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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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「ルーク!」
「ルーク…!」
 ガイとティアがルークに駆け寄る。不安げな顔をする二人に対して、平気だとルークが手で示す。
「撮れたかマーク」
「は、はい。恐らく…」
 病室の外ではレヴィンとマークが手元の小さな箱のようなものを確認しながら何か話していた。あの箱はなんだろうかと様子を窺っていると、ベッドの上の患者たちが身動ぎし始めた。
「すみません皆さん、失礼しますね」
 シュウがルークたちへの労いもそこそこにベッドに駆け寄る。
「マーク、他の連中呼んでこい」
「はっ…はい!」
 レヴィンがマークに指示を出しながらベッドに近付く。マークは小脇に箱を抱えてどこかへ走り去ってしまった。
「御一行、ご苦労さん。ここからは我々の仕事だ。悪いがちょいと外で待っててもらえますかね」
 ルーク達の返事を聞くより先にレヴィンは患者の診察に入ってしまう。もっと何だかんだと問い詰められるものかと思っていたので拍子抜けした。
「…ルーク。ここは一度出ましょう」
「ああ…そうだな」
 ティアに促されるままに部屋を出る。
「まさかあんなに一気に片付けることになるとはな」
 ガイが呟き、フィフィがその肩に飛び乗った。
「お前だぞフィフィ」
 ルークがすかさずフィフィの首根っこを掴んで目の前にぶら下げる。
「なんで急にあんな量引っ張り出したんだよ」
 前みたいに一人ずつやれば良かっただろ、と責めるルークに対してもフィフィはどこ吹く風だ。手応えのなさに、ルークは少々乱暴にフィフィをガイに突き渡した。
「捌ききれなかったらやばかっただろーが」
 わさっとフィフィの尻尾が揺れ、フィフィは眠そうに目を細めた。そのふてぶてしい態度に、そのような事態は全く想定していなかったのだろうと想像できる。
「ルークならやれるって思ったんじゃないか」
「ったく…」
 正体不明の魔物にそんな信頼を寄せられても嬉しくない。わしゃわしゃと頭をかくルーク。しばらくすると廊下の向こうから、マークに連れられて医師と看護師達がやってきた。ルーク達には目もくれず、医師達は病室へ駆け込む。入れ違いにレヴィンが部屋から出てきて、首を回しながらマークにどさっと紙の束を預けた。彼にまず声をかけたのはティアだった。
「先生、患者の皆さんは…」
「ああ、全員意識を取り戻した。多少記憶の混乱はあるが命に別状はないよ」
 それを聞いてルーク達はほっと胸を撫で下ろす。
「それより、そのネズミだ」
 ネズミ?と皆が首を傾げているとレヴィンの腕がガイに伸びる。その手が掴んだのはガイ、ではなくその腕の中のフィフィだった。レヴィンはその身体の軽さに一瞬驚いた顔をした。
「ネズミ…」
 レヴィンに掴まれて手足をばたつかせるフィフィを見ながらルークが呟く。
「ネズミっつーかイヌだろ?」
「ウサギ…」
「キツネじゃないのか?」
「僕はネコだと…」
「イヌとキツネは同じイヌ科だろーが…ってそこはどーでもいいんだよ」
 観念したように脱力したフィフィをルーク達に突きつけながらレヴィンは続ける。
「こいつは一体なんだ?どこで捕まえてきた」
 一同が目を見合わせる。仕方なく、ルークが渋々返事をする。
「…気付いたらそばにいた」
「なんだその三流の恋愛小説みたいな文句は」
 端から納得してもらえるとは思っていなかったが、レヴィンの切り返しが予想の斜め上を行っていて二の句が継げなくなる。
「後ろから見てたが、こいつは第七音素(セブンスフォニム)を操っていた。魔物が第七音素を扱うなんて聞いたことがない」
 呆然とするルークを余所にレヴィンは言い連ねる。
「どうして第七音素だと?」
「こいつの足元に出現した譜陣の色を見ただろ。第七音素による術式のものだった」
 はっとティアが息を飲んだ。
「あとは、俺たちの中でこの奇病に第七音素が関わっているっていう仮説が立っていることも大きい」
「そうなんですか?」
 ああ、とレヴィンが頷く。
「この病の罹患者の五割以上が第七音譜術士(セブンスフォニマー)、またはその素養を持つ者であることが判ってる。そして残りの三割はレプリカだ」
「!」
 今度は三人ともが息を飲む。
 レプリカ。フォミクリーという技術で生み出された物の呼称だ。ベースとなる被験者(オリジナル)と全く同じ容姿を持ち、遺伝子情報ともいえる音素振動数さえも同じになる、いわば複製品。元は無機物に対してのみ有効だった技術は応用され、生命体、つまり人間にも使われるようになった。ルークも嘗てその技術により生まれたレプリカだった。
 そしてある一件で人間の生体レプリカは大量に生み出され、今でもオールドラントには多くのレプリカ達が生きている。
「ここで問題になるのは、レプリカの身体を構成する音素が100%第七音素であること。そして第七音譜術士も、生まれつき体内に第七音素を所有していること。どうだ、無関係とは思えないだろ?」
 考え込むように俯いていたティアが顔を上げて発言する。
「…先生方は、瘴気中毒の研究をしていたと仰っていましたね?」
 レヴィンは我が意を得たり、とでも言うようにニヤリと笑った。
「我々の仮説が正しいと証明するために、協力してもらいたいことがある」
「どういうことだ?」
 ルークとガイは完全に置いてけぼりだ。まあ聞け、とレヴィンは両手で二人を制する。
「あの黒い魔物をサンプルとして捕獲して欲しい」
 とんでもないことになった、とルークは思わず頭を抱えた。