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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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「みゅぅぅ〜…まだ地面が揺れてますの〜…」
「お前最後まで寝てたもんな」
 ルークの膝の上でミュウが頭を垂れる。一行は港にある休憩所で軽食をとっていた。ミュウはルーク以上に船が苦手なようで、まだ船酔いから脱していない。
「少し休んだら街に向かおう。ここから先は魔物も出るから注意してな」
 ガイの言葉を聞いて、思わず体に力が入る。ルーク自身は剣を振るうのも久しぶりだ。バチカルを出てくる前にガイと確認がてら手合わせはしてきたが、実戦となるとやはり緊張する。
「大丈夫よ。私たちがフォローするから」
「わっ…平気だっつーの!」
 そんなに考えていることが顔に出ているのだろうか、とルークは自分の頬を触っていた。

 食事を済ませ、ミュウの体調も回復してきたところで休憩所を出ると、船着場に数人観光客が集まっているのが見えた。彼らの見ている先にあるものから、その目的はすぐにわかった。
「とても役に立っているみたいよ。……ルーク橋」
「わざわざ口に出すのやめろよ…」
 シェリダン港からも見える、南方に向かって架かる大橋。技師の街シェリダンと研究者の街ベルケンドを繋ぐため、ルークの出資によってかけられた橋だった。故に、橋には出資者であるルークの名前が付けられたのだ。
「ルークさま橋、ご主人様の名前がついててとてもかっこいいですの!」
「アルビオールの開発が進んだのもあの橋のおかげかもしれないしな。俺も感謝してるぜ、ルーク橋」
「だからやめろって!お前らわざとだろ!?」
 あと橋の名前に様付けはおかしいぞ、とミュウに説明するが理解してもらえず、その後もミュウはしばらく「ルークさま橋」と呼んでいた。
 
 * * *

 港を出て数時間。魔物との小競り合いはあったが夕暮れ前には街についた。
 シェリダンの街は歩くと至る所から金属音が聞こえてくる。歯車が回るような音から、金属を叩き伸ばす音、機械のエンジン音など非常識に騒がしい。
 街の中でも一際大きな格納庫を目指して歩くと、たどり着く前に目の前から見知った顔がやってきた。
「皆さん!」
 短めの金髪、頭にはパイロット用のゴーグルをつけ、よく映える赤いジャケット。高く手を上げながら駆け寄ってくるのはノエルだ。
「ノエル!」
「ルークさん、ご無事で!」
 ノエルは要人達の護送のため早々にバチカルを発ったので、発見されてから意識を失ったままだったルークのことを気にかけていたのだ。
「すみません、本当は港までお迎えにいくつもりだったんですが…」
「大丈夫だって。たまには歩かないとな」
「ありがとうございます」
 ルークの気遣いにノエルが礼を述べる。そのルークの後ろでは「あんなことが言えるようになって…」「成長したわねルーク…」とガイとティアが大袈裟に感心していた。聞こえていたがルークは敢えて無視を決め込んだ。
「何かあったのか?」
 街中を走るキムラスカ兵の姿も見受けられ、空気が少し張り詰めているのを感じていた。そしてノエルの口ぶりから、予定外の何かがあって港まで来ることが出来なかったのだと予想した。その通り、ノエルは頷き
「アストンおじいちゃんが集会所で皆さんをお待ちです。来ていただけますか?」
 アストンはノエルの祖父で、アルビオール開発の第一人者だ。職人衆の頭領であり信頼も厚く、実質このシェリダンの元締め的存在でもある。ルークたちは集会所へ急いだ。
 集会所に着くと、中から出てきたキムラスカ兵と出入口の前ですれ違った。彼らは慌ただしく南へ走っていく。ノエルが扉を開けて中にいるはずの人物に声をかける。
「おじいちゃん、ルークさん達が到着したよ」
 若い職人たちに囲まれたアストンがこちらに視線を寄越し、片手を上げた。
「元気そうじゃの、ルーク!」
「そっちこそ。変わりなさそうだなアストンさん」
 アストンを取り囲んでいた職人たちが少し下がるのを合図に、ルークたちは集会所中央に位置するテーブルに近づく。そこには、何かの報告書が置かれていた。アストンはそれを隠すように手元に集めて縁を揃えた。
「見ての通り、少しばたついておってな。じゃがアルビオールなら間に合わせてある。持っていけ」
 ルーク達を案内するようにアストンが集会所を出ようとする。その背中をノエルが引き止めた。
「おじいちゃん、ルークさんたちに相談しないの?」
 一瞬アストンの眼光が鋭くなる。
「ノエル、坊主たちに何か話したのか?」
「まだだけど…」
 ふ、とまたいつも通りの好々爺の顔つきに戻ってアストンはルークたちに言う。
「すまんがご覧の通り、大したもてなしもできんし今は宿もとってやれん。今日のところは早く発って別の街に移動した方がいいぞ」
「何があったんだよ」
 アストンの言葉は、早くこの街から離れろと言っていた。そうしなければならないほどのことが起こっているということだと、ルークにも判った。
「私たちには話せないことなんですか?」
 ティアの問いに、アストン以外の職人たちが僅かにざわめく。アストンがどう切り返してくるか待っていると集会所の扉が開いた。
「アストンさん!ウォルマーの様子が…」
 叫びながら入ってきた男はルークたちの姿を認めると身を固くし、しまったと口を一文字に結んだ。ルークが腕を組んでアストンを見下ろすと、アストンは「馬鹿もん」と呟き、
「…お嬢さんは治癒術士(ヒーラー)じゃったの?」
 私?とティアが自分を指差す。
「はい」
 それを聞いてアストンはふぅ、とため息をついた。
「すまんが来てもらえるか。診てもらいたい奴がおる」
 アストンが集会所から出て向かったのは東。アルビオールがあるはずの飛晃艇ドッグとは、正反対の方向だった。それに最初に続いたのはノエル。ルークたちもその背を追って集会所を出た。