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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 ひとしきり笑った後、ジェイド達も王城に居るはずということでナタリアの様子を見に行くことにした。ミュウもつれて屋敷の門を抜け、王城へ向かう。
「さっき見た時はまだ眠ってたけどな」
「見に行ってたの?」
 ガイの言葉にティアが訊ねた。
「ああ、フィフィがナタリアの部屋に入り込んでてそれを回収する時に…」
「ガイ、あなた…」
 ティアの視線が冷たく刺さるのを感じで、ガイはしまったと思った。
「まさか忍び込んだんじゃないわよね?」
「…誰にも見つからなかったし、結果オーライだ」
 信じられない、とティアがため息をつく。
「国姫の寝室に忍び込むなんて、懲罰ものよ」
「みゅ!?ガイさん捕まっちゃいますの?」
「しーっ!この件はここだけの話にしてくれ!」
 ルークも、とガイが話を振ってくる。ニヤリと頬が吊り上がるのが抑えきれず、ガイが「げっ」と身を引いた。
「どうしよっかな〜?これは陛下に言いつけるべきだよなぁ〜」
「それ以前にあなたの奥さんなんだから怒っていいと思うけど」
「…あ」
「そうだった」
「忘れてたの?」
 呆れた…と大きくため息をつくティア。そうこうしているうちに城門に到着し、キムラスカ兵がルークの姿を認めると敬礼の後、鉄扉を開けた。
「ルーク様…!」
「ルーク様!」
 扉の先に進むとルークの姿を見た王城内の使用人達が集まってきた。
「ルーク様!本当に意識が…!」
「もうお体はよろしいので?」
「ご無事で何よりでございます!」
「ナタリア殿下の元へ向かわれるのですか?」
「我々にお手伝い出来ることはございますでしょうか!」
「おおお…あー…っと」
 予想外の歓待に戸惑うルーク。そもそも自分の意思で歩いて喋るのも久々であるため、こういった不慣れな状況ではどう対処すればいいのか頭が追いつかない。ふと、こういう場をあしらうのもアッシュは得意だったと思い出した。
「俺はもう大丈夫だから、ナタリアの様子を見に行きたいんだけ、ど…」
「ご案内致します!」
 一人の侍女がルーク達の前を歩く。道すがらジェイド達の居場所を聞くと、後でナタリアの部屋に呼んできてくれることになった。王様待遇だ、とガイが呟く。
「ジェイドを呼びつけるなんて、後で何言われるかわかったもんじゃないな」
 言われてから身震いする。
「…自分で出向くって言えばよかった」
 くすっとティアが笑うのを横目で見た辺りでナタリアの部屋に辿り着いた。ナタリアの私室前には兵士が2人控えていた。
(さっきはいなかったのに)
(良かったな、見つからなくて)
 ルークがガイを小突いてからかう。私室から寝室に通じる扉を開け、侍女は一旦下がった。程よい光量に照らされる室内で、ベッドに横たわるナタリアの姿が見えた。
「ナタリア…」
 幼馴染みの名前を呼びながらベッドに近づき、天蓋の幕を手で除ける。
「ナタリアさん、まだ眠ってますの…」
 ミュウをベッドの縁に立たせてナタリアの顔を覗き込む。寝息は規則正しく、顔色も良い。本当にただ眠っているだけに見えた。
「お医者様たちの話では、何か強力な術がかけられているんじゃないかってことだけど…」
「術?」
「ええ。だから私も含め、国中の第七音素士(セブンスフォニマー)で解呪を試みたけど…駄目だった」
 ごめんなさい、と目を伏せるティア。
「も、元はと言えば守れなかった俺達が悪いんだ、ティアのせいじゃねえよ!」
 だから謝るなよ…と言った声は小さすぎて自分以外には届かなかった。
「呪いで覚めない眠りについたお姫様、なんてなんかのお伽噺みたいだな」
「だとしたらむしろ話は早いんですがね」
 ガイの言葉に返したのは、いつの間にか扉の前に立っていたジェイドだった。げ、とルークの口から思わず漏れる。
「ジェイド…」
「おや、なんですかその不服そうな顔は」
 身長の高いジェイドから注がれる笑顔はいつもの見慣れた鉄面被だ。しかしこの男はいつも通りであるからこそ恐い。
「悲しいですねえ、私は次期キムラスカ国王陛下のお呼び立てに急いで参上したというのに」
「…悪かったって」
 呼びつけられたくらいでいちいち腹を立てる男ではないが、かといって何のわだかまりも無しにはいられないのがジェイドだ。早めに謝っておいた。
「やっほ〜ルーク様♡目が覚めたって本当だったんだね♡」
「アニスも。わざわざ悪いな」
「いいえ〜♡ルーク様のためなら何処へでも♡」
「…お前らって本当に恐ぇよ」
 どういう意味ですか〜?と首を傾げるアニスと苦笑するガイを尻目に、ルークはジェイドに向き直る。
「…で、さっきの話、どういうことだ?」
 ジェイドは顔色ひとつ変えず、肩を竦めて答える。
「本当にお伽噺なのであれば、姫の呪いは愛する王子のキスひとつで解けるでしょう?」
「!?」
 ルークは勿論のこと、その場にいた全員が息を飲んだ。そのほとんどがジェイドの語った内容に、というよりもジェイドの口から出るにはあまりにそぐわない夢想的な単語が羅列されていた為だ。
(た、大佐が愛って言った…)
(ジェイドってお伽噺とか読んだことあったのか…)
(あれは本当に本物の大佐…?)
「失礼ですねぇ。私だってお伽噺を読んだことくらいありますよ」
「心を読まれた!?」
(本物だったわ)
 戸惑いを隠しきれていない面々を余所に、ジェイドは背後で手を組んだ姿勢のままルークに訊ねる。
「で、どうしますか?一度くらい試してみてもいいですが」
「試せるか!!!」
 ルークが顔を真っ赤にして即刻拒否する。
「つーか、試すとしても俺じゃねえだろ」
「ほえ?むしろルーク以外に誰がいんの?」
 ジェイドの瞳が一瞬鋭くルークを射抜く。アニスは要領を得ず、首を傾げている。ルークはガイとティアの方をちらっと見て、二人が小さく頷いたのを認めると口を開いた。
「…アッシュ」
「へ?」
「俺じゃなくて、アッシュだ」
 アニスは大きな目をぱちくりとさせ、助けを求めるように隣に立つジェイドを見あげる。
「詳しく聞かせていただいても?」
 そう言ったジェイドの表情から、既に微笑みは消えていた。