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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 腹拵えも終えて飛晃艇ドッグへ向かうとそこではアストンが待ち構えていた。ドッグに入ってきたルーク達を見ると、満面の笑みで出迎えた。
「待っておったぞ、御一行」
「世話になります」
「おうおう。させろさせろ」
 案内するように振り返り、歩き出したアストンの足取りは非常に軽い。その背を見て、まだまだ元気そうだな、とルークはこっそりほっとした。
 アストンに続き、外階段を使ってアルビオールが格納されている上層階へ上がると、やたら暗かった。
「なんだ?」
「真っ暗ね…」
 段差などに足を取られないよう気をつけながら、声を出してお互いの位置を確認する。
「ふっふっふ…」
 少し離れた位置から、アストンの含み笑いが聞こえた。
「アストンさん?」
 ガシャン、と音がしたかと思うとガラガラと大きな音を立てながら、外と格納庫を隔てたシャッターが上がり始めた。
「此度!ルーク・フォン・ファブレ子爵閣下の御要望にお応えしご用意致しましたのは!」
 シャッター音をものともしないアストンの大音声に目を丸くしていると、外の光に照らされて格納庫の大半を占める鉄の塊の輪郭が見えてきた。
「現代技術を結集し、ネジ、理論、浮遊機関…全て一から造り上げたシェリダン謹製!」
 シャッターが上がりきると同時に格納庫内のライトが一気に点灯し、その全貌が明らかになる。
「完全新型!アルビオール四号機じゃ!」
「なんだってえええええええ!!!」
 庫内に控えていた多くの技師達が手を叩き、歓声を上げる。それと同時、下手したらそれより早く声を上げたのはガイだ。呆気に取られるルークとティアを差し置いて、手摺に乗り出しアルビオール四号機を食い入るように見つめている。そのまま飛び降りかねない勢いにアストンは嬉しそうに頷き、
「ほれ、降りてもっと近くで見たらどうじゃ」
「いいんですか!遠慮なく!!」
 アストンの言葉を待っていたかのように、ガイは風の速さで階段を駆け下りてアルビオールの前に立った。ティアは頭を軽く押さえ、深くため息をついた。
「すみません…うちの祖父、派手好きで…」
「いいえ…こちらこそごめんなさい」
 ティアが言った「こちら」とはガイのことだ。
「ありゃしばらく止まらねえぞ」
「…そうね」
 ティアの声音は心底呆れている。しかし、ちらっと盗み見た顔は予想してた以上に優しく笑っていた。ルークはぎくり、と体が竦むのを感じた。
(え…なんだ、今の)
 体をじわじわと侵食していく違和感。その正体を掴みきる前に、「私たちも行きましょう」とティアに声をかけられた事で意識が逸れて、違和感自体が霧散してしまった。
(…大したことじゃない、か)
 それ以上考えることはやめて、ティアの背に続いて階段を降りる。見れば、ガイは既に何人か技師を捕まえて話し込んでいた。
「やはり大きかったのは、今再現できる浮遊機関で動かせるだけの質量まで機体を軽量化できたことですよ!」
「いや、そもそも浮遊機関の再現にエレメンタルスピリットを利用しようっていう発想が無ければここまで来なかっただろ!」
 もはやルークにはなんの話なのかさっぱりわからなかったが、ガイは楽しそうに頷きながら技師たちの議論を聞いていた。
「…楽しいか?」
「おうルーク!」
 わざわざ聞かなくてもわかるくらいの満面の笑みでガイが振り向く。
「やっぱりシェリダンの音機関技師って凄いな!この時代に生きてること、本当に感謝してるよ!」
「ああ、そう…」
 やっぱわかんねえ…とルークは頭を掻く。
「皆さん、ライルの法則をお忘れではないですか?」
 また別の技師が寄ってきてガイの意識はそちらに引き戻された。
「そういえば、従来機と比べるとだいぶフォルムが変わりましたよね?やはりそれの影響ですか?」
「そうなんですよ!」
 技師達が異口同音に、ガイの疑問を肯定する。
「今のオールドラントでアルビオールを飛ばせるのはライルの法則のお陰です!」
「従来の航空力学を覆した芸術的な方程式、あれで音素の消費量が格段に減ったんです!」
「量産化の許可が下りたのもあれがあったからなんですよ!」
 矢継ぎ早に繰り出される技師たちの説明をガイは理解している様だ。目の輝きが違う。
 ルークはもはや何も言えず、間近のアルビオールを見上げた。シルバーに輝く機体は傷一つ見当たらない。以前乗っていた二号機との差はルークにはよく分からなかったが、言われてみれば全体的にシャープになった様な気がする。
 タラップが延びる搭乗口を見ると、ちょうどフィフィが中からひょっこり顔を出した。
「あっ!フィフィ!」
 ルークがその姿を見咎めると、ガイも気付いて声を上げる。
「な!?こらフィフィ!ずるいぞ!!」
「怒るのそこかよ」
 ガイがタラップを駆け上がる。フィフィはガイから逃げるようにアルビオールの奥へと姿を消した。それは見方によっては、ガイを中へ案内しているようにも見えた。
「本当に元気ね」
「ああ、ちょっとウザいわ」
「もう…口が悪いわよ」
 そう言いながらティアも笑う。横で聞いていたノエルも笑っていた。
「お前さんたちも乗ったらどうじゃ?新仕様の詳しい説明は中で実物を見せながらしてやるぞ」
「いや…遠慮しとくわ…」
 なんじゃつまらんのう、とアストンはぼやく。
「じゃあガイ坊専用の特別講義じゃの」
「今日中に出発出来なくなりそうだからやめてくれ」
 そうこうしている中でも、アルビオールの奥からガイの歓声が聞こえてくる。
「…さっさと出発しねえといつまでもやってそうだな」
「ノエル、お願いできる?」
「もちろんです!」
 ルーク、ティア、ノエルもアルビオールに乗り込む。コックピットに張り付いていたガイを引き剥がし、座席に括りつけてルークたちもまた座る。内装は二号機とよく似ている。自然と、各々よく座っていたのと同じ席を選んでいた。ミュウはティア、フィフィはガイに抱えられてそわそわと辺りを見渡していた。
「皆さん、準備はいいですか?」
 それぞれ確認して、ノエルが操縦桿を握り計器を指差し確認する。ドッグの天井が全開になり、アルビオールのエンジン音が大きくなる。窓の外には技師達が並んで手を振っているのが見えた。アストンの隣にはいつの間にか合流したギンジの姿もあった。彼らに手を振り返すと、機体が上昇し始めた。
「おっ!?おぉ〜!」
 高度が上がるにつれ、ガイのボルテージも上がっていく。フィフィの尻尾もばさばさと音を立てるほど振られている。
「加速します!」
 ノエルの一声で、アルビオールが前進する。久々に感じる加速度。一瞬息が詰まったが、以前より明らかに加速が滑らかだ。天候も良いのかもしれないが、揺れも少なく安定感がある。窓から見えたシェリダンの街はあっという間に小さくなってしまった。
「…すげえ」
「ですの!」
「ええ。全然違うって、私でもわかるわ」
 ルークの呟きにミュウとティアが返す。ガイはと言うと、
「……。…ぐすっ」
 何故か目頭を押さえて鼻をすすっていた。あそこまで行くともはや尊敬する域だな、とルーク達は何も見なかったことにした。