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Blue Eyes【前編】

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「こら、アムロ。不用心だぞ。私でなかったらどうする」
叱りながらも優しくアムロの頭を撫ぜる。
「だって大佐だって分かったもの!」
子供の様な口調で微笑むアムロは、今年二十三歳になっていた。
しかし、人体実験の後遺症で脳に障害を負ったアムロの精神年齢はまだ十歳程だ。
そんなアムロの肩を抱き、部屋へと入る。
居間に行くと、部下のキグナン軍曹が会釈をしてクワトロ、否シャア大佐を迎え入れる。
「大佐、お疲れ様です」
「ああ、久しぶりだな」
上着を脱ぎながらソファへと座る。
「アムロ、私はキグナンと大切な話がある。少しあちらの部屋で待っていてくれるか?」
不服そうな顔をしながらも、アムロはコクリと頷いて部屋を出て行った。
「アムロの面倒まで任せてしまってすまないな」
「いえ、思ったより手は掛かりません。普段はずっと部屋で機械弄りをしたり本を読んでいます」
「外に出たいと言わないか?」
「それが、“大佐が出てはいけないと言ったから”と、逆に連れ出すのが困難な程です」
「そうか…アムロにはもう少し言い方を変えておかなければな。何かあった時に逃げ遅れてしまう」
「そうですね…」
シャアはキグナンが用意したコーヒーを口にしてホッと息を吐く。
「エゥーゴの方は中々大変そうですね」
「まぁな。軍とは言っても反連邦組織だからな。人も金も足りん。スポンサーに媚びを売らねば何も出来ん。あれではアナハイムの私兵だ」
「地球連邦政府はエゥーゴがティターンズを壊滅させたとして、その後どうするつもりでしょうか?」
「正直…どうもしないだろうな…政府のお偉方には戦争は他人事だ。だから、戦争で多大な貢献をした少年にあんなおぞましい事が出来る…」
コーヒーカップを握るシャアの手に力がこもる。
「そうですね…。今でも時々夜中に魘されて飛び起きる事があります。酷いとそのまま過呼吸を起こしてしまう時も…。記憶は無くとも、“恐怖”が心に深く刻み込まれているのでしょう…哀れなものです」
「そうだな…」
二人の間にしばらくの沈黙が生まれる。
キグナンはシャアと共にアムロが幽閉されていたシャイアンの屋敷に潜入したメンバーの一人だった。
そして、一年戦争でもシャアの補佐をし、地球連邦軍と戦った軍人だ。
当然、連邦の兵士であるアムロに恨みが無いわけじゃない。
しかし、シャイアンでアムロの現状を見た瞬間、恨むべきはパイロットではなく、高みの見物をしていた上層部だと気付いた。
それ以降、アムロに対して個人的な恨みを持つ事は無かった。むしろ真っ白なアムロに好感すら感じていた。
「大佐、アムロ・レイを今後どうなさるおつもりですか?」
キグナンの問いにシャアは少し思案してから小さく首を横に振る。
「すまない、とりあえずはこのままここで匿って欲しい。同胞達の中にはアムロを受け入れられない者も多いだろう…」
「そうですね…。同胞といえば、アクシズに動きがありました」
キグナンが資料を取り出しシャアに見せる。
「核パルス反応です。アクシズが地球圏に向けて動き出したと思われます」
「ハマーンか…ティターンズとの決着も付いていないのに…まだ時期尚早だ…厄介だな」
「地球圏に到着するのも時間の問題かと…」
「分かった。また情報が入り次第報告を頼む」
「はい」
少し思案した後、キグナンがシャアを見つめる。
「……大佐」
「何だ?」
「我々は何があろうとも大佐について参ります。ジオンの真の後継者はミネバ・ラオ・ザビではありません。大佐です」
「キグナン…。ああ、お前はダイクンに仕えていたのだったな」
「はい、キャスバル様。貴方が真の後継者です」
「キグナン…」
真っ直ぐに見つめてくるキグナンに、シャアが少し困った顔をする。
「今はただの連邦軍人だ」
「そうですね…“今は”…。しかし、大佐が一言声を上げて下されば、我ら同胞はいつでも立ち上がりましょう」
「そう焦るな。キグナン」
シャアは調査資料をしまい立ち上がる。
「大佐…」
「今日は私がアムロを見ていよう。明日、10時にアナハイムへ行く。その時にまた来てくれ」
話はここまでだと言うようにシャアはキグナンに背を向ける。
すると、居間のドアからアムロが顔を覗かせた。
「お話終わった?」
そんなアムロに、シャアはホッとした表情を浮かべ、優しくその柔らかい癖毛撫ぜる。
「ああ、終わったよ。今日はここに泊まっていくから一緒に食事をしよう」
「本当!?やったー」
無邪気に喜ぶアムロをキグナンは複雑な思いで見つめる。
これから、彼はどうなるのだろうと…。



