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オクトスクイド

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寝ようと思い消灯し布団に入った。しかし、何かそわそわしてしまい寝れずに布団から出てしまう。明日は早いのに、と自分自身に苛立った。はぁ、とため息をつきもう一度布団に入ろうとしたその時だった。ふと窓の外がカンナの目に入り、窓を見ると遠くのグラウンドで人型が一人、夜遅くにもかかわらず走っていた。
カンナは目を疑った。その赤に見覚えがあったからだ。

「・・・・アオイ先輩?」




「アオイ先輩!!何やってるんですか!」
アオイは聞いていなかった。いや、自分の鍛錬に必死だったのだ。

「只でさえ昼に厳しい訓練をしているのに!」
アオイはカンナの方を一瞬見たが、話しかけないでよという風に見て見ぬふりをした。
「もうボロボロじゃないですか!そこまでやったら体壊しますよ!」
アオイの顔には明らかに疲れの色が出ており顔色も悪かった。呼吸も荒く、足も痙攣していて、もはや気力だけで動かして言っているといっても過言ではない。
アオイは自分を止めようとしたカンナの手を振り払った。
「どうして・・・。」
立ち止まり、カンナの肩を恐ろしいほどの力で掴む。
「私の事、弱いからって見捨てたくせに、どうして、また助けようとするの?この前みたいにまた私を見放そうと面白がってるの!?そんなに弱い私をおちょくるのが楽しいの?」
「アオイ先輩・・・・・・・。」
呼吸が荒く、喋ることさえもきつそうなに訴えるアオイを見てカンナは思わず言葉を飲み込んでしまった。いや、見ていられなかったのだ。
「私はこうまでしないと皆に追いつけないの・・!!だから、苦しくてもこうするしかないの!!元々強いあなたにはわからない!私の気持ちなんて・・・。」

だからお願い、もう放っておいて!とアオイが口を開こうとしたが、カンナがそれを遮った。
「いい加減にしろ!!!!」
と言われアオイの動作が止まる。
「誰があんたに対して弱いなんて言ったんだよ。あたしは、弱いなんて一言も言ってない!むしろ、あんな大勢に先輩に囲まれてるのにきちんと反抗できたし、強くなりたいって気持をちゃんと持っててるじゃないか!」
カンナはアオイを一喝した。怒りとも悲しみともいえない顔をしていた。
「だからもう、そんなに自分を追い詰めないでくれよ・・・。あたしはそんなあんたを見てられないんだ・・・。」
声をかすらせながらカンナはうつむいた。その拍子に、彼女の目がゴーグルの中から少しだけ見えた。

アオイは思い出した。カンナが助けてくれた直後に言った言葉を。
アオイは思い出した。あの時に自分を見つめるまっすぐな瞳を。

ああ、そっか。勘違いしていたのは私だったんだ。彼女は私をその瞳でしっかりと見据えていてくれたのに、それに気づかないで私は・・・・あなたに当たってしまった。

「・・・・私ったらひどいことをしてしまったね、ごめんね。」
その瞬間アオイは崩れ落ちた。




「うっ・・・・」
目を覚ますと白い天井が見えた。見覚えのないものだった。手に違和感を感じ自分の手を見ると、点滴が刺されていた。カンナに運ばれてからの記憶がない。私は気を失っていたのか・・・。

「目が覚めたか、アオイ。」
体を起こすとヤナギ隊長が腕組をして壁によりかかっていた。いつもなら陽気な隊長だが、今回は真剣な顔をしていた。
「・・・・相当無理をしていたらしいな。」
アオイは今まで必死になっていた自分を思い返し・・・・・・・はい。と静かに瞬きしながら答えた。
「・・・・・カンナから聞いたぞ。お前たちの事。」
「そうですか・・・・・。」
と気落ちたように答えるアオイにヤナギはこう言う。
「まぁお前たちの事はお前たちで解決しなければいけないんじゃないか?私は口出しする資格もないしな。」
ただ・・・と言ってヤナギはアオイの畳まれた服を見た。
「お前を運んできたのもカンナだし、その病衣に着替えさせたのも、夜にずっと看病していたのはあいつだ。」
「・・・どうして。」
彼女は私に酷いことをされたのにここまでしてくれるのだろう。カンナの優しさに涙が出そうになる。アオイはやるせない気持ちになり、自分自身の腕をぎゅっと握った。
「アオイ。」
ヤナギはそう言って、アオイの腕を握った。
「お前は自分自身が弱いと思っているけど、私は違うと思う。お前はすごく熱心だし、物分かりもいい。私が見てきた中でアオイが一番努力してるよ・・・・だからもっと胸を張っていいんだぞ?」
「・・・・・隊長。」
アオイの瞳から一粒の涙が零れた。
やっと自分を認めてくれる人がいた。いや・・・・自分が気付かなかっただけかもしれない。なんて愚かだったんだろう。
ヤナギがそう言ってくれただけでアオイの心は満たされた。満たされた感情がいっぱいになり、器からこぼれんとしていた。
ヤナギはアオイを受け止めた。アオイはヤナギの胸で思いきり泣いた。
いつもなら声を我慢して一人で泣いていたけど、今はヤナギがそばにいてくれている。
それだけで十分だった。
泣きわめくアオイを見てヤナギは考えていた。
(すまない、アオイ・・・・。)
いつもしっかり者のアオイがここまで追い詰められていたなんて、どうして自分も気が付いてやれなかったのだろう。ヤナギは自分が隊長として、人を率いる者として、まだまだだと己の未熟さを痛感したのだった。




「・・・・うん。だいぶ顔色もよくなっていますわね、明日には訓練を再開してもいいですけど軽めにしておくようにね。」
「はい。わかりました。2日間本当にお世話になりました。」
アオイは救護室から出られることになった。2日の間、検査や点滴の補充など世話をしてくれた救護の先輩に感謝の気持ちを述べた。
「あんまり無理をなさらないでね?強くなりたいって気持ちは素晴らしいものですけど、体まで壊したら本末転倒ですわ。」
「はい・・・その結果、皆に迷惑をかけてしまったので、反省しています。」

早く強くなりたい。今の自分から抜け出したい。その気持ちがヒートアップしてカンナにもヤナギにも迷惑をかけてしまった。

「・・・・ええ。その気持ちがあるならこれからも大丈夫そうですわね、さぁ、わたくしもやるべきことはやったし訓練を再開しようかしら。」
「えっ・・・?」
とアオイは目を丸くした。
救護専門の人型は隊ごとに所属が決まっており、アオイたちの様に訓練はしない。主に前線で活躍する隊員の救護や看護をすると決まっているのだ。なので“訓練を再開する”と言った彼女は必然的に隊員という事になる。

「先輩、救護の方じゃないのですか?」
ああ、といい先輩が説明してくれた。実は第3部隊の救護専門の人型が軍のトップの部隊である精鋭部隊(アオイはまだ第3なので精鋭部隊を見たことすらない。遠い存在である。)に呼ばれているので、代わりに救護の知識がある自分がこの仕事を請け負っていたらしい。
「救護もできるなんて、凄いですね・・。ごめんなさい。それなのに2日間も面倒見てもらって・・・・。」
「全然構いませんのよ?今回はお互い様ですしね。」
「お互い様?」
「あ、いえ何でもないですわ・・・さ、そろそろ第3の訓練が終わる時間ですわね。」
アオイは時計の針をみてあっ。と言った。
作品名:オクトスクイド 作家名:Red lily