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テイルズオブジアビス 星の願いが宿る歌

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 正装を脱ぎ普段着に着替えてジェイドに教えられた場所に向かうと、ティアが神託の盾騎士団の兵と共に街を巡回中だった。ティアも正装から見慣れた騎士団の制服に着替えていた。ルークに気付くと、ティアは他の兵士達に二、三言ことわって駆け寄ってくる。セシルの姿も認めてティアが敬礼をし、セシルがそれに返した後ルークに向き直る。
「では私共はこれで」
「ありがとな、セシル将軍」
 頭を下げてセシルが来た道を戻る。彼女はこれからまた別働隊を率いてナタリアの捜索に回る予定だ。その背を見届け、ティアが口を開いた。
「話は聞いているわ」
「そうか」
「どこを探すか、決めているの?」
「いや、それはまだ…」
「そう」
「…」
「…」
 二人の間に沈黙が流れる。何故かティアの顔を直視できない。
「と、とにかくガイと合流しよう。ここからそんなに遠くないはずだ」
「そうね、そうしましょう」
 なんとなく二人きりでいることが気まずく、さっさとティアに背を向けて歩き出すルーク。ティアは何も言わずその後をついて行く。
 街を歩くと、ガイとはすぐに合流できた。片手を挙げて、爽やかな笑顔でルークを迎える。
「大変なことになったな、ルーク」
「ああ、でもすぐに終わらせる」
「それがいい。早くナタリアを見つけてやろうぜ」
 拳を突き合わせて軽く笑い合う。親友とのやりとりに懐かしさを感じ、同時に少しほっとした。
「で、どうする?もう街の外へも捜索隊が出ていったみたいだが」
「街中にはいないと思う。俺たちも郊外を探そう」
「ナタリアを攫ったのは鳥と言っていたわね。飛んでいった方向とかはわからないの?」
「悪い…検討もつかない。フローリアンも見てないらしい」
 ガイもティアもうーん…と唸る。
「1度街で聞き込みしてみるのはどうだ?あんなに観衆がいたんだ、誰か飛び去るところを見ていたかもしれないぞ」
 ガイの提案で一先ず街中で情報収集をすることにした。
「現れたのは黄金の大きな鳥、だったわね」
「翼は虹色で、赤い目だった。大きさは…人なら2人くらい乗せられそうだったな」
「そりゃ相当なデカさだ。早く見てみたいな」
「ガイ、不謹慎よ」
「ははは、悪い悪い」
 本当に二人は自分の言葉を疑わないのだな、とルークは思っていた。
(こんなことなら二人にだけでも先に言っておくんだった)
 前を歩くティアとガイの背中をぼんやり見つめるルーク。自分はこの二人とこんな風に歩いたことは無いのに、自分の中のルークの記憶が、今の光景を懐かしいと思わせる。またズキリと胸が傷んだ。
 情報収集をしようとすると、バチカルには次期国王と謳われるルークの顔が知れ渡っており行く先々で騒ぎになった。そしてナタリアを早く見つけ出してくれ、という声も多く寄せられ、その度に対応に追われて半ば逃げるように街の南に位置する出入口の架橋までやってきた。
「すごいな王子様ってのは」
「ナタリアだって王女じゃねえか…あいつは街に降りても平気そうだったのに、なんで俺だけ」
「彼女はよく街に顔を出していたから市民も慣れていたのよ。まだみんな貴方が珍しいんだわ」
 そういうもんか、と頭を搔くルーク。その様子をティアは横目で眺めている。
「結局欲しい情報はあまり集まらなかったが…これからどうする?」
「…しばらく街には戻りたくねえ」
「ならこのまま一度外に出るか」
 ガイがティアにも確認を取る。ティアは頷き、二人は街の外を見た。外に出るならミュウを連れてくるべきだったか、などと考えながら歩き出す二人に続こうとして、突然視界を何かに奪われた。
「!?」
 日なたの匂いと共に、顔面に張り付く、もふっとした感覚。慌てて左手で引き剥がすと、それはあの薄緑色の生き物だった。
(またお前か!)
 首根っこを掴まえて目の前にぶら下げた生き物に小声で叫ぶ。生き物はじたじたと暴れルークの手から逃れると、したっと器用に着地して橋の鉄骨を軽やかに登っていく。ある程度の高さまで登るとルークと目を合わせてからクイッと空を見上げた。
 その視線につられてルークも空を見る。すると、その先には追い求めていた姿があった。
「な…!」
 黄金に輝く鳥は橋を支えるアーチの頂点に留まり、嘴で毛繕いをしていた。ルークの視線に気付いて目を合わせると、翼を広げてゆっくりと羽ばたき上昇し始めた。
「待て!」
「どうしたルーク?」
「あいつだ!あそこにいる!」
「何!?」
 ルークが指差す方をガイとティアも見上げるが、二人の目にはただ青い空が広がるだけにしか見えない。鳥は旋回し、北に向かって飛びだした。それを追いルークが街中に向かって走り出す。
「そっちなのかルーク!」
「ああ、このままじゃ飛んで行っちまう!」
「…港よ!アルビオールが停泊してるわ、ノエルも待機してる!」
「わかった港だな!」
 バチカルの北は険しい山を越えたらすぐ海になる。相手は鳥。ならば空の航行が可能なアルビオールでの追跡が有効だと瞬時に判断した。ティアの言葉に従って港へ向かい、操縦士のノエルへの説明もそこそこにアルビオール二号機へ乗り込む。
「…いた!あそこだ!」
 北へ向かって航行しているとアルビオールの高度より遥か下方を輝く鳥が飛んでいるのが見えた。鳥の飛行速度に合わせてもらいながら後を追うと、程なく海上に浮かぶ孤島に鳥の姿が消えた。
「あれは…」
 そこはルーク達も浅からぬ縁のある、フェレス島の廃墟群だった。