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TWILIGHT ――黄昏に還る3

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「か、必ず、勝ちましょう! そして……、わ、私は、あなたともっと、話がしたい」
 目を丸くした士郎は、やがて、ふっ、と柔らかな笑みを浮かべた。
「うん、そうだな、ここの衛宮士郎と、三人でまたご飯食べるんだもんな!」
「はい!」
 セイバーは凛を守りつつ、先に向かったランサーを追う。
 それを遮ろうとしたギルガメッシュの剣を、アーチャーの剣が弾いた。
「ちっ」
 ギルガメッシュの小さな舌打ちが聞こえる。
「まあ、よいわ。足掻くだけ足掻き、絶望するのもまた一興」
「絶望なんてするわけないだろ」
 士郎が当然とばかりに言えば、ギルガメッシュは鼻で嗤う。
「ほざくな雑種。虫ケラごときが偉そうな口をききおって……」
 静かに言葉を発するギルガメッシュの背後の中空に、ありとあらゆる武器がズラリと並ぶ。それは宝具の原典であり、彼はそのすべてを王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)という宝具に蓄えている。
「頼むぞ、アーチャー!」
 言うが早いか、士郎は走り出す。
「フン。逃げ足だけは早いな」
 アーチャーが嗤う。
「るっせえな! あんな反則技みたいな攻撃、まともに受けてたら命がいくつあっても足りないんだよ!」
「その反則技の相手をしろと、私に大口を叩いたのは、どこのどいつだ」
「お前はサーヴァントだろーが!」
「まったく、勝手なことばかりをほざいて、口の減らない奴だ」
「どっちがだ!」
 不満を口にしながらもアーチャーは、ギルガメッシュの武器が士郎に届くのを寸でのところで防いでいる。
「サンキュー!」
 全く感謝の意を感じられない口調で言われ、アーチャーは鼻を鳴らすだけ。
 士郎とアーチャーが言い争う間も、ギルガメッシュの武器は爆撃のように落ちてくる。
 アーチャーがそれを防ぎ、剣製で弾き、間髪入れず、キャスターがギルガメッシュに遠距離攻撃を仕掛ける。さすがのギルガメッシュも、思うように事が進まないことに苛立ってきたようだ。
「先に、小うるさい蛾を始末するか……」
 その言葉の意味など、深く考える必要はない。赤い瞳が捉えたのは、空を舞う紫のローブ。
 ギルガメッシュの照準がキャスターに移ったことに気づいたのは士郎だけだ。
 アーチャーは武器解析に意識が向いている。キャスター自身も、攻撃の隙を窺うことに集中しすぎているようだし、少し疲れの色も見える。
「キャスター!」
 士郎の声に顔を上げたキャスターが息を呑んだ。彼女の目前に剣が迫っている。士郎の投げた剣がぶつかって、剣の軌道は逸れたが、立て続けに飛んでくる武器に、キャスターは地に下りるより他ない。そこにまた剣が撃ち込まれる。
 飛び退こうとしたキャスターのローブが剣で地に縫い付けられ、そのままつんのめったキャスターは地面に倒れ込んだ。そこに、剣の雨。
「っ!」
 キン、キンッ、キンッ!
 ぎゅ、と唇を引き結んだキャスターを貫く前に、士郎が剣を弾く。甲高い音が響き、士郎の剣も微かな音を立てて砕けた。宝具には並大抵の投影では勝てないものだ、と思い知る。が、やがて剣の雨がやみ、どうにかキャスターへの攻撃を凌ぐことはできた。
「無事か?」
 士郎が訊けば、地に伏せた身体を起こしたキャスターは頷く。
「ランサーの方にも、魔力、取られてんだよな。無理するな」
「い、いいえ、あなたに心配されることでは、なくってよ」
 気丈に言って立ち上がるキャスターは薄く笑う。
「はは、頼もしい」
 士郎も笑って返した。だが、その笑みは疲れを伴っている。
「私もだけれど、あなたも、ずいぶん無茶をしているのではなくて?」
「そりゃあ、無茶もするさ。俺の事情に英霊たちが二つ返事で応えてくれてるんだ。言い出しっぺの俺が踏ん張らないでどうするって話だろ?」
「ええ、そうね」
 キャスターが頷いた時だった。堂内の池の方から、巨大化した手がこちらへと伸びてくるのが見えた。
 ――マスター! そちらに、聖杯が!
