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六年生の子守唄の段(立花・善法寺・食満ver)

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「立花先輩!善法寺先輩!!」


 きり丸が慌てて駆け寄る。
 幸い、子供達には全員怪我はないようだが、二人の安否が心配である。

「大丈夫ですか!!?」

 黒い煙が晴れてきて、きり丸は二人の姿を確認する。


「………」
「………」


 二人は炭のように真っ黒になり、ボーゼンと立っていた。


「伊作…」
「なんだい、仙蔵…」
「…ひとつ聞いていいか」
「……?」


 こんなことになるとは思っていなかった善法寺は、ゆっくりと立花の方を見た。その表情は。


「…どうしてあんなところに焚き火がある…?」


 …その時の立花の表情は、冷静で、火薬の扱いは学園一と言われる姿そのものだった。

「た、立花先輩落ち着いてくださ…」

 きり丸が、危機を察して声をかける。
 しかし…


「大丈夫だ。…予備はある。」


 立花はそう言って、懐から沢山の焙烙火矢を取り出した。


「うわわわわっ……!!せ、仙蔵!冷静に…!!」

「うるさい!!せっかく…、せっかくあのしめりけ二人の魔の手から逃れるためにここに来たと言うのに…!!」

「わあああああ!!先輩、僕は関係ないでしょう――!!??」


 焙烙火矢を両手に持ち、立花は怒りむき出しに善法寺ときり丸を追い掛け回した。


「「うわああああああああ!!」」


 涙目で逃げる善法寺ときり丸。


「「「「あははははははっ!!」」」」


 それを見て、子供達は大笑いした。






「――ん?」


 離れたところで、連続して何かが爆発する音を聞いて、食満留三郎は戻ってきた。今まで、二人の子供をつれて散歩に行っていたのだ。


「――…何だ、この有様は」


 帰ってきて見たのは、もくもくと黒い煙を吐く焚き火の跡のようなもの。
 明らかに何かを爆発させた後らしく、その周辺は物が飛び散っていたし、火薬の匂いと変なお香の匂いが漂っていた。

「ん?仙蔵と伊作がいないな。…まったく、子守を放ってどこに行ったんだ…?」

 消えた同級生二人に、呆れる。
 食満は、子供の一人を背負い、もう一人の子供と手をつないでいた。


「あ――っ!!いいなぁ、おんぶしてもらってる」


 と、そこに残されていた子供達が、食満の姿を見つけて集まってきた。


「ねぇ、僕もおんぶしてー」
「ん?」
「私も!」
「お?」
「ぼくもー」
「お、おお」


 一斉に我侭を言ってきた。

 …いつも、用具委員の良い子達の世話で、子供の子守なんてお手の物の食満。そんな彼の欠点は…


「…よし、来い!!」


 食満は、二カッと笑って、群がる子供達の相手をした。






「うぅ…。飛んだ目にあった…」


 すっかり走りつかれたきり丸が、何とか戻ってきた。


「立花先輩がキレるとああなるなんて…今度から気をつけよう…」


 巻き込まれて追いかけられたので、うんざりした様子のきり丸。
 すっかり疲労困憊して、ぐったりしていた。
 ちなみに、善法寺はまだ立花に追いかけられている。その証拠に、少し離れた場所から爆発音が聞こえてきていた。


「――お、おお、きり…丸。お前、どこ行って、たんだ…?」


 その声に、きり丸が顔を上げた。
 そこにいたのは、食満。


「食満先輩…!?何やってるんですか!」


 目の前の状態に、きり丸はまた驚いた。


「何って…子供達が請うもんだから…背負ってるんだが」

「背負ってるって…何も六人一気に背負うことはないじゃないですか!!」


 きり丸は悲鳴のような叫び声を上げる。
 …そこには、まるで群がる六匹のサルを、一本で支えてる木のような状態になっている食満が立っていた。


「……お前も、乗るか?」

「乗りませんよ!!」


 さすがに六人もの子供を支えて、プルプルと震える食満。


(…この人は、面倒見はいいんだけど…限度を知らないよな…)


 やっぱり、六年生は手のかかる学年だと、改めて実感したきり丸だった。






「ほら、鼻が出てる。かめ」


 食満は、子供を降ろし、一人ひとり甲斐甲斐しく世話をする。


「ほーら、でんでん太鼓だ」

「ああ待て待て。そんなに走り回ったら転ぶぞ」

「ああ、ほら、言わんこっちゃない。怪我はないか?」


 一人で六人の相手をしてしまう。


「……食満先輩、何だか慣れていますね」


 きり丸が、それを見守りながら言った。

「ん?ああ、そうだな…委員会の下級生に世話を焼かされてるからだろう。…お前のクラスの二人は特にな」

 桶を壊してしまって泣き出す子供を慰め、眠そうにしている子にでんでん太鼓を鳴らしながら、苦笑いをする。

「ほら、お前は洗濯物洗いに行ってこい。子供達は私が見ておくから…」

 ぽん、ときり丸の背を押し、促す食満。


「あ、そう言えば…仙蔵と伊作はどこに行った?」

「あの二人なら…あそこです」


 きり丸の指を指したほうを見て見ると、次々と爆発音が鳴り、煙が立っている。


「…あいつらはやっぱり子守には向かんな」

「はい。…食満先輩、六年生全員を諌めるのは大変スね…」

「まぁ…な…」


 二人は同時に、頭を抑えてため息をついた。