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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 翌朝、集合場所にしていた宿屋のロビーにガイと揃って降りると既にティアとノエルが待っていた。ティアはルークの顔を見た途端、
「ごめんなさい」
 頭を下げてそう言った。
「昨日。貴方の意見も聞かず、一方的に私の考えばかり話してしまって」
 自分が言おうとしていたことを正にそのまま、相手の口から先に言われたルークはぽかんと口を開けている。ルークの返答がない事を怒りのサインと受け取ったのか、ティアは更に続けた。
「貴方の気持ちも全然考えてなくて…その。勝手に決めつけてた…」
 話しながら少しずつ顔は上がってきたが、ティアの視線は正面に立つルークから脇に反れている。
「えっ…と」
 突然の謝罪に戸惑うルークはこの状況の理由を探るようにティアの後ろにいるノエルを見やった。ルークと目が合うと、ノエルは笑顔でVサインをしてみせた。
(そういうことか)
 昨晩、ガイがルークにしたように、隣の部屋ではノエルがティアを説得していたのだろう。いつになく素直にティアが謝っているのは、ノエルの努力の賜物という訳だ。
「あー……ティア」
 左手で後頭部を触り、項垂れたティアの頭を見ながらルークが口を開く。
「俺も考えてなかったわけじゃないんだ。もしかしたら、俺はここに残った方がいいのかもってさ」
 ティアが腰を起こしルークを見る。ようやく目が合った、とルークは思う。
「でも、アッシュとナタリアのことが気になってんのは俺も一緒だ。むしろ、ティアに任せちまうのはなんか違う気がする」
 上手く言えねえけど、と今度はルークの目が泳ぐ。
「…だからさ、考えたいんだ。みんなで」
 ルークとティアだけじゃない。ガイもノエルも、色々な人達の知恵を借りて。一人で考え込むより、みんなで話し合った方が結果近道になることをルークは経験で知っている。
「────そうね」
 貴方の言う通りだわ、と緊張を解き朗らかに笑ったティアを見て、ノエルとガイはこっそり目配せで互いを労った。

 * * *

「好きにしたらいいんじゃないか」
 約束の時間にレヴィンの研究室に到着し、件の経緯を相談するとその口から出た答えはあまりにあっさりしたものだった。
「残ってもらったとしてもしばらく仕事はないと思うけどな」
「な、なんでだよ?」
 これからも患者が送られてくるはずだろ、とルークが食ってかかるとレヴィンは鋭い視線を寄越して言った。
「ここは研究機関だ」
 その本質は、事象の原理を解き明かし、世に広く伝播すること。さらにそれが有害事象であれば対策を講じ、再現性が取れるまでにして誰もがその知識の恩恵を受けられるようにする。
「奇跡の力で不治の病を癒す慈善団体になる気はない」
 あけすけなレヴィンの物言いにルークが目を丸くした。事前に予想していたどれとも違うレヴィンの言葉はごちゃごちゃ考えていたルークの頭をいい意味で真っ白にした。それを察したのかレヴィンはふう、と溜息をつきテーブルの上で手を組んだ。
「俺たちにとって患者は貴重な研究資料だ」
 聞こえは悪いかもしれないがな、と付け加えてレヴィンは続ける。
「完治は出来ずとも、これでも運ばれてきた患者を死なせたことはない。今後出さない自信もある」
 彼はルーク達が訪れるより先に、件の病が瘴気の仕業だと見当を付けていた研究者だ。瘴気、ひいてはその中毒者の扱いに関しては誰よりも長けているはずであり、その矜恃もある。事象の解明の為にも、これ以上超振動による干渉を歓迎していないことが口振りでわかった。
「だからここは我々に任せて欲しい。……なんてのは少々かっこつけすぎだが」
 レヴィンが硬くなった空気を散らすように手を払い、そのまま頭の後ろで手を組んで椅子に深く背を預ける。
「ただでさえ昨日研究対象を根こそぎ治療されちまったからな。向こう一…いや、二週間はあんたに仕事は回せねえぞ」
 それでも残るか?とレヴィンは聞く。いや、とルークはすぐに頭を横に振った。
「…だったらその間に出来ることをやる」
「そうだな」
 当然だ、とレヴィンは無表情に言った。
「ただそのネズミは置いてってくれ」
「ネズミ?」
 レヴィンの視線の向きで、フィフィのことを言っているとわかった。ネズミ呼ばわりされたフィフィはガイの肩の上で不服そうに目を細めていた。
「瘴気集合体(コンタギウム)の可視化方法を研究する為にそいつは欲しい。なに、間違っても殺したりはしないさ」
 多少弄くり回すかもしれないが、とは思うだけで口には出さない。
「でも……」
 確かにフィフィは物分かりが良いように思えるし、普通の魔物と違うのは明らかだが、それが果たしてルーク達のいない場でもそうであるのか。ルークがフィフィの顔を見つめていると、フィフィは躊躇うようにガイの頭の後ろに隠れた。フィフィも独り残されるのが嫌なのだろうか、と根拠もなく考えていると
「世話係が必要だってんなら、その為に誰か残ってもらうのは構わんぞ」
 レヴィンが冗談めかして言った。え、とルークが戸惑っていると意図せずガイと目が合った。ふむ、とガイが顎に手を当て口を開こうとした時、フィフィがレヴィンのデスクに飛び乗った。物が散乱する机の上で足場が安定している場所をなんとか見つけ、腰を下ろす。じっとレヴィンの目を真っ向から見つめる姿は「一人で平気だ」と訴えているようだった。
「俺の指示に従えるか」
 こくり。フィフィの頭が縦に振られる。
「殊勝なことだ」
 レヴィンが軽く手を伸ばすとフィフィは軽く首を傾げた後、その掌にぽふっと右の前脚を乗せた。
「ははっ、しかもなかなか賢い」
 下手したら自分より利口かもしれない。フィフィの一芸に機嫌を良くしたレヴィンを見てルークは思った。