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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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「ふわぁー…あ」
「流石に疲れたか?」
 まあな、とテーブルの水を飲みながら答える。
「また改めて超振動の訓練をした方がいいかもね」
 げ、と不満を口にしかけてぐっと飲み込む。一瞬眼裏に過ぎった過去の凄惨な光景に、意見が変わった。
「…そうかもしんね。また頼むよ」
「勿論よ」
 でも今日はゆっくり休んでね、とティアが言う。昨夜同様、宿屋の酒場で食事を取っていた一行は今の状況を整理すべく話し合っていた。 
「とりあえず、明日からはベルケンドへ移動か」
「アストンさんが、アルビオールが出せるから直接飛晃艇ドッグに来てくれとさ」
 そう言うガイの顔は喜びを隠さない。余程楽しみなのだろう。
「…気がかりなのは、モネさんの件よね」
 全く症状を見せていなかった人物からも現れた黒い影。それはつまり、まだ影を有している人物が存在するかもしれないということだ。
「あれに気付かず過ごしていたら、他の人みたいに眠り続けるように…ってことなのか」
「…恐らく」
 だとしたら、シェリダンでもまた発症する人が出るかもしれない。しかし街の人たち全員を見て回る訳にも行かないし、それよりは今発症している人を確実に助けた方が良い。
「…なんとか、根本的に解決する方法を探さなきゃいけないわね」
「なんとかって?」
「それは…まだ、わからないけど」
 むう、と全員が黙り込んでしまう。次に口を開いたのはガイだった。
「結局あれがなんなのかもわからないしな。魔物、なのかな?」
「人にとり憑いて、意識を奪う魔物ね…」
「意識どころか記憶も奪ってんだよな?」
「…そうだな」
 最初は皆長く眠っていたことから記憶が混迷しているのだと思ったが、どうやらそうではないらしいと感じていた。数日ならまだしも、数ヶ月分も記憶が飛ぶのは流石におかしい。
「…ナタリアは、あれとは無関係なんだよな」
 ルークがずっと感じていた不安を口にする。もしナタリアもあの影に侵されているのだとしたら、早く戻らなければ。そして、自分になんとかできるはずだと思った。
「あれのせいなのだとしたら、きっとフィフィが気付いたと思う」
 そうだ、フィフィもナタリアの傍に近付いたことがある。ルークもそれに思い至って腑に落ちた。
「ナタリアは彼らのように苦しんだりする様子はなかったもの。…きっと、原因が違うのよ」
 良いのか悪いのかはわからないけど、とティアが俯く。
「ナタリアのこともアッシュのことも何もわからないままなのに、やることは増えたって感じだな」
「…」
 ガイが腕を組んでため息をつく。ルークはふと、フェレス島で対峙した女と鳥のことを思い出した。色々あってすっかり後回しになっていたが、当初の目的はそれを追ってナタリアやアッシュに関する手がかりを得ることだった。
「あいつらさえ追えれば、なんとかなると思ってたんだけどな…」
 アストンやノエル達にも聞いてみたが心当たりは無いと言われてしまった。そこまでは予想していたが、まさか最初に立ち寄ったシェリダンで新たな問題に直面することになるとは思わなかった。
「…まあ、元々当てのない旅になる予定だったんだ。目に見えた目標が出来て良かったんじゃないか」
 人探しは人助けをしながらでも出来るだろ、と言うガイにルークは頷いて返す。
「ベルケンドに行けばまた何かわかるかもしれないわ。その女の人や、鳥の魔物に関して知ってる人がいるかもしれないし」
 焦らず確実に、出来ることから。わかっているが、どうしても気は逸る。
「…部屋に戻る」
 ルークが座席から立ち上がる。ミュウも慌てて椅子から飛び降り、ルークの後について歩いた。一瞬驚いた顔をしたティアやガイも、ルークも疲れているのだろうと得心してその背を見送る。
「おやすみ」
「また明日、フロントでね」
「おう」
 背中でティアたちの言葉を受けて、振り返らずに酒場を出る。やはり疲れがあるのだろうか。少し重い頭を押さえながら客室へ向かう。その夜は、ほとんど気絶するような形で意識を手放した。