二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

黄金の太陽THE LEGEND OF SOL28

INDEX|8ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

――黒魔術を操り、魔なる存在を召喚し使役する者。汝は今や降霊術の最奥へとたどり着いた……――
 ネクロノミコンに綴られる文字は、黒魔術師であり、ネクロマンサーでもあるガルシアへ呼びかけるような文体であった。
 語りかけるような文字は、なおも綴られる。
――我は大悪魔の血肉を喰らい、汝に最後の召喚術を捧げん。顕現せし魔術、その身を以て発現せよ――
 血濡れた文字のネクロノミコンは、ガルシアの手に戻った。
 ガルシアは何気なくネクロノミコンのページを繰ってみた。これまでの術も合わせ、魔導書の文字は全て血で書かれたようなものになっていた。
 不気味な印象が強くなったが、見た目の変化だけでなく術の威力が格段に増しているのを感じた。
――これが、真のネクロノミコン……。最後の魔術とは……?――
 ガルシアは例のページへと戻った。そこにはしっかりと記されていた。これまで最後の数文字が途切れていたあの術が。
「……死神の長、冥界の案内人たる存在を使役せし大悪魔。顕現せよ!」
 ガルシアは詠唱した。
『サモンデュラハン!』
 すると、魔導書は不気味な輝きを発し、ガルシアを照らした。そしてそれによりできた影が地面に伸び、立体化していった。
「おいおい、嘘だろ……!?」
「この姿、この感じ、間違いない……!」
「でゅ、デャラハン!?」
 ガルシアの発現させたもの、それはまさしく、世界を混沌に陥れ、ロビンを殺害し、そして復活したロビンにより、あと一歩のところまで追い詰めた敵、デュラハンであった。
 しかし、実体化しているようでいてそうではなく、ほとんどが影の存在である。
 唯一実体があるのは、ロビンがはね飛ばした右腕とそれに握られていた剣だけであった。
――っ? これは……!?――
 ガルシアは異常を感じ、魔導書を閉じて術を停止した。波が引いていくように、デュラハンの影はネクロノミコンに戻っていった。
「ガルシア、今のは一体? それに何故そんなに慌てて術を止めたんだ?」
 全てが終息した瞬間を見計らい、ロビンが訊ねた。
「……皆、聞いてくれ。どうやらガンボマ神はとてつもないことを考えて黒魔術を利用したらしい」
 誰もがガルシアの話に疑問を持った。
「俺の使う魔導書は、大きく分けて三章で構成されている。一章はダークマジックの章。魂を直に刈り取る、猛毒の濁流を引き起こす、死霊を纏わせてやがて死に向かわせる。そんな呪詛の魔術を扱っている章だ。それから、デュラハンの弱点のひとつ、炎を使うこともできたな」
 これはガルシアが魔導書を授かってからすぐに使えた魔術であった。その瞬間に居合わせたジャスミン達は覚えていた。
「確かに、そうだったわね。シンが試してみろ、何て言ったものだからびっくりしたものだわ」
「そうか? オレ何か言ったか?」
 シンはまるで覚えていないようだった。
「……話しを続けるぞ」
 シンとジャスミンが言い争いになりそうになった瞬間、ガルシアは一つ咳払いをして話しを始める。
「第二章が、サモンの章。本来俺達の敵たる魔物を使役して攻撃する、もしくは融合したりして魔物の力をこの身に宿すものだ」
 デュラハンのしもべの一人、バルログとの戦いにて本格的に力を発揮した魔術である。この中には死神の力を使えるようになる術もある。
 これは先のデュラハンとの戦いにおいて大いに使用された。故に皆の記憶に色濃く残っていた。
「そして、これが最終章。といっても一つしかないのだが、初めてこのネクロノミコンをガンボマ神から授かった時から見えていたが、途切れていた魔術が記されたページ。デュラハンの章だ」
 かつて、黒魔術のような鍛刀技術を使用する、大陸一の鍛冶職人とされる老婆もネクロノミコンに記される文字を読むことができた。
 彼女によると、術は全部で十三とのことだった。
 全章頭から数えていくと、確かに十三個術がある。そして最後の十三番目、死神をも超える大悪魔を示すのに似合いの番号にその術はあった。
「十三番目、か。不吉な数字だな。デュラハンを呼び出すような術には確かに相応しいかもしれんが……」
 シンは言う。
「……それで、ガンボマとかいう神様は一体全体何をしようとしたってんだ?」
 ガルシアによる、魔導書ネクロノミコンの解説を受けた上で、シンが訊ねた。
「……大悪魔デュラハンはおぞましい強さを持っていただろう? ロビンが生き返らなかったら、間違いなく俺達全員が殺されていたほどにな。しかし、奴が大悪魔だろうが、魔王を名乗ろうが、奴もまた魔物の類。この魔導書を使えば奴を制することもできる」
 シンは聞かされてもいまいち理解には及ばなかった。他の者達も同様に疑問が顔に現れていた。
「……なるほどね、確かにその神様のやったことは邪法と言われても仕方ないのかもしれないわね……」
 いち早く理解に及んだのはヒナであった。
「姉貴、何でか分かったのか?」
「話しを聞いて、あたしなりにざっくりとまとめてみたの。着眼点は、サモンの章よ」
 ヒナは、ネクロノミコンのサモンの章の特性を考え、そして理解に至っていた。
 サモンの章、召喚を意味する言葉の通り、魔物や悪魔、果ては死神までも使役することができる。それはつまり、大悪魔デュラハンさえも自らの使い魔にできることを意味する。
 ガンボマの行おうとしたこと、それはデュラハンの血肉の一部でも手に入れ、ネクロノミコンに封じ、デュラハンの力を利用してかの大悪魔を亡きものにしようというものだった。
「そういうことか! まさに目には目をってやつだな。ホントめちゃくちゃな神様だな……ガンボマって神様は」
 シンは、ガンボマが天界を追われた理由がよく分かった。
 タナトスやカロンのように、意思を持って魔導書に入り込んだわけではないために、降霊術に似たような術でありながらサモンの章に含まれないのは、デュラハンの体の一部でデュラハンの模倣を生み出すが故の事だった。
「だが、この術は失敗作と言っても過言ではない。奴が生きている限りはな……」
 ガルシアは、『サモンデュラハン』の危険性を説明する。
「模倣によって作り出されたデュラハンの化身と言えど、使いこなすにはかなりの精神力が必要だ。奴を上回る力を持っていない内にこれを使えば、奴の魔力に付け入られ、自らを破壊する事になる。さっき発動してみてはっきりと感じた」
 右腕一本と剣を取り込んだだけで、ガルシアほどの黒魔術師をしてここまで言わせるほどである。
 これが腕二本、臓器一つ、はたまた魔脈でも取り込んでいれば、より強力になるが、発動したガルシアが魔に落とされる危険性があった。
「まさに諸刃の剣、と言ったところだ。正直なところ使いたくはない。だが、こんな術は必要ないだろう……」
 ガルシアはロビンを見た。
「俺達には、ロビンという希望の光がある。奴がどこに消えたかはまだ知らんが、次こそはとどめを刺せよう。できるな、ロビン?」
 ロビンはニッ、と笑った。
「ああ、絶対にオレが倒す。ミコトから授かった、このドラゴンスレイヤーの力でな!」
 その前に、とロビンは誰にともなく問いかける。