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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 主祭壇へ向かって教会のバージンロードを進むと、来賓者の席にティアたちの姿もあった。新婦側に座るティアとノエル、その隣のアニスとフローリアンが手を振っている。ティアの膝の上にはミュウもいた。その他、ケセドニアのアスターやシェリダンのアストン、ギンジ、漆黒の翼の面々の姿まである。
(ナタリア、あいつらまで招待したのか)
 表向きは暗闇の夢というサーカス集団となっているものの、その実義賊という名の犯罪集団だが大丈夫なのか。そう思っているとノワールがウインクと一緒に投げキッスをかましてきた。一瞬眉を顰めて見なかったことにする。
 新郎側にはジェイドとガイに挟まれてピオニーがおり、元庭師のペール、ジェイドの妹のネフリーやエンゲーブのローズ村長も座っていた。両国の将軍や貴族達も顔を揃え、錚々たる面々が一同に会している。
(よく考えたら凄いことだよな)
 数年前ならば、キムラスカ王家の婚儀にマルクト籍の人間が呼ばれるなど有り得なかっただろう。マルクト人どころか、マルクト皇帝もがここにいるのだから、とんでもない話だ。しかしこれも、アッシュの功績ではなく、あくまでルークの行いあってのことなどだと思うと心からは喜べなかった。
 にわかに教会の外の歓声が大きくなる。主祭壇に立つトリトハイムがルークに目配せをすると、ルークは姿勢を正した。教会の扉が開かれると、陽の光を背に受けて、ナタリアとインゴベルトがバージンロードを歩き出した。
 ローレライ教団の音律士(クルーナー)達が賛美歌を歌い、教会内の来賓者が感嘆と共に拍手を贈る。ベールが下ろされたナタリアの表情は遠目から見ても美しい。二人が半分ほど歩いた所で、ルークがナタリアを迎えに行く。父インゴベルトの腕から、新郎ルークの腕にナタリアが渡る。二人がインゴベルトに頭を下げ、振り返って主祭壇の前へ歩き出す。
 来賓の盛大な拍手を両側から浴びて、主祭壇に辿り着く。賛美歌が止み、トリトハイムが教典を開く。
「これより、新郎ファブレ子爵ルークと新婦キムラスカ・ランバルディア王家ナタリアの婚儀を執り行います」
 場にいる全員が、トリトハイムの言葉に聞き入る。ペラリ、と教典のページが捲られる音が響く。
「婚儀に際して、教典の一説より、皆様にお聞かせ致します。教典にはこうあります。愛とは星が生まれた時より存在し、愛により星が生まれた。命は必ず愛と共にあり…」
 ルークは頭の上から降ってくる言葉を、どこかぼんやりとした心地で聞いていた。リハーサルの通り行けば、誓いの言葉まで出番はない。じっと主祭壇の木目を見つめて時が経つのを待つ。トリトハイムの説法が中盤に入った気配を感じ、少し視線を上げるとルークは息を呑んだ。
(おい、馬鹿やめろ…!)
 ルークの目に、トリトハイムの肩に乗って教典をのぞき込むあの薄緑色の生き物が飛び込んできた。大きな尻尾が揺れる度、トリトハイムの帽子に当たるのではないかとヒヤヒヤする。
(誰にも見えてないよな…!?)
 ざわめきなども起きていないところを見ると、自分にしか見えていないらしい。背中を嫌な汗が伝う。生き物がバランスを崩してずるり、と前のめりに落ちそうになって思わずルークの肩も揺れる。パタパタと脚の位置を直して生き物はバランスを取り戻し、ルークもほっと息をつく。
(…いやいや、何してるんだ俺は)
 人生に一度きりの大事な式典中に何故こんな生き物に気を取られているのか。
「新郎ルーク」
「!」
 はっとしてピクリ、と体が揺れる。まるでイタズラを見咎められた子供のようだと思った。
「汝、ナタリアを妻とし、良き時も悪しき時も…」
(ちくしょう…)
 トリトハイムが誓いの言葉に入る。原因である生き物は主祭壇に降りて、教会のステンドグラスを眺めている。パタパタと揺れる尻尾から生まれる風を前髪に感じて、怒りを抑えるように目を瞑る。
「……妻を想い、妻のみに添うことを、神聖なる婚姻の契約のもとに誓いますか?」
 いつの間にか宣誓の時になっていた。慌てて目を見開き、顔を上げる。目の前の生き物を通り越して、トリトハイムと目を合わせる。キラリ、と正面のステンドグラスが輝いた気がした。
「はい、誓い────」
 ピン!と生き物が耳を立てたかと思うと、ステンドグラスがピシッと音を立て、亀裂が走る。みるみるうちに亀裂は広がり、ミシミシと音を立て始める。
「…ナタリア!」
 大きな音を立ててガラスが砕け散る。咄嗟にナタリアを外套の中に匿い、背をステンドグラス側に向ける。
────きゃあああああっ!
 来賓者たちから悲鳴が上がる。教会内に控えていた兵士達が動き出し、要人達の護衛につく。バラバラと砕けたガラスが床に落ちきったのを感じて、ルークは顔をあげ振り返る。
 床から天井までを貫くように造られた大きな窓はガラスが割れ、教会の外の青い空が切り抜かれたように目に飛び込んできた。外界の眩しさに一瞬目を細める。しかし次の瞬間には、驚きで見開かれた。
 そこには、黄金に輝く巨大な鳥がいた。