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黄金の太陽THE LEGEND OF SOL28

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 竜殺しの闘霊、ドラゴンスレイヤーになったロビンは、輝く金髪が少し伸びて、その瞳は澄んだ赤色に変わっていたが、今のロビンは、これまでのロビンと寸分違わない容姿をしていた。
 前髪をかき上げなければ見えなかった目は普通に見えており、その色は綺麗な青色であった。
「もとに戻ってる? ああ、言われてみればなんかメラメラする感じがないし、ちょっと邪魔だった前髪がみじかくなったなぁ」
 デュラハンと対峙していた時のロビンは、そこにいなかった。
 敵を容赦なく痛め付けるような非情さは見られず、青く澄んだ瞳はとても優しい印象を受ける。
「まさか、オレが喧嘩両成敗した時に、闘霊とやらの力も消えちまったんじゃ……!?」
 ドラゴンスレイヤーの力によって、ロビンはデュラハンを止めを刺す手前まで追い詰めた。
 しかし、デュラハンは行方をくらまし、倒すまでには至っていない。ロビンの力が消えてしまったのであっては、デュラハンを滅ぼす手段もなくなってしまったことに等しくなる。
「闘霊の力は消えたりしないわ」
 ヒナが言う。
「ロビンの力は、竜殺しの能力は消えてない……」
 ヒナは、その翡翠色の天眼を凝らし、ロビンを見つめる。
「ヒナ、さん。少し近いですよ……」
 キスでもされそうなほど顔をちか付けられ、ロビンはどぎまぎしてしまう。
「あら、あたしったら、ごめんなさい。でも分かったわ、ロビンが今どんな状態なのかね……」
 ヒナはロビンから顔を引いた。
「ロビンの闘霊化はまだ完全じゃないみたい。破壊衝動が意思を持っていた時みたいに、まだ衝動に任せてしまうところがあるわ」
 ヒナの言うように、ロビンはデュラハンを完膚なきまでに痛め付けていた。思わず目を背けたくなるほどに非情に徹していた。
「さっきロビンはメラメラする感じがあったって言っていたわね。それが破壊衝動よ。闘霊になって理性を保てるようにはなれたようだけど、まだ感情的になる所があるわ。ロビン、ちょっと力を解放してみてもらえるかしら?」
「分かりました……」
 ロビンは目を閉じ、集中した。
 胸の奥に、竜殺しの闘霊たる力の核を感じる。ロビンはそれを全身に流れる血のごとく身体中に満たした。
 全身に熱き闘霊の力が駆け巡った瞬間、ロビンに変化が起きる。
「はああっ!」
 もともと金髪であるが、その輝きが黄金色となり、双眸は澄んだ優しい青から、激しさを思わせる真紅と化した。
「姿が変わった!?」
「ほらね、力は消えてないでしょ」
 誰かの驚く声とは対称的に、ヒナは全て分かっていたとばかりに笑った。
「どうかしら、やっぱり興奮する感じはある?」
 ヒナは訊ねる。
「……何かを壊したいような気はするな。力がわき上がって来て、これを思いっきりぶっ放したい気分だぜ……」
 ロビンは好戦的になっていた。デュラハンを追い詰められるほどの力も同時に再燃した。
「理性は保ててるわね。後は過剰な戦いへの欲求を抑えられれば完璧ね」
 ヒナは得意気に言った。
「ロビン、ちょっとあたしの目を見てくれるかしら?」
「うん? ああ……って!?」
 ロビンは言われたようにすると、ヒナは装束の胸元をはだけさせていた。
「ヒナさん、何をしているんですか!?」
 ロビンは驚きのあまりに変身が解けていた。
「何って、変化を解こうとしただけよ。いつまでも覚醒したままだと疲れちゃうでしょ?」
 ヒナはロビンの変身が解けたのを確認すると、胸元を整えた。
「もう興奮する感じは……いえ、別の意味であるみたいね。ロビンったら、最強の闘霊になっても中身は男の子のままなんだから!」
 ヒナはからかった。
「ぐう……」
 ロビンは赤面してヒナから目を逸らすのだった。
 ふと、ロビンの視線の先に、何かが転がっていた。
「あれは……」
 もとに戻ったロビンは、それを見て思わず顔をしかめてしまった。
「ん? どうかしたの、ロビン?」
 まるで醜い惨殺体でも目にしたかのようなロビンの様子を訝しみ、ヒナは訊ねた。
「あれ……」
 ロビンは指さした。その先に転がっていたのは、剣、そして斬り落とされ、どす黒い血にまみれる腕であった。
 ロビンがデュラハンに、イリスの居場所を吐かせるために、拷問するかのようにはね飛ばした右腕である。
「妙ね、相手が魔の存在なら、たとえ腕一本でも死神の餌食になるはずなのに」
 メガエラは、転がるデュラハンの腕を覗き込んだ。
「ふん、まあいいわ。右腕でも残ってるんなら消し飛ばして復讐する。こんなんじゃ全然足りないけど!」
 メガエラが炎の剣を取り、突き刺して焼き付くそうとしたときだった。
「待ってくれ!」
 ガルシアが叫び、メガエラの行動を制止した。
「何よガルシア、まさか私の邪魔をする気?」
「違う、そうじゃない。そうじゃないんだが、こいつが……」
 ガルシアは魔導書ネクロノミコンを手にした。
 魔導書はまるで生きているかのように脈動していた。それだけにとどまらず、カタカタと振動していた。
「黒魔術の魔導書がどうしたって言うのよ?」
「これは、魔導書に新たな術が記される前兆なのだ。何を媒体とするのかは分かりかねるが……」
 ガルシアの手にあった魔導書は、まるで抱き抱えていた猫が跳んで逃げるかのように、ガルシアの手を離れて宙を舞った。
 そして魔導書はひとりでにページをめくられ、新たなる術が記されるページへとたどり着く。
 そこは、左にページが、右に裏表紙という、本の最後のページであった。そしてそこには確か、術らしきものか記述されているが、一部途切れて記載されている術がある。
――あのページは……!?――
 ガンボマ神に認められ、黒魔術師としてずっとあの魔導書を持っていたガルシアには分かった。
 同じく黒魔術師として、ネクロノミコンを授かったアカフブには見ることすら叶わず、大陸一の鍛冶職人である、パヤヤームの祖母でも途切れ途切れにしか読めなかったあのページである。
 ふと、ぼうっ、とネクロノミコンが妖しい光を帯びた。同時に地面に転がるデュラハンの腕と剣も光に包まれる。
「おい、デュラハンの腕と剣が!?」
 次の瞬間、腕と剣がネクロノミコンに吸い込まれていった。そして腕と剣は、本と一体化し、飲み込まれていった。
 その様子はまるで、ネクロノミコンが生きており、腕と剣を捕食しているようだった。
 獲物を捕らえた蜘蛛が、その獲物へと消化液を流し込み、外郭ごと溶けたところを吸い尽くそうとしているようである。
 やがて、補食された腕と剣はネクロノミコンに取り込まれその姿を消した。
 デャラハンの腕から受けた血をたんまりと滴らせながら、ネクロノミコンは不気味な光ともに浮遊を続けていた。そしてパラパラと勝手にページが変わっていく。
「一体何が……?」
 ピカードが不意に声をあげた。
「気味の悪いものね……」
 ジャスミンは顔をしかめる。
「…………」
 ガルシアは、自分にしか見えない魔導書の文字を凝視していた。
 ネクロノミコンがデュラハンの腕と剣を食らい尽くす前、全くの空白だったページに、乾き始めた血のように茶色の文字があぶり出されるように浮かんでいく。