Lovin’you afterCCA14
その頃、テロ騒ぎのなか、ギュネイからの連絡が途絶えた事を知ったシャアが二人の捜索を始めていた。
「大佐、テロ騒ぎに紛れて例の誘拐事件が数件確認されました。内一件は未遂で、無事に子供が保護されました」
「そうか…やはり両者は同じ組織が絡んでいるな」
「ええ、おそらく…。ただ、先日捉えた者を尋問しましたが、実行犯達は真の首謀者については知らないようです」
「だろうな。それでアムロとギュネイは?」
「それが…その誘拐未遂事件で保護された子供が、二人組の男女に攫われそうになったところを助けられたと言っておりまして、その二人の特徴がどうもギュネイとアムロ大尉に…まさかと思いますが事件に巻き込まれたのではと…」
ナナイの言葉にシャアは額に手を当て溜め息を吐く。
「全く!どうせアムロがギュネイの制止を振り切って首を突っ込んだのだろう…。アムロに仕込んだ発信機の位置は?」
「旧市街の北です」
「あの廃墟か…テロリスト共の潜伏先にはうってつけだな」
シャアはアムロを心配するあまり、あらゆる手を使って発信機や盗聴器を取り付けていた。
大体は束縛される事に嫌気のさしたアムロに見つかって撤去されたのだが、ピアスに付けられた発信機は敢えて取り外さずに身に付けてくれていた。
「無茶をせずに助けを待っていてくれれば良いがな…」
アムロの性格からそれは無理だろうと思いつつも、特殊部隊を編成して救助に向かわせる。
「ギュネイが止めてくれると良いのですが…」
僅かな望みに、ナナイとシャアが視線を合わせ深い溜め息を吐く。
『『無理だろうな…』』
二人の心の声が重なった。
◇◇◇
アムロはピアスを指で撫でながら目を閉じる。
『多分、この場所は既にシャアが突き止めている筈だ。特殊部隊が到着するまで連中がここに留まっていてくれればいいけど…』
アムロは精神を研ぎ澄ませ、周囲の動きを伺う。
すると、子供達が囚われている部屋の辺りが騒つく。
「おい!こいつらを移動させる。車を用意しろ」
男の声が聞こえ、数人の男達が建物の外に出て行く物音がする。
「まずい!ギュネイ准尉、子供達が移動させられてしまう」
「何!?」
「シャアがこっちに救助に向かってくれてるだろうけど間に合わない!」
「大佐が?」
「多分、この発信機で居場所は突き止めてくれている筈だ」
「発信機だと?」
アムロのピアスを見つめ、ギュネイがげんなりとした顔をする。
「どんだけ心配性なんだ」
「これでも大分減らしたんだぞ!他にも盗聴器とか色々付けられてさぁ…心配なのは分かるけど流石に束縛は嫌で何とかこれ一個で勘弁してもらったんだ」
「あーもう!何でもいい!とりあえずどうする?さっきの作戦実行するか?」
「ああ、タイミングを待っていられない。直ぐに実行に移す。ギュネイ准尉、行くぞ!」
「了解、でも絶対に無理はするなよ!あんたに何かあったら俺が大佐に殺される」
「分かってるよ!」
本当に分かっているのか?と重い溜め息を吐きつつもギュネイは扉に向かう。
「おい!誰かいるか!?」
ギュネイは扉をドンドンと叩き見張りを呼び出す。
アムロは監視カメラに映るようにして体調の悪い芝居をする。
「何だ?どうした?」
見張りがドア越しに声を掛けてくる。
「連れが腹の痛みを訴えてる!妊婦なんだ!」
見張り役はモニタールームに連絡を取り、確認を取るとガチャリと鍵を解除してドアを開けた。
その瞬間、ギュネイは見張りの腰から銃を抜き取り、監視カメラからは分からないように見張りを脅してアムロを部屋から連れ出すように指示をする。
