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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 オルフェが機嫌よくサンプルにラベリングしている間、ティアがテーブルの上に開かれた図鑑のページを手遊びに捲る。それをルークも脇から眺めた。世界中を旅した経験を持つルーク達だが、図鑑には見たことの無い魔物ばかりが描かれている。
「希少な魔物を中心に取り扱った書物みたいね」
「ふーん…」
 まだまだ知らない物が世界には沢山あるのだな、などとらしからぬ事を考えているとふと思い出した。
「…あいつも載ってるかな」
「あいつ?」
「例の光る鳥だよ」
 ああ、とティアが漏らして図鑑の目次を探る。
「鳥型は……この辺りみたい」
 ティアが膝の上に乗せた図鑑をルークも覗き込む。記憶にある鳥の姿を思い起こしながらページを捲るが、描かれた姿絵はどれもぴんと来ないまま次の魚型の項が始まってしまった。
「……無いか」
「何の…話……?」
 いつの間にかサンプルの片付けを終えたオルフェが傍に戻ってきていた。
「実は、探している魔物がいて……金色に光ってて、尻尾とか翼は虹色のでっかい鳥なんですけど」
「金と……虹色………」
 オルフェがそれ以上何も言わないのをみてルークは言葉を重ねる。
「ほんと人が乗れるんじゃねえかってくらいデカくて、何故か見える奴が限られてて……あの」
 オルフェは表情を変えず、じっとルークを見つめている。
「…すみません。情報としては、このくらいしかないんですけど……何かご存知だったり」
 しませんか、と言ってはみるがオルフェの様子からどうも望みは薄そうだと感じた。ダメか、とため息をついた時だった。

「────…其の姿は正に太陽。金色(こんじき)の体は大地を照らし、彼の道即ち草木も萌ゆる」

 とうとうと語りだしたオルフェの唇は、休むことなく尚続ける。突然のことに驚くルーク達もそれをただ聴いていた。
「虹が彩る大翼は、空切り、風裂き、星を駆る……」
 一切の淀みなく謡ったオルフェは、呆気にとられるルーク達へゆるく微笑んだ。
「どう、かしら……私が思い出したのは、これ…だったけど……」
「今のは…?」
 何かの詩の一節のようだったが、聞き覚えが無かったルークは首を捻る。
「歴史書の一節よ……陽光の化身、アスカを…表す…」
「アスカ?」
 名前を聞いてもピンとこない。すると横のティアが助け舟を出した。
「第六音素の意識集合体、アスカ。意識集合体はそれぞれの音素に存在するとされているわ。ローレライ以外は観測されていないから、今は一部の名前を暦で見るくらいしかないけれど……」
 ですよね博士、とティアが確認するとオルフェはこくりと頷いた。
「その観測されてない奴に、どうして今みたいな?」
 しかもオルフェが諳んじたアスカの描写は、ルークの記憶の中の鳥と合致した。気にならないはずがない。
「不思議よね……誰かの想像、かもしれない…けど、あらゆる時代…言語で、似た記述が…残っている……これは、偶然……?」
 またフラフラと部屋の中を歩き出すオルフェ。何かを探しているのか、積まれた書籍をひっくり返し始めた。
「ええと……何処にやった…かしら…?」
「…博士、危な……」
「あら……?」
 ガイが止めようとしたが、時すでに遅し。オルフェが触れた山が傾き、案の定派手に雪崩れた。
「ぐえっ!?」
 ドサドサという音の間に蛙が潰れたような声がひとつ。しかしそれすらオルフェは意に介さず、手に取った封筒を開いていた。
「あったわ……えっとね…」
「は、博士…今はそれより……」
 尚話を進めようとするオルフェに対してガイが雪崩の向こう側を覗き込むが、床に寝そべっていたはずの人物の姿は完全に本に埋まってしまい確認が取れなかった。
「今度こそ死んだんじゃ…?」
「…かもしれない…」
 掘り起こしてやりたいが、ルーク達の周りも本で囲まれているため迂闊に動けない。雪崩のせいでより一層足の踏み場は無くなり、彼の元へたどり着くのも容易ではないため申し訳ないが諦めた。
「一番、最近の手紙には…ダアトへ…行くって、書いてある……」
「…えっと、すみません。誰が……?」
 オルフェの中では勝手に話が進んでいたのか要領を得ず、ルークがつい聞き返した。するとオルフェは手に持っていた手紙を封筒ごとルークに差し出した。それを受け取り、差出人の名前を見るとそこには「ディケ・ウェストン」と書かれていた。
「その人……意識集合体に、関する…伝承の…研究を…してるの…」
「じゃあこの人に聞けば…」
「きっと……詳しく、教えて…くれるわ……」
 餅は餅屋……と言いながらオルフェがメモに何か書き出す。どうやら紹介状らしきものを作ってくれているらしい。
「もし本当に…あなたが見たのが、アスカ…だったら……この人、喜ぶわ……」
 はい、とオルフェからメモ書きを手渡される。
(なんかすげえ適当だけど、これで大丈夫なのか…?)
 ただのメモ帳の切れ端を一枚、裸で渡されたそれは手に取ってみると非常に心許ない。肝心の内容も
『アスカの話を聞かせてあげてください。素人さんなのでやりすぎないように。オルフェ』
 としか書かれていなかった。
「あまり…ひと所に…留まる人では、ないから……すれ違いに…なったら………ごめんなさい……」
「いえ、そうなったらこっちで探してみます。どんな人なんですか?」
「うん………」
 オルフェが中空を見つめて頬に指を当てる。
「元気で…体と声が、大きくて…体力だけが…取り柄で……………ん……とにかく、騒がしい人……」
「…わかりませんけど、わかりました」
 体の大きい騒がしい人を探して歩けば辿り着くだろうか。若干不安は残るが、次の目的地はひとまずダアトということになりそうだ。
「ルーク。そろそろ……」
「ああ、だな」
 まだ聞いてみたいことはあったが、レヴィンとの約束の時間も近づいてきたので、一度退室することにした。
「色々とありがとうございました」
 助かりました、と握手を交わす。
「ねえ、これから…世界中を旅して、まわるんでしょう…?」
「ええ、恐らく…」
 そうならないに越したことはないが、正直そうなる予感がある。
「もし旅先で、珍しい魔物の…サンプルが…手に入ったら…私に、頂戴……?お礼は、するわ……」
「わかりました。覚えておきます」
「ありがとう…」
 それがオルフェの研究の役に立てば、魔物の脅威に晒される人々の生活も多少楽になるかもしれない。であれば、出来るだけ協力したいと思った。
「うふふ……楽しみに…待ってる……」
(……ただの趣味とかじゃねえだろうな)
 本の山の間をかいくぐり部屋から抜け出す直前、扉の脇で倒れていた人物の呻き声が聞こえてきた。
「!まさかこの人…」
「…そうか、有り得るぞ!」
 例の奇病で目を覚まさないのではないか、という考えが過ぎり、三人で急いで覆いかぶさった本たちを退ける。一際分厚い本を避けて、彼の肩から上が露出した時だった。
「…うう……やめてぇ………」
「おい、大丈…」
「オタオタが…………オタオタ……増え…………また………」
「……どんな夢見てんだよ」
 心配して損した、とルークが投げ捨てた本で彼はまた「ぐえっ」とひと鳴きした。