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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 ティアがウォルマーの体に異常がないか確認している間、ルークとガイは床に穴を空けた件を家主であるウォルマーの父親に謝っていた。経緯を掻い摘んで説明すると、父親は怒るどころかルークたちに感謝を述べた。
 ウォルマーの方は多少ふらつきなどはあるが三日間の絶食状態によるもので、大きな異常はなかった。ただし、気を失う前一週間前後の記憶がすっぽりと抜け落ちていた。そのため、何故このような事態に陥ったのか、原因ははっきりしなかった。
「うーん…長く寝てたからぼーっとしてるだけですよ。そのうち思い出しますって!」
 ウォルマーは非常に楽天的で、あまり気に留めていない様子だった。今にも仕事に出そうな雰囲気に、ノエルやアストンの方が心配してしばらく仕事は休むように諌めた程だ。
 家を出るまでウォルマーの家族にしきりに感謝を述べられ、やっと解放された頃にはすっかり日が暮れていた。恐縮しきって固まった背筋をルークが伸ばしていると、アストンが口を開いた。
「しかし…何か解決の糸口が見つかればと思ったんじゃが、本当に解決してしまうとはのう」
 お前さんたちはやはり只者ではないの、と感嘆をもらすアストン。
「でも偶然かもしれねえし…」
 あまり釈然としないのか、伏し目がちなルークを見てアストンは言う。
「逆に偶然ではないかもしれんじゃろう?」
 ノエルやティアたちも頷いていた。ルークは困ったように頭を掻く。
「それを確かめるには、検証を重ねるのが一番なんじゃが…今日はもう遅い。よければまた明日、他の者達も見てやってくれんか?」
「ああ。いいよな、みんな」
「もちろん」
「ほっとけないものね」
 となると宿泊先だけど、とルークがアストンを見る。
「宿なら空いておる。さっきのはお前さん達を滞在させんための方便じゃ」
 儂の名前で取っておいてやろう、というアストンの提案をありがたく受けて、その日はシェリダンに泊まることになった。
 宿につくなりガイがそわつきだしたので、明日の朝までそれぞれ自由行動ということにした。勇んで部屋を飛び出したガイの肩にはフィフィも乗っていた。
「ついていっても面白いことなんてねえのに」
「そんなのわからないじゃない。意外とフィフィも音機関が好きかもしれないでしょう?」
 音機関好きな魔物…?とルークは眉を顰める。今ルークとティアはミュウも連れて、宿に併設されている酒場で食事をとっていた。
「まあ、なんか変なやつだからあるかもしんねえけど…」
「…そうね、やっぱり少し変わってる」
 ティアが夕方の出来事を思い出していることがルークにもわかった。
「ねえミュウ。ミュウはあの時何か感じた?」
 チーグルは魔物の気配に敏感だ。実際ミュウの警告に助けられたことが今まで幾度もある。そんなミュウならば、ウォルマーから出てきた“あれ”にも何か感じていたかもしれないとティアは考えた。
「みゅぅぅ…ボクには何もわからなかったですの…」
 ごめんなさいですの、としょぼくれるミュウ。その頭をティアが慰めるように撫でる。
「でもフィフィはいち早く反応してた」
 対面に座るティアの右手を見つめるルーク。ティアもそれに気づいて自らの右手の甲を左手で押さえた。
「痛むか?」
「全然。噛まれた時も驚きはしたけど、本当は全然痛くなかったの。痕すらなかったわ」
 ティアがフォークを手に取り、目の前の食事に手をつける。
「フィフィは私たちを“あれ”から庇ったのよね?」
「多分な」
「一瞬、防御壁のようなものを張ったようにも見えた。そしてそれに触れた途端、私たちにも“あれ”が見えるようになった…」
 ルークとティアが目を合わせる。
「どうしてそんなことができたのかしら」
「聞いても答えるってわけじゃねえしな…」
 答えているのかもしれないがそれを自分たちは汲み取れない。ルークが頭の後ろで手を組んで背もたれに寄りかかると、酒場の入口のドアが開いた。
「ガイ」
「意外に早かったな」
 よっ、と手を挙げてガイがテーブルに近寄ってくる。その肩に乗るフィフィの尻尾もふわりと揺れた。
「夜通し帰ってこないのかと思ってたぜ」
「はは、正直そうしたかったが明日もあるからな」
 フィフィがティアの隣、ミュウが座る近くに飛び降りた。
「フィフィさん楽しかったですの?」
 ミュウの言葉に頷くフィフィ。それを見たガイは満足そうに笑い、ルークの隣の席に腰掛ける。
「ここは魚料理が美味いんだよな」
「そうなの?」
「いつだったかノエルが教えてくれたんだ」
 水が運ばれてきたタイミングでガイが料理をオーダーする。ウェイターも注文を受けるとにっこり笑って厨房へ下がった。
「…あれ?みんなと来た時じゃなかったか」
「さあ…私は知らないわ」
「俺も」
「そうか」
 いつ食べたんだっけなぁ、とメニュー表をぱらぱらめくるガイ。そういえば、とルークが思いついたように口を開く。
「フィフィって何食べるんだ?」
「えっ」
 今気づいたの?とティアが呆れて言う。
「フィルフィスパニアは大気中の音素からエネルギーを取り込んで生きているから食事は必要ないんだそうよ」
「まじかよ」
 やっぱ変なやつだな、と言うとフィフィがばしっとテーブルに手を掛けてルークを睨んだ。反射で頭頂部を手で隠す。
「懲りないわね」
「仲良いなぁ」
「ですの!」
「どこをどう見たらそうなるんだよ!」
 あいつ明らかに殺(や)る気じゃねえか、とフィフィを指さすと行儀が悪いからやめなさいとティアに叱られた。すごすごと手を下ろすとフィフィが目を細め、鼻で笑われたような気がした。
「くっ…やっぱムカつく…!」
「まあまあ」
 ガイがルークを宥めていると料理が運ばれてきた。ふっくらした白身魚に絡むバターとスパイスの香りが皆の食指を動かす。
「本当においしそうね」
「本当にうまいんだよ」
 ガイがカトラリーを取り揃えていると、フィフィの視線がルークからガイの皿に移った。その尻尾はわさわさと揺れている。ミュウもテーブルの縁に掴まってガイの皿を見つめ、その大きな瞳をキラキラと輝かせていた。
「しょうがないな、少し食べるか?」
 ガイが小皿に魚を小さく切り分けてのせる。小動物達の目の前に皿を移動させてやるとミュウがソファのうえで飛び跳ねた。
「ありがとうございますですの!」
 ミュウにはティアが箸で食べさせてやり、フィフィは直接皿に食いつく。
「お前も食べるのかよ」
 食い物はいらねえんじゃなかったのか、とルークがぼやくのを聞いて、フィフィがもぐもぐと口を動かしながらそちらを向く。
「娯楽としての食事は必要ってことかな」
「美味いもんだけは食わせろってことかよ?贅沢な奴だな」
 一口だけ魚を食べたフィフィはそのままソファの上で丸まってしまった。
「…自由かよ」
「屋敷にいた頃のルークにそっくりだ」
 笑う二人に何か言い返してやろうと思ったがぐうの音も出ず、大人しく食事を再開する。屋敷や王宮で食べる料理より味も見た目も乱雑なのに、不思議と美味しく感じるのだった。