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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 召使いに連れられた先は王城の謁見の間だった。既にキムラスカ国王のインゴベルト六世が玉座に座し、右脇には両親のクリムゾンとシュザンヌ、左脇にはローレライ教団のトリトハイム大詠師やゴールドバーグ将軍らが控えていた。
 ルークはインゴベルトの正面へ歩み寄り、片膝をつく。
「面を上げよ」
 国王の言葉を待って礼を解く。インゴベルトは玉座から立ち上がり、杖を突きながら階段を降りてルークの前に立った。
「…陛下」
「この日を迎えられたこと、心から嬉しく思うぞ」
「私もです、陛下」
 インゴベルトが目を細め、深く頷くと、遅れてナタリアも登殿した。
「おお…ナタリア!」
「お父様」
 長いベールをメイドに抱えられながら、ナタリアがゆっくりと赤い絨毯の上を歩いてくる。インゴベルトは目頭を熱くしながら、それを見守っていた。
「長らくお待たせしてしまい、失礼致しました」
「ナタリア…」
 ナタリアがルークの横に並ぶ位置に辿り着くと、インゴベルトがナタリアの手を取る。
「おお、本当に綺麗になった…父にその顔をよく見せておくれ」
「ふふ…お父様ったら」
 脇に控えたシュザンヌやゴールドバーグ将軍が既に目元をハンカチで押さえていた。インゴベルトがそっとナタリアを抱き寄せる。
「幸せになるのだぞ、ナタリア…」
「はい…お父様」
 ナタリアもまたその背を抱き返して笑顔で答えた。抱擁を解き、二人が小さく頷きあうと、インゴベルトはルークを見た。
「ルーク。ナタリアを…我が娘を、よろしく頼む」
「はい陛下。……いえ、義父上」
 ぐ、とインゴベルトが涙を堪えるように目を細める。右手で目頭を押さえ、こくこくとまた頷いた。その背をナタリアが微笑みながら擦る。左のゴールドバーグ将軍は盛大に鼻を啜り、右のシュザンヌはもう嗚咽を抑えきれなくなっていた。クリムゾンもまた、何かを堪えるように目を瞑って動かない。
「では皆様。教会へのご移動をお願いします」
 トリトハイムが声をかけると兵士達が慌ただしく動き出し、執事達がそれぞれを馬車へ案内する。花嫁と花婿は別々の馬車だ。
「後でな、ナタリア」
「はい。また後で」
 介添人である父と共に馬車に乗り込み、御者の合図で走り出すと、教会に続く街道は民衆で埋め尽くされていた。歓声に応えるために手を挙げると一際声が大きくなる。
「皆、お前に期待しているのだ」
 厳格な父のいつも通りの口調に、ある意味で安心する。母が聞いたら「こんな時までそんな言い方をして!」と怒ったであろう。
「王家の恥にならぬよう、精一杯努める所存です」
 この人との付き合い方も、すっかり慣れた。記憶の中では厳しい面しか見た覚えがなく、もちろん尊敬していたが、正直幼心に恐怖も抱いていた。ルークは反発してばかりだったようだが、父も随分丸くなり、帰還してからは激しく衝突することはほぼなかった。
 息子の返答に「ああ」と素っ気なく返し、しばし沈黙した後、
「お前は、私の誇りだ」
 そう言った父に、我が耳を疑うルーク。驚きのあまり言葉を失った。目を丸くしていると馬車が止まり、御者が車の扉を開いて降車を促す。
「…父上!」
 車を降りながら父の背に呼びかける。
「俺…私も、父上の息子であることを誇りに思います!」
 顔だけ振り返っていたクリムゾンが、ふ、と一瞬笑ったように見えた。しかしすぐにいつもの厳しい顔つきに戻ってしまう。
「さあ、手を振ってやりなさい。民衆の期待に応えることが王家の一番の役割だ」
 父の言葉にはっとし、笑顔を作り街道の民衆に手を振りながら教会へと入る。クリムゾンはそんなルークの後ろをついて歩く。ルークはもう、父の存在を怖いとは思わなかった。