スライムの衝撃1~友の声~
かつての仲間たちが自らの橙色の体に動揺し硬直した気配を、二匹は巨体の体内で感じていた。事態を呑み込めずにいるキングスライムベスの口をかりて、ダニエルが話し出す。
「僕は、君たち姉妹みたいに善良ではいられない。こいつらが心底憎いんだ」
サマンサが信じられないものを見たかのように目を見張る。
「なんでだよ! ベスはスライムとは合体できないはずじゃないか!」
「あなたたち、本当にスライムだったんですね。信じた私がバカでした」
かつての仲間たちが分散しようと、内側から圧力をかける。バラバラに崩れないようダニエルとレベッカは懸命に踏ん張り続ける。
「僕たちは仲間だろ?」
エラ姉の憤怒に満ち溢れた目つきに、ダニエルの問いかけは虚しく中空を漂い、あっという間に霧散した。仲間という思考が、はじめから存在していなかったかのような冷淡な空気に、ダニエルとレベッカの心は急速に冷やされていった。
「洗脳されてたわけじゃ、なかったんですね。本気で私たちを蔑んでいたなんて。あなたたちの心は醜い」
エラ姉の鋭利な言葉が、ダニエルとレベッカを容赦なく突き刺した。
途端に、堪えきれなくなった、はちきれんばかりの肉体が崩れた。無理やりに分散したため、スライムたちは四方に弾き飛ばされた。地面に叩きつけられた痛みよりも怒りのほうが勝っているようで、すぐに起き上がって口々にダニエルとレベッカを責め立てた。
「ふざっけるな!」
「よくも汚れた色にしやがったな!」
「どういうつもりだよ!」
「そんなにボクたちが憎いのか!」
「おまえらだけは、ボクたちが息の根を止めてやる!」
スライムが再び段を作りはじめ、まずいと思ったダニエルとレベッカも即座に加わろうとした。しかし、姉妹たちから受けた精神的な打撃から肉体の反射が遅れてしまった。パパズとママズに出し抜かれ、必死に駆け寄った二匹は突き飛ばされた。
瞬時に変化したキングスライムが、姉妹に突進していく。
「まずは薄汚い橙色からだ!!」
作品名:スライムの衝撃1~友の声~ 作家名:清水一二