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Lovin’you afterCCA15

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「ああ、一年戦争当時に事故死したと聞いた」
「例の、サイド7をジオンが強襲した時に?」
「いや、あの時はなんとか無事だったんだが、宇宙に投げ出されてしまったせいで酸素欠乏症になってな…ホワイトベースがサイド6に停泊した際に偶然アムロとは会えたんだが…親父さんの状態にかなりショックを受けたようだった。親父さんが亡くなったのはそのすぐ後の事だ」
「アムロさん…辛かったでしょうね…」
「まぁ…亡くなった事よりも…最期まで自分に振り向いて貰えなかった事の方が堪えていたみたいだがな」
「それで、母親の方はどうなってんだい?生きてるんだろ?」
「ああ、今は難民キャンプから自宅に戻ってそのミュラー氏と一緒に暮らしている」
「しかし、どういう事だい?母親からでなく一緒に暮らしてる男から連絡って…」
レズンの質問に、ブライトは一年戦争当時、地球で再会したアムロと母親との決別の光景を思い出す。
「…アムロと母親は…一年戦争当時に一度再会しているんだ…。その時、アムロは母親に…軍人である自分を受け入れてもらえなくてな…。二人は決別してしまったんだ…」
「そんな!アムロさんだってなりたくて軍人になった訳じゃ…」
「まぁ…アムロの母親は…ある意味、本当に普通の女性だったんだ」
「普通?」
「ああ、戦争に巻き込まれてはいたが、実際に戦場を見たわけじゃない。そんな彼女にとって、人が人を殺すという行為は、犯罪であり、異常な事なんだ」
ブライトの言葉に、レズンとカミーユはゴクリと息を飲む。
確かに、自分達は戦場に身を置いていた為に、その辺りの考えが麻痺していたところがある。
普通に生活する上で、人を殺すという行為は裁きを受けるべき犯罪だ。
「彼女には、戦争とはいえ、軍人となって人を殺す我が子を受け入れる事が出来なかったんだ」
彼女の気持ちも分からなくはない…。
我が子が人を殺すのを喜ぶ親はいないだろう。
「アムロが母親に会いに行った時、自身と母親を守る為にジオン兵を撃ったアムロを、彼女は叱ったそうだ。このジオン兵にも家族がいるはずだと、そして昔は虫も殺せない優しい子だったのに変わってしまったと…アムロを責めたそうだ…」
「そんな…」
母親の言っていることは決して間違いではない。戦時中でなかったら当然の事だ。
しかし、当人が望んで軍人になった訳ではないとは言え、軍事として必死に戦い、生きてきたアムロにとって、その言葉は今までの自分を全否定するものだった。
「アムロはその時…母親を…帰る場所を失ってしまったんだ。そうしてアイツは、軍人として生きる道を選んだ…。それまでは、まだ民間人だという感覚が抜けていなかったが、その日を境に変わって行ったと思う」
「アムロさん…」
カミーユも民間人から、なし崩し的にエゥーゴに参加して戦った。
そのせいで両親を死に追いやってしまった。
その後悔は今でも深く心に刻まれている。
それでも、自分勝手ではあったが、両親はそれなりに自分を愛してくれていたと思う。
しかしアムロは父親に振り向いて貰えず、母親に否定され、結局戦場にしか自身の置き場が無かったのだ。それはどんなに辛い事だっただろう。
「しかし、なんだって今更アムロに連絡をとってきたんだい?」
「連絡をしてきたミュラー氏は同居人であり、彼女の主治医でもあるんだ」
「主治医?」
「ああ、彼女は今、病を患っていて…あまり長くないらしい。それで…アクシズショックで戦死したと思われていたアムロが、例のテロ事件で生きていると知って連絡してきたそうだ」
「それじゃ、母親がアムロに会いたいと言っている訳じゃないのか?」
「それはよく分からない…。しかしな、子を持つ親として…俺が思うに、我が子を想わない親はいないと思うんだ…」
あんな別れ方をした手前、アムロに会いたいとは言えないだけではないだろうか…本心は愛する我が子に会いたいと思っているのではないかと…。
「でも…アムロさんとしては複雑ですね…」
決して母親を嫌っているわけではないだろう。
しかし、また母親に拒絶されたらと思うと、怖くて一歩が踏み出せないのかもしれない。
「そうだな…」


◇◇◇


その頃、逃げ出したアムロをロッカールームで捕まえたシャアは、頑なだったアムロをどうにか宥め、事情を聴き出していた。

「アムロ…どうして話してくれなかったんだ?私たちは夫婦だろう?」
アムロを胸に抱き締めてシャアが問う。
そんなシャアの腕をギュッと掴み、アムロが戸惑いながらもそれに答える。
「…貴方に…嫌われたくなかった…」
「なぜ私が君を嫌うんだ?」
「だって…両親から見捨てられた私なんか…」
その先はアムロの嗚咽にかき消されてしまう。
「アムロ…、何があろうと私が君を嫌うことなど無い。それに…お母上は君に会いたいのじゃないか?」
「…そんな訳…ない…」
俯向くアムロの髪を優しく梳いて落ち着かせてやる。
「一年戦争後…地球で連邦の広告塔として引き摺り回されて頃だって…私に連絡一つ寄越して来なかったんだ…。今回だって、母さん本人から連絡があった訳じゃない…」
「そうかもしれないが…」
「あの人にとって…私の存在は汚点でしかないんだ…戦争で多くの人を殺した私は…あの人の子供であってはいけないんだ…」
「アムロ…」
アムロにとって、母親との決別は、心にあまりにも深い傷を負わせてしまったのだろう。
しかし裏を返せば、それだけアムロが母親を愛し、求めているからこそだ。
シャアは肩を震わせて泣くアムロを、ただひたすら抱き締めた。

数日後、新たな手紙がアムロの元に届いた。
その手紙を読んだアムロが小さく震える。
「どうした?アムロ」
「シャア…どうしよう…母さんが…」
アムロから手紙を奪うようにして内容を確認する。
そこには、アムロの母、カマリア・レイの容態が悪化したと書いてあった。
「アムロ、地球に行こう」
「シャア!?」
「でも…そんな事…!貴方だってそんな簡単にスウィート・ウォーターを離れる訳にはいかないだろう?」
「その辺りはどうとでもなる。それよりもアムロ、今、お母上に会わなければ、きっと君は一生後悔する。生きて会えるのであれば、なんと言われようと会えば良いではないか」
「でも…」
「例え、また否定されたとしても…君の母上に変わりはない。一目、最期に顔を見るのはいけない事か?生きているのならば…会えるのであれば会えば良いではないか。君だって本当は会いたいのだろう?」
アムロの脳裏に、幼い頃に見た母の笑顔が蘇る。そして幼い頃、別れ際に頬にキスをしてくれた事を思い出す。
あの時は、直ぐにまた母の元に帰れると思っていた。宇宙には旅行に行く位の気持ちだったのだ。まさかその後十年も会えなくなるとは思っていなかった。
「……」
『会いたい…』
心では思うが、アムロは口に出す事が出来なかった。
シャアはそんなアムロの頬にキスをすると、もう一度強く抱きしめ部屋を出ていった。

実はアムロから話を聞き出した後、シャアは秘密裏にロバート・ミュラーと連絡を取り、母親の事を聞き出していた。
彼女は決してアムロの事を嫌ったり、否定していた訳ではなかったのだ。
作品名:Lovin’you afterCCA15 作家名:koyuho