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Never end.

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「ああ。カミーユの失ってしまった心は戻らないけど…僅かに残った心を育てる事は出来る」
「そうしたらカミーユは元に戻るのか?話せるようになるの?」
「そうだね。元どおりとまでは行かなくても、普通に生きていけるくらいにはなれると思う」
「そうなんだ!」
喜ぶ反面、ジュドーが不安げな表情でアムロを見つめる。
「でも…アムロさん、凄くしんどそうだったけど…大丈夫?」
「ははは、簡単な事ではないからね。でも、それでカミーユが回復するなら…頑張らなきゃ」
「それ、俺にも出来る?」
「そうだね…君なら出来るかもしれない。でも、負担も掛かるからね。まずは、毎日カミーユに話しかけてくれないかな?それだけでも、充分刺激になるはずだから」
「そうか…分かった!」
「よろしく頼むよ」
微笑むアムロに、ジュドーもつられて微笑む。
「なんだかアムロさんって、はじめ見た時は取っ付きにくそうな人だなぁって思ったけど。案外喋り易いね」
「そうかい?」
「うん、初めはなんか陰気な雰囲気だったし、ニュータイプって言っても、他の大人と変わらないんだって思った」
「大人は嫌いかい?」
「そうだね。俺の知ってる大人はみんな嘘ばっかりで…自分の事しか考えてない」
「……」
アムロはジュドーの言葉に、過去の自分の思いが重なる。
昔…一年戦争の時、身勝手な大人に振り回されて、自分も大人達を恨みながら戦っていた。
「戦争でカミーユがこんな風になったって聞いて…カミーユを戦わせた大人の所為だって思った」
「…そうだね…その通りだ」
唇を噛み締めて答えるアムロを、ジュドーは、ジッと見つめる。
「…でも…アムロさんは、他の大人とはちょっと違う気がする」
「…どうかな…俺も…そう変わらないよ。大人が…俺がもっとちゃんとしてたら…カミーユはきっとこんな事にはならなかった…」
辛そうに顔を歪めて話すアムロの肩に、ジュドーがそっと触れる。
「…よく分かんないけど…アムロさんは、カミーユを治そうとしてくれてるんでしょ?なら良いよ」
「ジュドー…」
ジュドーの言葉に、少しだけ救われる。
「ね?」
「…ありがとう」
すると、そこにファとブライトが現れた。
「アムロ、ここに居たのか」
「ブライト」
「今後の事を相談したい、ちょっと良いか?」
「ああ」
「アムロさん、ありがとうございます」
お礼を言うファに、アムロが「こちらこそ」と微笑むと、ブライトと共に医務室を後にした。
残されたファとジュドーは、そのアムロの後ろ姿を見送り、互いに視線を合わせる。
「アムロさんて…なんだか不思議な人ね」
ファの言葉にジュドーが頷く。
「そうだね…。他の大人とは…ちょっと違う…」
そして、どこか辛そうなアムロにジュドーは顔を顰めた。

◇◇◇

ミーティングルームに入ると、ハヤトが待っていた。
「ハヤト、すまない。待たせてしまったか?」
「いや」
アムロがブライトとハヤトの向かい合わせの席に座る。
「それで、今後の事って?」
「ああ、実はな。お前も気付いただろうが、前回の戦闘で主だったパイロットが…皆、戦死してしまった…」
ブライトが拳をギュッと握りしめながら、絞り出すように話し始める。
「……クワトロ大尉は…行方不明だと聞いたが…」
「ああ、大破した百式は回収できたが…大尉は乗っていなかった」
「…それで行方不明か…」
「アムロ、お前は…大尉が生きていると思うか?」
ブライトの問いに、アムロはブライトを一瞬見つめ、不意に目を逸らす。
「アムロ?」
「…あの人は…おそらく生きてる」
アムロの言葉に、ブライトは息をのむ。
「それは…ニュータイプの勘か?」
「…どうだろう…でも、あの人は死んでない。それだけは分かる…」
ブライトを真っ直ぐに見つめ、アムロは、はっきりと告げる。
「今…どこに…?」
「それは…分からない…でも…あの人は…連邦にアースノイドに…見切りをつけてしまった…。だからきっと…」
「ジオンか…」
「多分…」
アムロがコクリと頷く。
「今の…ハマーン・カーンが率いる、ザビ家の派閥では無いだろうけど…きっとあの人が声を上げれば、それに賛同する者は大勢いると思う…」
「そうだろうな…」
ブライトはダカールでの演説を思い出し、目を閉じる。
彼にはそれだけの実力と、魅力、カリスマ性がある。そして、ジオンの血筋も…。
「…いつか…いつかあの人は…地球…いや、宇宙をも揺るがす様な…何かをするかもしれない…」
アムロの言葉に、ブライトはゴクリと息をのむ。
「俺は…それを止めたい…」
「アムロ?」
「ハヤト、頼みがあるんだが…」
「なんだ?」
ブライトとハヤトがアムロを見つめる。
「俺は…宇宙に上がろうと思う…そして、あの人を探す。だから、カラバを抜けたい」
アムロの真剣な瞳に、ハヤトは真っ直ぐに向き合う。
そして、その覚悟を決めた瞳に小さく溜め息を吐く。
「もう決めたんだろ?」
「…ああ…」
そんなアムロに、ブライトが尋ねる。
「もう、宇宙は怖くないのか?」
「…いや…怖いよ…。でも…俺は宇宙に上がらなきゃいけない。もう逃げていてはいけないんだ」
「アムロ…」
「それから…カミーユに付いていてやりたい。上手くいくか分からないが…彼の心にシンクロして、少しでも心が回復できるように手助けしたい」
「それは、アーガマに乗りたいという事か?」
ハヤトの問いに、アムロが頷く。
ハヤトはブライトと顔を見合わせると、小さく溜め息を吐いてコクリと頷く。
「お前がそう言うと思ってな、ブライトに相談していたんだ」
「ハヤト?」
「ティターンズが崩壊して、地上で出来ることは残党の処理だけだ。それにお前のお陰でモビルスーツ隊は随分育ってきたからな。こっちは問題ない」
「ハヤト!」
「アムロ、俺としてもお前がアーガマに乗ってくれれば心強い」
ブライトもアムロの想いに賛同してくれる。
「それでだな、さっきの話の続きだが、お前には、アーガマで例の少年たちをパイロットとして鍛えて貰いたい」
「あの子達を?」
「ああ、今、アーガマのパイロットはあの子達だけだ」
「あの子達って民間人だろう?」
「ああ、昔のお前らと同じだな」
「ブライト!」
「正規のパイロットは、カミーユを除いて全て戦死してしまった。正真証明、今はあの子達だけなんだ」
「なんて事だ…本当にホワイトベースみたいじゃないか…」
「そう言うことだ」
「どうだ?やってくれるか?クワトロ大尉の捜索も、コロニーに入港した際に俺たちも並行してやっていこうと思う。あの子達がパイロットとして一人前になり、ネオ・ジオンとの決着がつけば、いつでも抜けてもらって構わない」
「ブライト…」
本当は直ぐにでも、シャアの捜索を始めたいとも思う。
しかし、カミーユに付いていてやりたいと言う想いと、あの子達を昔の自分たちの様に、大人の都合で戦争に巻き込み、戦場に放り出すような事はしたく無かった。
アムロは覚悟を決めると、二人に向き直り、姿勢を正す。
「分かった。引き受けるよ」
「アムロ!」
「よし、そうと決まれば色々と準備しないとな」
ハヤトは立ち上がると、一旦アウドムラに戻っって行った。
作品名:Never end. 作家名:koyuho