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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 時間が空いたルークたちは、その間を情報収集に充てることにした。目的はナタリアを攫った鳥型の魔物と同行している女の行方を知ることだった。あわよくばナタリアを眠らせている原因やアッシュが消えた理由も何か掴めたら、と考えた。
「フィフィについてはいいの?」
「あー…そうだった」
 フィルフィスパニアも魔物なら、鳥型の魔物の話と一緒に何か分かるだろうか。
「ひとまず、挨拶がてらスピノザのとこで詳しい人に心当たりがないか聞いてみないか?」
 スピノザはベルケンドの研究所に籍を置く物理学者だ。シェリダンのアストンとも知己の間柄で、かつての旅でも何度かその知識の世話になった。今でこそルーク達の心強い協力者だが、ここに至るまでも紆余曲折があった人物だ。
「久しぶりに顔出しとくか」
 スピノザの居場所なら心当たりがある。第一音機関研究所へ戻り、様々な研究ブロックの脇を抜けながら奥へ進むとその姿はあった。備え付けのホワイトボードをじっと見つめ何かを考えている彼の背中に声をかける。
「よお、元気そうだな」
「…あんたらは」
 またどうして、とスピノザは驚き振り向く。
「色々あってさ」
「全く、相変わらずだな」
 来るなら一言連絡くらい寄越さんか、とぼやくスピノザも嫌がる素振りはない。
「もう少し早ければサフィール博士もいたんだが」
「サフィール…?」
 聞き覚えはあるが直ぐに顔が思い浮かばない。眉根を寄せたルークにガイが言う。
「ディストのことだよ」
「あいつここにいんのか」
 元神託の盾騎士団であり、六神将と呼ばれたうちの一人。六神将の数少ない生き残りで、最終的にマルクト軍に捕まっていたように記憶しているが…。
「彼は軍の監視下で研究を続けておるよ。重罪人ではあるが、彼の才能は今のオールドラントには必要なものだ」
「へえ…?」
 ディストといったらよくわからない音機関ばかりつくって派手に爆発させているイメージしかない。正直、刑期であるにも関わらず自由に動き回る権利を得られるほどの人物とは思えなかった。
「凄い奴なんだぞ、あれでも」
「プラネットストームが停止してからの代替エネルギーの研究は彼を中心に進めておる」
「ふーん…よくわかんねーけどそのすげえ奴はどこ行ったんだ?」
「アルビオールの新型が近くに停まっていると聞いて飛んで行った。…ああ、それもお前達だったのか」
 スピノザは合点がいったようでひとつ頷いた。ディストがアルビオールへ向かったと聞いて思い浮かんだのは置いてきた操縦士のことだ。
「…ノエル大丈夫かな」
「監視もついてるって話だし、変なことにはならないだろ」
「…だな」
 悪いノエル、とその身に降りかかる災いが少しでも軽くなるようルークは祈った。
「それで、わざわざ此処に立ち寄ったからには何か用事があったんだろう?」
「そうなんだ。実は色々と聞きたいことがあって…」
 まず何から聞こうか、と考えて一番あっさり終わりそうな話題から選んだ。
「魔物に詳しい学者に知り合いとかいねえか?」
「魔物?」
「そう。具体的に言えば、でっかい金色の鳥とか…こいつの事とか知ってそうな」
 こいつ、の部分でフィフィを指さす。
「魔物学の専攻者には何人か心当たりがあるが…」
「もし良ければ紹介していただけると助かります」
 ティアに言われ、スピノザは戸棚から何か取り出してきた。
「無駄足になるやもしれんが」
 手渡されたのは名刺だった。学者の名前と、所属研究所の住所も記載されている。
「ありがとう、助かる」
 ポケットにしまい込みながらルークは礼を述べた。
「少し前まで魔物の突然変異が頻発していたせいで忙しくしておるかもしれんが、一度訪ねてみるといい」
「突然変異?」
 ひっかかったキーワードをルークが思わず口にする。
「そうか、お主は知らんか」
「貴方が戻って来る前は、魔物の突然変異や…異常気象、魔物の凶暴化なんかが多発していたのよ。プラネットストームを停止させた影響だとされたのだけれど」
 スピノザの代わりにティアが答えた。
「最近はめっきり落ち着いていたから平気かと思っていたけど…あの黒い魔物も、そのひとつかもしれないわね」
「突然変異か…」
 プラネットストームはこの惑星のエネルギー循環を担う巨大な譜術だった。2000年も稼働させていたそれを停める事でどういった影響が出るのか、不安要素は十分にあったがそれを検討する暇は無く、人類はプラネットストームを放棄することを選んだ。その影響であると言われれば、なるほどと頷くしかない。
「その辺も含めて聞けるといいな」
「ああ」
 全てを知るには時間が足りないかもしれないが、知らずにいられるとも思わない。この星にそれだけ大きな変化をもたらすきっかけになったのは、他でもない自分達なのだから。
(たとえ何もできなくても、俺達には知る義務がある…よな)
 今でなくとも、きっといずれ知ることになるはずだ。何が出てきても狼狽えることの無いように心構えだけはしておこうと思った。
「もうひとついいか?」
「ああ」
 スピノザが頷くのをみてルークは言う。
「俺と、アッシュのことなんだけど」
「…何?」
 一瞬でスピノザの顔つきが険しくなる。やはりフォミクリー技術やレプリカ関連の話はスピノザにとって好ましくないだろうか、と躊躇していると
「待て。…ではお前は“ルーク”なのか?」
「え…」
 ルークがスピノザの言わんとしていることを察する前に彼が再び口を開いた。
「いや…すまん。まずはそちらの話を聞こう。ただ、状況の説明は詳しくしてもらえるか」
「…わかった。実は────」
 地殻から戻ってきてからと、先日のフェレス島での出来事、今の状況をなるべく思い出しながら話す。聞いているスピノザはどんどん俯き加減になり、腕を組んで小さく唸るばかりだった。
「うむ……すまんが、儂にも突然アッシュが消えた理由はわからん。そもそも大爆発(ビッグバン)についてはその特性故、研究もほとんど進んでおらんからな…」
「そっか…そうだよな」
 ダメで元々、のつもりで訊ねた事だったのでルークはここで話を切り上げようと思ったのだが、スピノザが唸った。
「どうした?」
「いや…何か思い出しそうなんだが、何故か出てこん……」
 スピノザはじっとフィフィを見つめ、ついには諦めたように目を伏せ頭を振るとため息をついた。
「駄目だな…思いついたら連絡する。…ああ、それと」
「なんだ?」
 スピノザが一段表情を曇らせて言った。
「もしサフィール博士に会ったらお前が“ルーク”であることは伏せておいた方がいい。その場で解剖されかねんぞ」
「………わかった。気をつけるわ」
 笑ってすまそうかと思ったが、本当にありそうだと思ったルークはスピノザの忠告を素直に受け入れた。