 すぐさま、セイバーの思念が飛んでくる。
「ああ、来てるよ。手を伸ばして……、ギルガメッシュを取り込もうとしてる」
 ――ギルガメッシュを?
「結局、脱落したサーヴァントはバーサーカーとアサシンだけだ。力が欲しいんだろうな。ここで一番の強力な奴を手に入れようとしてるんだ」
 ――では、英雄王は……。
「いや。あいつは大丈夫だ。絶対に跳ね除ける」
 ――マスター?
「セイバーたちも気をつけてくれ。ギルガメッシュが取り込めないとなると、手当たり次第に手を出してくるかもしれない。遠坂にはちゃんと下がって援護に徹しろって言い聞かせておいてくれよな」
 ――わ、わかりました、やってみます。
 自信がなさそうな声に、士郎は苦笑いを滲ませる。
 きっと、彼女は、前へ前へと出ていこうとしているのだろうと、容易に想像がつくからだ。
「あの性格、昔っから変わらないな……」
 思わず独り言ちる。
「キャスター、少し離れよう。ギルガメッシュが宝具を出してくる」
 本堂の屋根にいるギルガメッシュは、巨大な手を伸ばしてきた聖杯に目を向けている。こちらを警戒はしているものの、今、意識のほとんどは聖杯に向かっている。
 こちらは小休止を取って、体勢を立て直す暇ができた。
「アーチャー」
 手招きすれば、アーチャーは迷いつつもこちらへと歩み寄ってくる。
「なんだ。貴様の指図は――」
「ギルガメッシュがとっておきの宝具を出す。あれ、お前に解析できるか?」
 声を潜めて訊けば、アーチャーはじっとギルガメッシュの動向を見据える。
 中空から取り出されたのは、ギルガメッシュの所蔵する宝具の一つ、乖離剣・エアだ。
「無理だな」
 静かな答えが聞こえ、
「だよな」
 士郎は、予想はしていた、と頷く。
 剣のようでもあるが、刀身というものは存在せず、グルグルと互い違いに回転するそれは、アーチャーの目をもってしても、解き明かせるものではないようだ。
「あれをこっちに撃たれる前に仕留めないとな」
「同感だ」
 聖杯へと向かって放たれたエアは、巨大な手を押し戻していく。
 その爆風に士郎は身構えていたが、それほどの衝撃はなく、見ると、アーチャーが突き出した右腕の先に盾が作られている。
 士郎とキャスターを守るように展開された盾は、爆風が収まるとともに消えた。

「アーチャー、てこずってるよな?」
 再びギルガメッシュに対峙すべく歩き出した背中に、士郎は淡々と告げた。
「仕方がないだろう。あちらは本物、こちらは紛い物だ。根本からして違うのだ。しかもありとあらゆる英雄たちの宝具の原型だという。そんなもの、解析だけで手間がかかる」
「それでも――」
「遊んでいるわけではない。勝機を探しつつやっている」
 士郎の言葉を聞くことなく、苛立たしげに言ったアーチャーは、再びギルガメッシュと向き合う。
「待たせたな、贋作者(フェイカー)」
「待ってなどいない」
 アーチャーは淡々と答えているが、その表情には疲れの色が見える。
 ただ剣をぶつけるだけなのだが、こちらに撃ち込まれるのは、本物の宝具という代物だ。硬度も強度もいっそう強い。そして、その上に際限がないのが面倒だ。