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機動戦士ガンダムRSD 第32話 混沌の先に

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別段サイジョウ元帥もアナハイムに赴く予定だったので持っていくこと拒否する理由なんてなかった。
「わかった。
持っていこう」
 サイジョウ元帥は、了承した。
「ありがとうございます」
 サオトメは、頭を上げて再び頭を下げてお礼を言った。

                                     ※

 キラ准将は、回収されたアークエンジェルのベッドの上で目を覚ましておきようとした。
そこは、就寝室でありほとんど大きなケガを負わなかったため医務室で寝る理由がなかった。
そこに食事を持ってきたミリアリア少尉が入ってきた。
ミリアリア少尉は、それに気づくと食事のトレーを台に置きキラ准将を支えた。
「大丈夫?」
 ミリアリア少尉が心配そうにキラ准将に質問した。
「うん、ごめん」
 キラ准将は、ため息をついた。
「でもよかった。
傷もそうひどくは、ないって先生が言ってたよ」
 ミリアリア少尉がほっとしたように言った。
「でもフリーダムが」
 その瞬間ミリアリア少尉の表情が暗くなった。
「あれを墜とされちゃったら僕は」
 キラ准将は、機体を失ったショックが大きかった。
「何いってるのよ?
まだストライクフリーダムっていう切り札があるじゃない?」
 キラ准将の言葉にミリアリア少尉が思わず身を乗り出した。
「うん」
 しかしキラ准将は、フリーダムガンダムに思いいれが深くそれを守りきれなかった自分の未熟さがいやだった。
そこにラミアス艦長が入ってきた。
そしてベッドの近くのいすに座った。
「大丈夫なの、キラ君」
 ラミアス艦長もキラ准将を心配した。
「はい」
 キラ准将が答えた。
「そう、よかったわ。
アークエンジェルも大分ひどい状況だけど見つからないようにうまくルートを選べば何とかオーブにたどり着けるでしょう」
 ラミアス艦長は、安堵の表情をした。
「ほら、食べて。
それで早く元気をつけてよね」
 そういうとミリアリア少尉は、フォークに刺したウインナーをキラ准将の前に出した。
「うん」
 キラ准将は、それをほおばった。

                                      ※

 デュランダル大統領は、ワシントンD.C.のホワイトハウスで書類にサインをしていた。
「ああ、わかった。それでいい。
あの機体は、彼女に受領させる。
あの死神を圧倒した技量ならば今度こそ死神を地獄に帰すことができるだろう。
私もヘブンズベースへ向かう」
 デュランダル大統領は、書類へのサインを終えると部下にそう伝えた。
「大統領自ら危険なヘブンズベースへ赴かなくても指示は、ここからでも十分出せます」
 秘書の女性がデュランダル大統領にヘブンズベースへ赴くのことを取りやめるように提案した。
「そういう問題では、ない。
旗だけ振って後は、後ろで隠れているようなやつなんか誰もついて来はしない」
 そういうと頼んでおいた専用のチャーター機に乗るためホワイトハウスを後にした。
廊下にいる人々は、デュランダル大統領に敬礼していた。
「本当に平和な世界を作ることなんてできるんでしょうか?」
 秘書は、弱気につぶやいた。
「できるかじゃない。
やるんだ。
われらコーディネーターならそれができる」
 秘書の弱気な発言にデュランダル大統領は、強く反論した。
「はい」
 秘書は、暗かった表情を明るくした。
 デュランダル大統領は、専用のチャーター機に乗り込んだ。
そして専用のチャーター機は、ホワイトハウス近郊の滑走路からヘブンズベースへ向けて飛び立った。

                                      ※

 ミネルバは、ヘブンズベース近くに来ていた。
すると迎えのハビが3機編成で近づいてきた。
「こちらヘブンズポートコントロール。
LHMBB01ミネルバの到着を歓迎する」
 そういうとミネルバの両舷からボズゴロフ級数隻が海中から姿を現した。
その光景は、まるで鯨の群れのようである。
「これより貴艦を2番プラットフォームへ誘導する。
ビーコン確認をどうぞ」
 管制官がミネルバに指示を出した。
「こちらミネルバ。
ビーコンを確認する」
 管制室からの通信にチェン軍曹が応答した。
 パイロットと整備員は、ブリーフィングルームのモニターからそとの光景を見ていた。
「いや、すごいですね。
付近の全軍に集結命令がでているのは、聞きましたがこうしてみると壮観ですね」
 アーサー副艦長が艦船の多さに圧巻していた。
アーサー副艦長は、タリア艦長を見たがその顔はあまりいい表情をしていなかった。
そしてタリア艦長は、ため息をついた。
「剣を取らせるには、何よりその大義が重要である」
 アーサー副艦長は、どういうことを言えばいいのかわからなかった。
「誰だったか忘れたけど指揮官教習の人が言っていた言葉よ。
まっ、当たり前のことだけど」
 タリア艦長がつぶやいた。
「ああ、はあ」
 アーサー副艦長は、なぜタリア艦長がそんなことをいうのかわからなかった。
 そのときヘブンズベースにデュランダル大統領が乗った専用のチャーター機が到着した。
「討つべき敵とその理由が納得できなければ誰も戦わないもの。
今私たちには、それがはっきりと示された」
 タリア艦長が現状を言った。
「はっ、はあ」
 やはりアーサー副艦長は、タリア艦長が何を言いたいのかわからなかった。
そしてタリア艦長は、立ち上がった。
「ありがたいことかしら。
軍人としては」
 タリア艦長も戦争は、したくないが引き金を引く機会を与えてくれるのはありがたいと心のどこかで感じていた。
「はい」
 アーサー副艦長のようにただ組織の歯車として生きている人には、タリア艦長の考えは理解できないだろう。
「これより本艦は、ヘブンズベースへの入港シークエンスに入ります。
各海員は、所定の部署についてください。
繰り返します」
 メイリン軍曹は、ミネルバが入港シークエンスに入ったことを知らせるアナウンスを入れた。
「マユってどうなるんですか?」
 ブリーフィングルームでくつろいでいたルナマリア少尉は、アスラン准将にそんな質問をした。
ルナマリア少尉のケガは、すでに完治していた。
「わからない。
おそらく一生刑務所に入るだろう」
 その言葉にルナマリア少尉は、表情を暗くした。
「それよりもこれからの心配なのは、今後の俺たちだな」
 ネオ大佐を失ったガーティー・ルーは、ミネルバにステラ少尉を移してスエズ基地に移動してジブリールを乗せオーブへと入港する。
しかし自分たちは、どういう処遇を受けるかまだわからない。
皆は、不安だった。
「しかしデュランダル大統領が大々的にあんな演説をしたんだ。
俺たちも何らかの形で作戦に参加するだろう」
 ロゴスを討つというのは、簡単なものでもない。
こんなときに遊ばせる部隊がいるなんてアスラン准将は、考えたくなかった。
 ミネルバは、ヘブンズベースの港に到着した。
「入港完了。
保安要員、整備班及び船内班は直ちに所定の作業を開始せよ」
 アーサー副艦長は、艦内放送で乗員に通達した。
「艦長」
 不意にメイリン軍曹がタリア艦長を呼んだ。