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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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「どうしました、大詠師様?」
 インゴベルトが声をかけ、入るよう促す。トリトハイムの後ろにはフローリアンもついていた。
「お伝えすべきかどうか悩んだのですが…彼が気になる事を申しておりまして」
 トリトハイムに言われてフローリアンがぺこり、と頭を下げる。インゴベルトが周りの顔を見渡して、目線だけで承諾を得る。
「お聞かせ頂けますか」
「はい」
 フローリアンが一歩前に出て話し出す。
「私は、ナタリア殿下が姿を消したあの時、教会の中で大きな鳥を見ました」
「!!」
 まだ全員が薄い反応をしている中、ルークだけが息を呑んだ。
「ステンドグラスが割れて、割れた先から中に入ってきた鳥は大きな声を上げると光りだし、それが止んだらナタリア殿下がいなくなっていたんです」
 室内がざわつく。一同、信じられないといった様子で互いの顔を見合わせていた。ルークだけはフローリアンから目を離さない。
「…一応聞くが、それは本当なのか?フローリアン」
 両手を机の上で組み肘をつきながら、ピオニーがフローリアンに尋ねる。それにフローリアンはこくり、と頷いた。腕組みを解いて椅子に寄りかかりながら、「どう思うジェイド」と脇に控えるジェイドに問う。
「にわかには信じ難いですね。我々は全員あの場にいましたが、誰もその鳥を見ていない」
 だよな、とピオニーも眉間に皺を寄せる。他の面々も同様、首を振ったり傾げたりで戸惑っているようだった。フローリアンが不安げにトリトハイムを見上げ、その肩をトリトハイムが優しく叩く。
「フローリアンの言っていることは、本当です」
 ルークの言葉に、全員が視線を一点に向けた。
「どうしてですか、ルーク?」
「俺も見ましたから」
 ざわっと一瞬、どよめく議内。ルークがフローリアンの横に立つ。
「フローリアンと同じものを俺も見ました。体が黄金に輝く大きな鳥です」
「…そう!尻尾は虹色で、とっても綺麗な鳥だったよ!ね、ルーク!」
 ああそうだな、とルークはフローリアンの顔を見て微笑む。二人以外は未だに信じられない、という顔をしていたが先ほどよりは空気がこちらに傾いているのを感じた。
「確かにあの時、全員が砕け散ったガラス片を確認する中で貴方はずっと割れた窓の方を見ていました。不思議に思っていましたが…そういうことなら合点が行きます」
 そんなとこまで見てたのか、とジェイドの観察眼に若干の恐怖も感じながら、思わぬ助太刀に感謝する。
「しかし何故すぐに言わなかったのですルーク様。そういうことであれば状況も変わってきたではありませんか」
「それは…」
「言えなかったのでしょう」
 ゴールドバーグの言葉にルークが言い淀んでいると、ジェイドが口を挟んだ。
「自分ひとりにしか見えていないものを言ったところで信用されない。現に我々は、フローリアンひとりの言葉では信じなかったではありませんか」
 場にいた全員が口を噤む。ジェイドが眼鏡を上げ、ピオニーが頬杖をつく。
「包囲は継続しつつ、捜索班を街の郊外へも回そう」
 インゴベルトが立ち上がり、ルークとフローリアンの肩に手を添える。
「すまなかったルーク、フローリアン。よく話してくれた」
「…伯父上」
 フローリアンがルークを見上げる。ありがとな、と小さく囁くとフローリアンがにっこりと笑った。
「…各班へ伝達!捜索隊の五割を郊外に廻す。中距離班と遠距離班に分け、放射状に捜索するのだ」
「はっ!」
「他にも鳥の姿を目撃した者がいないか探しましょう。兵士達へ伝令を」
 ゴールドバーグとジェイドの指令で将校たちがすぐさま部隊一覧に書き込みをし、伝令役に何事かを伝えると数人が部屋から飛び出していく。また別の者は通信機から命令を送り、一気に慌ただしくなった。
「伯父上、俺も出ます」
「ルーク」
「今のところ、あの鳥が見えたのは俺たちだけです。行かせてください」
 インゴベルトがゴールドバーグと顔を見合わせ頷くと、ルークを正面から見つめその両肩に手を置いた。
「よろしく頼む。必ず娘を見つけてくれ」
「…はい!」
 ルークも力強く頷き、一歩下がって敬礼する。
「ルーク。ティアやガイの居場所を伝えます。彼らと合流してください」
 その方が色々動きやすいでしょう?とジェイドが言う。
「ああ、助かる」
 アニスには現場の指揮を執ってもらっているので動かせませんが、と言いながらジェイドが地図を指さし、ルークがそれを覗き込む。
「ルーク、僕も行く!」
 フローリアンがルークの服の裾を掴んで訴えるが、トリトハイムがそれを優しく引き剥がす。
「ダメですフローリアン。あなたは私と留守番です」
「ええーどうして!?あの鳥が見えるのは僕だって一緒だよ!」
「だからです。あなたはここに留まり、報告があればそれを確認しなければならない。わかりますね?」
 フローリアンが頬を膨らませ抗議の意を示すが、トリトハイムはそれを笑顔で受け流す。
「…はぁい」
「いい子です」
 渋々、といった様子でフローリアンが頷いた。
「じゃあ行ってくる」
「道中お供します、ルーク様!」
 ルークが会議室を出ようとするとセシルと数人の兵士が後ろを着いてくる。
「…セシル将軍。付き添いは不要だ」
「駄目です!今おひとりにするわけには参りません!」
「だからすぐに仲間と合流するって言ってるだろ…」
 扉がパタンと閉じるとふぅ、とジェイドがため息をついた。
「本当はついて行きたかったんじゃないのか?」
「ご冗談を」
 見上げてくるピオニーをちら、と横目に見て肩を竦める。
「もう私も年ですからね。若者のお守りは体に堪えます」
 よく言うよ、と呆れるピオニーにジェイドは鼻で笑って返した。