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さみしさの後ろのほう 6~10

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ぴろりろりーん。安っぽい音楽と同時にアームが動き出す。
流石にこれだけやれば段々なんとなくコツみたいなのが分かってくる。あの大きいのはきっと持ち上がらない。転がして取る。

二つ目のボタンに手を移した時、俺の腕を握る帝の手に少し力が入った。
何だか凄くきゅんとした。でも俺は悪く無いと思う。柔らかそうな唇は甘い言葉を知らず辛辣な事ばかり言って、常につれない態度で表情すらあまり変わらない。たまにこいつには表情筋が無いんじゃないかと不安になるぐらいだ。
だからどうしてもちょっとした仕草にドキッとする。別に甘えてくるみたいに腕に絡み付いてきたり、しなだれてきてる訳でも決して無い。
でも何だかちょっと、頼りにされてると錯覚しそうになる。ヤバい、ニヤける。……あれ?うわ、ヤバい。動揺し過ぎた。で、押し過ぎた。情け無い事に。ボタンを。

嗚呼、神よ!なんて仕打ちを!
うなだれた俺の腕を帝が更に強く掴む。責めてるのかな、と思ったけど違うようだ。帝の視線はまだUFOキャッチャーに注がれていた。

「タグが、引っ掛かって……!?」

何を言ってるんだと思っていると、何か柔らかいものが落ちる音が聞こえた。え?マジで?

「「取れた」」

笑いこそしなかったが、帝の顔が喜色で満ちる。俺がぬいぐるみを取り出して、正面を帝の方に向けてやると、飽きもせずずっとじいっと見ている。本当に好きなんだな。

「やるよ」

胸に押し付けてやると反射的に受け取っていたものの、ふるふると首を振って、顔をいつも通りの無表情に戻して要りませんと言う。

「欲しかったから取ったのでしょう?」
「思ってたのとなんか違った」
「あんなにお金注ぎ込んだのに」
「取れない事にムカついただけだ。別にそれ自体に執着してた訳じゃねぇよ。お前もそれ要らないってんなら、何処かに捨てて帰る」

こういうの好きなんだろ、って。大事にしてくれよな、って。
そんな風に素直に渡せれば良いのに。そんな事は自分が一番よく分かっている。

これで要らないって言われたらどうしよう。突き返されたら落ち込むな、なんて考えていたけれど、杞憂だったらしい。

「……しょうがないですね。ポイ捨ては感心出来ませんし、仕方ないから貰ってあげます」

嫌々受け取るのだと口では言っておきながら、両腕で大切そうにぬいぐるみを抱え直す。素直じゃないのは俺だけじゃ無いらしい。