「それでね、キグナンさんが作ったシチューがすっごく美味しかったんだ」
「ほう、彼にそんな特技があったとはな」
「ふふ、顔はちょっと怖いけど、凄く優しいよ」
ベッドに横になりながら楽しげに話すアムロをシャアが優しく見つめる。
「ここにずっといて退屈ではないか?」
「うん。キグナンさんが本とか色々買ってきてくれるから!でも…」
「でも?」
「大佐に会えないのは寂しい」
上目遣いで見つめてくるアムロに少しドキリとしながらも「そうか…すまないな」と答える。
すると、アムロがそっとシャアの顔に手を伸ばす。
「アムロ?」
「大佐の瞳…凄く綺麗なブルーだね。吸い込まれそうだ…」
「君の瞳もとても綺麗だよ」
「そうかな?大佐の瞳のが断然綺麗だ。僕、凄く好きだ…」
「瞳だけか?」
「え?あ、ううん。全部好き!大佐の全部が好き!」
シャアの首に腕を回し、アムロがギュッとしがみつく。
「そうか…嬉しいよ。私も君が好きだ」
「本当!?」
嬉しそうに頬をすり寄せるアムロの顎に手を添え、そっとその唇に口付ける。
いつからか、こうして素直に好意を向けてくるアムロに愛しさを感じるようになった。
敵として戦い、ララァを殺した彼を憎いとさえ思っていた筈なのに、あの日、壊れてしまったアムロを見つけた時、置いて行くという選択肢はシャアには微塵も無かった。
自分のものになるべきニュータイプの少年。そう、“アムロを自分のものにしたい”その想いは、ア・バオア・クーで互いの剣を交わし共感した時に…いや、おそらくもっと前…ソロモンで同志になれと誘った時には既に心にあった。
ララァ同様、彼を自分のものにしたかった。
そして今、その奇跡の存在がこの腕の中にいる。
「アムロ…」
自分に身を任せるアムロを抱き締め、その身体を拓いていく。
優しく啄ばむように口付けを繰り返し、少し開いた唇から舌を滑り込ませる。
その舌を覚束ない動きながらも受け止めてくれるアムロに愛しさが込み上げる。
「アムロ…」
「大佐…」
「シャアだ」
「シャア?」
「そうだ、今だけでいいからそう呼んでくれないか?」
「でも、みんなは大佐って呼ぶよ?」
「アムロだけは特別だ。今だけそう呼んでくれ」
「よく分かんないけど…うん、いいよ、分かった。シャアって呼ぶ」
「ありがとう」
「ふふ…シャア…大好き…」
「ああ、私も好きだよ」
愛しい存在を抱き締め、その温もりを確かめる。
先行きの不安な今、この存在だけが自分の支えだった。


翌日、ベッドの中で微睡むアムロの耳にシャアの声が微かに響く。
「シャア?」
作品名:Blue Eyes【前編】 作家名:koyuho