じていた。
「オレ達はまんまと奴の術中にハマっちまってたってわけか。……ククク……笑えねえ冗談だ」
 一つでも何かが欠けていたら、ここにいる全員が殺し合い、更に運が悪かったら全滅していたことだろう。シンは悔しそうに拳を握った。
「俺としたことが。術に惑わされることはなかったが、豹変した皆を前に何もできずに戸惑うばかりだった……」
 ガルシアも苦言を呈する。
「まあまあ、気にしたってしょうがねえよ!」
 すっかり重苦しい空気になってしまった場を和らげるため、ジェラルドは努めて明るく振る舞った。
「幸い、殺し合いは起こらなかった。それだけで奴の目論みは破れたんだ。今やることは、どっかに逃げたデュラハンを見つけて、今度こそ奴をぶっ倒してやる。そうだろ、みんな!?」
 ジェラルドが言うと、顔に暗い影を落としていた一同の表情が少しずつ和らいでいった。
「確かにジェラルドの言う通りだ。今ここで悔やんでても仕方ない。早くデュラハンを見つけてオレが……」
「フフフフ……」
 ふと、ロビンの言葉を遮るような笑い声が響いた。
「アッハハハハ……!」
 天を仰ぎ、狂ったような高笑いをするのはメガエラであった。
 メガエラの突然の豹変は、また魔術の影響を受けたかのようだった。
「……ふざけるなぁっ!」
 メガエラは剣に炎を込めて、怒りのままにデュラハンが座していた玉座に剣ごと放った。
 玉座は炎に巻かれる間もなく爆破された。
「許さない、許さないわデュラハン! この私を謀るなんて、殺すだけじゃすまないわよ!」
 メガエラの本性がまさに現れていた。敵と見なすものはどこまでも憎み、そして復讐を果たす。復讐の女神と呼ばれる彼女の怒りは計り知れなかった。
「消し炭にしてやる。いや、骨の一欠片すらも、魂も燃やし尽くしてやる。死神の餌にしてさえもしてやらないわ!」
「いつにも増して過激やなぁ、メガエラさん。まあ、だからこそ言わしてもらうけど、落ち着きや。メガエラさん」
 アズールが宥めようとした。
「うるさい! あんたごときが口出しするんじゃないわよ!」
 アズールの行動はしかし、火に油を注ぐ事となった。
「おわっ!?」
 先のように、メガエラはアズールに対して炎を纏った剣を投げつけた。しかし、アズールはとっさに屈んで剣から身をかわした。
 アズールを外した剣はそのまま飛んでいった。その先にあるのは、あろうことかシバが閉じ込められているガラスの柱である。
 剣は柱に直撃し、パリン、と割れてしまった。
「シバ!」
 柱に囚われていたシバは、支えを失い、そのまま前のめりに倒れてしまいそうになる。
 そこへガルシアが急ぎ駆けつけ、シバを抱き止めた。
「シバ、大丈夫か!?」
 ガルシアは呼びかける。
 シバは、この柱を介してデュラハンより生きる活力を与えられていた。それが壊れてしまった今、憔悴しきったシバに待ち受けるは死である。
「メガエラさん、何てことを!? あのお嬢ちゃんを柱から無理矢理出したらどうなるか……!」
「うるさい、うるさい! 黙りなさい! この私が謀られたのよ。人間の少女一人どうなろうと私の知ったことじゃないわ!」
 怒り狂うメガエラは、最早シバのことなどどうでもいいようだった。
「くっ! イリス、シバを助けてくれ!」
 デュラハンの活力を失い、最早死に近付きつつあるシバを救いたい一心で、ガルシアは懇願した。
 しかし、イリスのとった行動は、ガルシアの意思を無視するようなものだった。
「…………」
 イリスは無言でメガエラに一瞬で間合いを詰め、狂ったメガエラに平手打ちを放った。
 パシン、と音が高く鳴り響いた。