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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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「じゃあ今までのルークはずっとアッシュだったけど、今ここにいるのはルークってこと?」
「まあ、簡単に言えば」
 ふーん、と言うアニスは今聞いた話がまるで「今日の朝食はパンだった」程度の内容であったかのような顔をしている。ルークにとってはかなり重大な事態であるため、若干ショック、を通り越してもはや拍子抜けした。
「じゃあアッシュはどこ行っちゃったの?」
「…わかんねえ」
 興味無さそうな顔をしながら、しっかり話の核心を心得て質問をしてくるのだから油断ならない。
「今までのあなたがそうだったように、入れ替わるように眠っているということはないのですか?」
「なんとなくだけど、それはないと思う。ほんと…なんて言えばいいのかな」
 歯切れの悪いルークを急かすこともなく、ジェイドは続く言葉を待っている。
「アッシュのいたとこがすっぽり抜け落ちたっていうか…アッシュと俺の記憶が混ざっていく感じが無いんだよ」
 ずっと感じていた、二人の境界が消えてひとつになっていく違和感と恐怖。新たに相手の記憶が流れ込んでくることも無くなり、今は境目がはっきりと見えている。そんな感覚だった。
「大爆発(ビッグバン)か…」
 ジェイドが口元を右手で押さえて目線を落とす。
「逆転現象でもない…しかし、一度起こった大爆発が解除されるなど…となると…一体何故…?」
 険しい顔つきで思考を整理するように呟くジェイドを他の面々は何も言わずに見守っていた。それに気付くとジェイドは
「失礼」
 と言ってひとつ咳払いをし、いつもの貼り付けたような微笑の顔に戻った。
「そうなった原因に心当たりは?」
「多分、あの時の女だと思うんだけど」
「女?」
 ティアも含め、ルーク以外の全員がきょとんとする。それでルークはフェレス島で見た女性についてはまだ話してなかったことに気付いた。
「フェレス島で話した奴がいるんだ。ティアとナタリアは気を失ってたから、知らねえよな」
「ええ…」
 ティアはやはり記憶に無いらしく、不思議そうに頷いた。
「直接話したのはアッシュだし、俺もはっきり覚えてるわけじゃねえけどさ。その女…」
 ティアの顔を見てしまい、この先に続く台詞を口にするのが憚られ、ぷつりと言葉を止めた。全員が訝しげにルークを見つめる。
「…あー…っと」
 ティアとナタリアを天秤にかけられ選択を迫られた、なんてことを正直に話せば当然それに対する答えも白状させられるだろう。当事者(ティア)の前で、それを語るなんて絶対にできない。
「その女性が、どうしたんだ?」
 ガイが続きを促してくる。彼に悪気はないのだろうが、だからこそ余計な事をと思ってしまう。
「…いや、やっぱりよく覚えてないな。でもその女と話した後、意識を失ったのは確かだ」
 上手く隠せているかはわからないが、なんとかその場を凌ぐ。何もかも見透かしそうなジェイドの視線が痛い。
「じゃあその女性が何かを知ってる可能性は高いわね」
「あとその女、例の鳥と一緒だった」
「ナタリアを攫ったっていう?」
 アニスの質問に頷いて返す。
「いよいよ怪しいな」
「むしろナタリア誘拐の主犯はその女かもね」
「ナタリアにかけられた術の術者もその人かしら」
「その女性の特徴は何か覚えていませんか?」
 ジェイドに問われて記憶を呼び起こす。
「顔はぼんやりとしか思い出せないんだよな…歳は俺達とそう変わらないと思う」
「へえ。美人か?」
「ばっか、知らねえよ」
「なんだ勿体ないな」
「……ガイ」
 ティアがガイを諌める。悪い悪いとガイが笑う。
「あとは…髪は銀髪。瞳が青かった」
 くるりと周りを見渡して、はたとティアと目が合った。
「そうだ、ティアの目と似てた」
「私?」
 パチパチと瞬きをしてティアがみんなを見やる。ふむ、とジェイドが右手で顎に触れてティアの顔を見つめていた。
「…あとは悪い、思い出せねえや」
「なるほど。とりあえずはそれで手配書を回しましょうか」
「王女誘拐と傷害の容疑になるんですかね〜?」
「随分な大罪人ですねぇ」
「久しぶりにおっきなヤマになりそう♡」
 何故かアニスとジェイドは楽しそうだ。
「みゅぅぅ…」
 そんな2人の異様な雰囲気に、ミュウとフィフィはベッドの上で震えている。
「当面の目標はこの女性の確保になりそうですね」
 サラサラとメモ書きをしてポケットにしまうジェイド。キムラスカ軍にも伝達するため、ジェイドは軍本部に戻るようだった。アニスとティアもそこに同行することになった。
「俺は一度陛下のとこに顔出してくる」
「そうだな。きっとご安心召される」
 その間、ミュウとフィフィはガイに預けておくことにした。
「すっかり動物のお世話役が板に付きましたね」
「お陰様で」
 2匹を腕に抱えるガイをジェイドがからかう。グランコクマでは相変わらずピオニーが飼っているブウサギの世話をさせられているのだろうか。ルークがそう思っていると
「ブウサギの世話以外にも仕事してるからな」
 と、ガイが先手を打ってきた。顔に出ていたらしい。
 また後ほど王城内で合流できるよう約束を取り付け、その場は各自解散となった。ルークが最後、ナタリアの部屋から出る前に振り返って今一度その様子を窺う。
「……」
 当然、ナタリアは先程と変わらず瞼を下ろしたままだ。腹の底にひとつ、ちいさな重石のような物が沈んでいるような感覚を抱えてルークは部屋を出た。