二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

Never end.

INDEX|2ページ/6ページ|

次のページ前のページ
 

「私、この人好き!!この人優しいよ!」
「え?」
無邪気にはしゃぐプルに驚きながらも、アムロの顔にも笑みが浮かぶ。
「ふふ、ありがとう」
「さぁ!プル!行くわよ」
大人しくなったところを、ハンナに捕まって、プルが医務室に引きずられて行く。
「嫌!」
そんなプルの頭を、アムロが優しく撫ぜる。
「君の為の検査だろう?嫌な気持ちはわかるけど、ここの人は君の嫌な事はしないよ」
「本当?」
「ああ」
プルはアムロの瞳をじっと覗き込み、そこに嘘が無い事を確認すると、コクリと頷く。
「分かった!」
「いい子だね」
「うん!プル、良い子!」
優しく微笑むアムロに、プルも笑顔で答える。
「貴方、とっても綺麗な瞳をしてるのね!」
その言葉に、アムロはドキリとする。
“貴方、とても綺麗な瞳をしてるのね”
昔、彼女に言われた言葉…。
「ふふ!また後で遊んでね!」
そう言うと、プルはハンナと共に艦橋を去って行った。
その後ろ姿に、アムロはある少女を思い出す。
“アムロとは、いつでも遊べるから…”
『…ララァ…』


アムロの気がプルへと向けられて、ジュドーとアムロ、二人の共感が断ち切られる。
ジュドーは大きく肩で息をして、今まで自分が呼吸すら忘れていた事に気付く。
『なんだ?何があった?カミーユに始めて会った時と似てるけど…もっと強烈な…感覚』
それが、ニュータイプ同士の共感だったのだと、ジュドーが気付いたのは少し後の事だった。


◇◇◇


「ここがカツの部屋だ」
建て付けの悪くなったドアを手で強引に開けて、ブライトがハヤトとアムロを部屋に入れる。
部屋の中は既に片付けられていたが、デスクの上に、フォトスタンドだけが残されていた。
それを手に取り、ハヤトが辛そうな表情を浮かべる。
それは家族写真だった。ハヤトにフラウ、レツやキッカ、そしてカツが笑っている。
「それだけはそのままにしておいた…」
ブライトの言葉に、ハヤトが泣きそうな顔で笑う。
「そうか…」
そんなハヤトを見ながら、アムロはシャイアンを脱走した時を思い出す。
正義感が強く、ハヤトのように戦う事を選んだ子供。
あの時、戦おうとしない自分に失望し、怒りを露わにした。
カツの中では、自分は一年戦争の英雄のままだったのだろう。
あの戦争の後、俺がどんな日々を送っていたのか知らなかったのだから、仕方がないが、当時の俺は数年に渡る実験体としての日々と、七年にも及ぶ軟禁生活に疲れ果て、戦う気力など残っていなかった。
それでも脱走したのは…多分、あの人の気配を感じたからだ…。
金と赤の入り混じったオーラを持つ男。
はっきりと彼を認識できていた訳じゃない、けれど、本能が俺を動かした。
アムロは小さく溜め息を吐くと、その場を後にした。

