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さみしさの後ろのほう 6~10

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夢の事を引き摺るのなんて馬鹿馬鹿しい。そう思うのだけど、なんとなく帝に会うのが気まずかった。
けれど俺には生徒会長の仕事がある訳で、それには未だに帝が突っ掛かってくる訳で、会う事は免れない。

当たり前だが、帝はいつも通りだった。本当は俺がする筈の仕事を着々とこなしていく。
真剣に書類と向き合う端整な横顔を、何見てるんですかこの変態、と言われないようにちらちら見るのが好きなのだけれども、今日はそれでも気が晴れない。
じゃあいっそ何か怒られた方が気が晴れるのかな、なんて、帝をじいっと見ていると、思惑通りこちらを向いた。

「何かご用でも?」
「いや」
「そうですか」

貴方も暇ですね、なんて嫌味が常ならくっついてくるのに今日は無い。ますます調子が狂う。

どうすれば良いんだよ。誰か助けてくれ。そう思っていると、それに答えるように突然扉が勢いよく開いた。

「帝さんっ!助けて下さい!遠方のおじ様が今日急に本家に来ているらしいのです!」

そう叫んだのは、容姿背丈は帝と同じでも中身は正反対の菊。いつになく取り乱している様子で、帝の所に駆け寄ってくる。

「遠方のおじ様ってあの頑固親父の事ですか?全く、相変わらず礼儀知らずですね」

今にも泣き出しそうな菊に対して帝の顔は涼やかで、菊の髪を梳いて宥めてやる余裕もあるようだ。

そう言えば菊は先祖代々血筋を重んじてきた名家の本家の一人息子なのだから、それ相応の立ち振る舞いなどを要されるのかもしれない。
けれど俺の友人は、大きな集団を引っ張ると言うよりも、集団の片隅に存在しながら、どうしたって出来てしまう歪みを調整する方が性にあっているような気がする。部外者の俺がどうこう言う事でも無いけれど、リーダーシップなら帝の方があるだろう。

「仕方ありませんねぇ」

溜息を吐きながら、帝が自分のブレザーを脱いで菊に渡す。菊も自分のを渡して、互いのブレザーを着た。

「夜に帰って来なさい。それまで“菊”はやっておきますので」
「すみません、帝さん」
「そこの書類はアーサーさんにやらせといて下さい。では」

俺の知っている菊ならしないような涼やかな顔をして“菊”が言う。最初から彼が“菊”だとでも言うように堂々と外に出て行くのを見送った後、三年生である事を示すバッジを付けた菊すみませんと苦笑いした。