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スライムの衝撃1~友の声~

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大人しく出ていく必要はまったくなかった。しかし、このまま隠れていても先は見えていた。存在が知られている以上、姉妹に接近されたら容易く見つかってしまうだろう。そうなれば、戦闘になるかもしれなかった。

束の間、ダニエルはどうしようかと思考を巡らせたが、すぐにあきらめた。足掻きようがないからだ。

レベッカが不安そうに唇を歪ませた。彼女を励まそうと、ダニエルは体を密着させた。ぷるんっとした、やわらかな感触が伝わって、ダニエルの胸に熱い想いがたぎった。

「大丈夫、僕が守るから」
「一緒に戦うわ」
「危なくなったら僕の後ろに下がるんだよ」
「わかった」

ダニエルとレベッカは覚悟を決めると、茂みから飛び出した。エラ姉と一定の距離をおき、ひたと敵を見据える。

「あら、ベスだったんですね」

安堵の息を漏らして、エラ姉は警戒を解いた。

「どうして隠れてたんだ?」

サマンサの問いかけに、ダニエルはどう答えるべきか迷った。姉妹が自分たちをベスだと思い込んでいるのなら、あえて戦うことはない。話を合わせておいたほうが賢明だ。そう結論づけた矢先に、レベッカが口を開いた。

「もう邪魔しないでよね。わたしたち、いいところだったのに」

そう拗ねてみせると、サマンサが不思議そうに首を傾げた。

「いいところってなんだ?」
「あっ、ほら、いろいろと事情があるんですよ。あまり詮索しないの、失礼でしょう」
「そうなのか? じゃあいいや」

エラ姉が、ダニエルとレベッカにぎこちなく微笑む。

「私たちと行動しません?」
「誰が薄汚いベスなんかと。僕たちはスライムだ!」

しまった、とダニエルは思った。つい本音が出てしまっていた。仲間だと思われることが、どうしても我慢ならなかったのだ。

姉妹は一瞬目を丸くしたが、すぐに楽しそうに笑いだした。

「なに言ってんだ、その色で」
「わたしたちは恋をして橙色に染まったの!」
「僕たちの色は、薄汚いおまえたちとは違うんだ!」

ふたりの魂の訴えに、茂みが不穏に揺れた。

姉妹は深刻そうに顔を見合わせた。

「かわいそうに。よほど怖い目にあったんですね。それでおかしくなったのかもしれない」
「そうだ、スライムに何かされたんだ」

サマンサは恐怖のあまり、小さな体を震わせた。

「橙色は下等の証じゃないんですよ。私たちはこの色がすきなんです。スライムからはどう見えるのか、わからないけれど……。あなたたちは美しい色をもつベスなんです。スライムは私たちを下等扱いするけれど、私たちは彼らの空色も美しいと思います」
「違う! 僕たちはスライムなんだ!!」
「ダニエルは嘘なんてつかないんだから!」
「そっか、わかったぞ! あいつらに、自分たちはスライムなんだって洗脳されたんだな。大変だエラ姉、ベス同士で仲間割れさせる気だよ!」
「どうして、こんなにひどいことをするんでしょう」

エラ姉は悲しそうに目を伏せて、無理やりといった様子で言葉を絞り出した。

「もう陽が暮れるわ、今夜は一緒にいましょう。仲間が増えると心強いですから」

森の夜は早い。うっすらと空に赤みが差し、薄い雲がゆっくりと流れていく。辺りは刻々と夜の気配を漂わせつつあった。

ダニエルは歯噛みしたが、怒りを吞み込んだ。エラ姉が正しいと判断したからだ。姉妹といれば、少なくともベスに襲われる心配はないだろう。しかし出くわした相手がスライムなら、ダニエルとレベッカは敵だとみなされてしまう。そうなれば、数が多いにこしたことはなかった。

「仕方がない。今夜だけ特別だ。ほんとはイヤなんだからな」
「助かります」
「やったー!!」