カツの部屋から出て、通路を歩いていると、黒髪の少女とすれ違う。
その瞬間、少女からカミーユの気配が伝わってきた。
アムロは振り返り、少女を呼び止める。
少女、ファ・ユイリィにカミーユの事を尋ねると、医務室へと案内してくれた。
医務室に入り、カミーユ気配を色濃く感じるカーテンへと視線を向ける。
そして、そのカーテンをそっと開け、中を覗き込む。
そこには目を開けたまま、ベッドに横になるカミーユが居た。
「…カミーユ…」
ゆっくりベッドへと足を進め、カミーユの顔を覗き込む。
そして、カミーユから僅かだが心を感じる。
『ああ…あの時…なんとか引き戻した心の一部は、ちゃんとカミーユの中にある…でも…』
アムロは悲痛な表情を浮かべて、カミーユの頬にそっと触れる。
指先から伝わる温かさに少しホッとするが、何の反応も返さないカミーユに、アムロの瞳から一雫の涙が零れ落ちる。
「アムロさん…?」
驚くファに、アムロは「ゴメン」と小さく謝る。
「アムロさん…」
「はは…大の大人が…情けないな…」
涙をぬぐながら、ファに微笑む。
「いえ…そんな…」
「ちょっと…カミーユと二人にしてもらっても良いかな…?」
「え?あ、はい。それじゃ…すみませんけど、食事の間、カミーユを見ていて貰ってもいいでしょうか?」
「ああ、勿論。ゆっくりしてきていいよ」
優しく微笑むアムロに、ファは“この人ならば、カミーユを任せても大丈夫”だと思う。
「それじゃ、すみません。お願いします」
「ああ、こちらこそありがとう」

カミーユと二人きりになり、アムロはカミーユの両手を握りしめ、目を閉じてカミーユの心を探す。
『カミーユ…君の心の欠片を少しずつでも育てる事は出来るだろうか…。シロッコに奪われてしまった心は戻らないけれど…また育てる事は出来るはずだ…』
「カミーユ…カミーユ…」
僅かに残るカミーユの心へと、アムロは優しく呼びかける。
アムロは自身とカミーユの心をシンクロさせて、カミーユの心の中へと入っていく。
しかしそこは真っ白で、何も無い空間だった。
けれど、遥か向こうに光を感じる。
「ああ、カミーユ。君はそこに居るんだね…」
アムロはゆっくりと光の方へ歩みを進めるが、中々前に進む事が出来ない。
「これは…時間が掛かりそうだな…」
そう言うと、意識を現実へと引き戻した。
現実に戻った瞬間、アムロの身体がグラリと揺れ、ベッドに突っ伏してしまう。
「っ…、流石に…結構キツい…な…」
ニュータイプとは言え、一方的に他人の意識に入る行為は、精神的にも身体的にもかなり負担が掛かる。
分かっていた事とは言え、想像以上の負荷に、アムロ本人も少し焦る。
早鐘を打つ心臓を、どうにか落ち着かせながら、大きく深呼吸をする。
「カミーユ…少し時間が掛かるかもしれないけど…絶対に君を取り戻してみせるから…」
カミーユの手を取り、その顔を見つめる。
しかし、その目は何も写す事なく、ただ天井を見上げるだけだった。
「ゴメンな…こんな事くらいしか出来なくて…。あの時俺が…もっとちゃんとしてたら…君がこんな風になる事も…あの人が姿を消す事も無かったかもしれない…」
そんなアムロの背後で、カタリと物音がする。
振り返ると、そこにはさっき艦橋で見た少年、ジュドー・アーシタがいた。
「えっと…君はさっき艦橋に居た…」
「ジュドー・アーシタです」
「ジュドー君?」
「“君”は要らない」
ぶっきら棒な物言いに、子供らしさを感じてクスリと笑う。
「何?」
「あ、いや、ごめん。ジュドー、どうしたんだい?」
「別に…カミーユに会いに来たら…アムロ…さんが居たから…」
ジュドーはカミーユに会おうと医務室に来たが、アムロがいた為、そのまま去ろうとした。しかし、アムロの意識がカミーユの中に入って行くのを感じて足を止めた。
二人の様子に、思わず目が離せなくたってしまったのだ。
「ねぇ、何でカミーユの中に入っていったの?」
ジュドーの言葉にアムロが目を見開く。
「君には分かったのかい?」
「…何となく…」
「そうか…」
アムロは第一印象からジュドーには何か感じるものがあったが、それを聞き確信する。
『この子もニュータイプだ』
「それで?何で?」
「あ、ああ。カミーユの心に呼びかけて…僅かに残る心に触れて…カミーユの心を育てようと思ったんだ」
「育てる?」
作品名:Never end. 作家名:koyuho