アムロを支えるようにして部屋を出ると、見張りを廊下の監視カメラの死角へと連れ込み気を失わせる。
そしてその服を奪い、アムロを支えるフリをして廊下を進む。
「子供達の部屋の前に見張りがいるな」
「私がやる、ギュネイはカメラを」
「了解」
二人は見張りを倒して子供達を連れ出すと、ギュネイは一階へと駆け降り、アムロは子供達を連れて階段を上へと駆け上がった。
最上階まで上がり、その中の一室に入って鍵をかける。
荒い息を落ち着かせながら室内を確認し、窓の外を見下ろす。
すると囮になったギュネイを追って数人の男達が駆け出して行く。
「五人か…残りは三人…」
アムロは見張りから奪った銃の弾を確認し、ジャキッと弾を装填し直す。
「弾は六発、なんとかなるか」
「何で上に上がるの?逃げられなくなっちゃうよ」
一人の子供が不安気にアムロを見上げる。
「大丈夫、さっきのお兄さんが囮になって外に悪いおじさん達を連れ出してくれた。まさか私たちが建物の中にまだ居るとは思わないだろう?」
「でも…!」
「心配しないで、もうすぐ助けもくる。それまで私と一緒にここで待とう。見つからないように静かにね?」
にっこり微笑むアムロに、子供達は戸惑いつつもコクリと頷く。
「いい子だね。私と一緒に頑張ろう」
「うん…」
アムロは安心させるように子供達の頭を優しく撫でるとギュッと抱きしめた。
そして、自分を心配しているであろう愛しい人に想いを馳せる。
『シャア…私はココだよ!待ってるから』
「アムロ!頼むから大人しく待ってろ!」
突然シャアが叫ぶ。
「大佐!?」
シャアの声に驚いてナナイが振り返る。
「ああ、すまん。今、アムロの声が聞こえた。どうも救助を待っているようだ。しかし大人しく待っているか怪しい!急ぐぞ!」
「はい!」
特殊部隊と共にアムロが囚われているであろう廃墟へと向かう。
そこにはナナイと共にレズン少尉も同行していた。
「どうでもいいけど、総帥自ら出張ってきて大丈夫かよ?」
「大佐が大人しく待っている訳ないでしょう?それならば連れてきて指揮を取らせた方が役に立つわ」
ナナイの言葉に、レズンが呆れ顔でシャアを
見つめる。
「大佐もどうかと思うけどあんたも大概だね」
「これでアムロ大尉に何かあったらネオ・ジオンの存続に関わる!何があってもアムロ大尉を無事に救出しなければ!」
シャアのアムロに対する執着を思うと、ナナイの意見にレズンも納得せざるを得ない。
「…確かにな…」
「分かったら貴女も準備に入りなさい!」
「了解!」
レズンは特殊部隊のジャケットを羽織ると、銃を携え持ち場に向かう。
『アムロ!無事でいろよ!そうじゃなきゃ後が面倒くさい!!』
レズンの心の叫びと共に装甲車のエンジン音が響き渡った。
ギュネイは囮となり、アジトのビルから男達を引き離す。
「五人か…」
銃を構えて物陰に隠れる。
「どこに行った!?」
「女と子供連れだ!そんなに遠くには行ってねぇ!」
男達が怒声を上げながらギュネイを探す。
それを目を閉じて聞きながら精神を集中させる。
『まるでモビルスーツで戦っている時みたいだ…』
自分でも驚くほど冷静に状況が把握できる。
二人の男が右側。残り三人が後方に居る。
ギュネイはゆっくりと銃を右側から迫り来る男達に向ける。
正確に二人を倒すと、すぐ様移動して残り三人を狙う。
銃声を聞いた三人が分散して迫り来るのを次々に倒して行く。
最後の一人を倒すと、銃を奪い、踵を返してアジトのビルへと走った。
『アムロ大尉!無事でいろよ!』
「おいっ!ガキどもはまだ見つからないのか!?」
作品名:Lovin’you afterCCA14 作家名:koyuho