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Never end.2

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容姿も少し似ているが、何より醸し出す雰囲気が似ているのだ。
「そう言われるとそうかも…」
エルもジュドーと同じ事を感じる。
「でも、アムロ大尉って兄妹はいないって聞いたけど」
「そうよね。やっぱり他人の空似かしら?」
そう言いながらも、エルは二人をジッと見つめる。
すると、アムロの瞼がピクリと動き、ゆっくりとその瞳が開かれる。
そして、横で眠るプルに気付くと、優しい笑顔を向けてそっと囁いた。
「…ララァ…」
「ララァ?」
突然聞こえた声に、アムロが驚いて目を見開く。
「え?あ、エル?それにルーとジュドー?」
はっきりと目が覚めたアムロが、自分を覗き込む三人を見上げる。
「ねぇ、アムロ大尉、ララァって誰?」
ジュドーの問いに、アムロが動揺する。
「え?俺…寝ぼけて…」
「でも、プルを見てはっきりその名前を呼んだよ?」
答えを迫るジュドーに、アムロが小さく息を吐く。
「アムロ大尉?」
はぐらかす事は出来ないと判断したアムロは、ゆっくりと、ララァの事を話し始める。
「…ララァは…ニュータイプの少女で…ジオンのパイロットだったんだ…」
「ジオンの?」
「ああ、俺の…敵だった」
「でも、それにしては凄く親しげだったけど…」
「それは…初めて彼女に会った時は…ジオンのパイロットだとは思わなかったんだ…。だから…」
アムロの哀しげな表情に、ジュドーはこれ以上聞くべきか迷う。
しかし、アムロはプルの事を何か知っている気がして、聞かずにはいられなかった。
「それじゃアムロ大尉は、その人と戦ったの?」
「ああ、彼女は…ジオンのフラナガン機関…ニュータイプ研究所で訓練を受けたパイロットで…赤い彗星と共に…俺の前に立ち塞がったよ」
「赤い彗星…」
昨日、アムロから聞いたばかりのその名を、エルが呟く。
「彼女と戦場で対峙した時は…本当に驚いた。彼女は、戦争をする人ではなかったから…」
「でも、…戦ったの?」
「ああ、彼女は…自分を救ってくれた人の為に戦うと…俺を殺さければその人が死ぬからって…俺を攻撃してきた…そして…」
アムロはその先を話そうとするが、どうしても口に出す事が出来なかった。
その様子に、三人はその後の結末を察する。
おそらく、その少女はもうこの世にはいないのだろうと感じた。
「でも、どうしてプルを見てその人の名前を?」
ジュドーの疑問に、アムロは悲しい表情を浮かべる。
「プルは…ジオンの強化人間だ。強化人間のベースはなんだと思う」
「ベース?」
「強化人間のベースは、ニュータイプから採取したデータなんだよ。それに、彼女が試験管ベビーだとしたら…おそらく過去にそこにいたニュータイプの…ララァの遺伝子データがプルに組み込まれていても不思議じゃない…。プルからは少し…ララァの気配がするから…」
「そんな…」
「確証があるわけじゃ無い。ただの俺の勘だから…本当かどうかは分からない」
そう言うと、アムロはそっと、眠るプルの髪を撫ぜる。
「ただ…この子には…彼女の様な運命を辿って欲しくない…」
「アムロ大尉…」
それだけ告げると、アムロは自分に掛けられていたブランケットをプルに掛け、フリールームを後にした。
三人は、悲しげなアムロの背中を見つめ、黙り込む。
しばらくの沈黙の後、ルーがある事に気付いて声を上げる。
「確か…戦後、フラナガン機関は連邦に接収された筈よ。そして、地球のオーガスタ研究所と共同でニュータイプの研究を続けていたって…」
「連邦と共同で?」
「ええ、それに…当時、連邦で唯一のニュータイプだったアムロ大尉が、その研究所で被験体になっていた可能性は充分あるわ…もしかしたら…そのララァって女性と同じ様に、アムロ大尉の遺伝子もプルに組み込まれている可能性だってあるんじゃないかしら…」
それならば、プルとアムロが何処と無く似ていても不思議ではない。
ルーの言葉に、エルとジュドーがゴクリと息を飲む。
プルは、アムロとララァ、二人の遺伝子を受け継いだ、最強の強化人間かもしれない…。
「それから…これは噂なんだけど。オーガスタ研究所では、かなり非人道的な人体実験が行われていたって聞いた事があるわ」
「非人道的?」
「ええ、アムロ大尉って、戦後一年くらいはメディアに顔を出していたけど、その後はぱったり姿を見なくなったと思わない?戦後に勃発したデラーズ紛争にも参戦していなかったみたいだし…」
エルはふと、昨日ハサンが言った言葉を思い出す。

『気をつけて下さいね。大尉は薬の副作用で血が固まり難いんですから』

「アムロ大尉…薬の副作用で血が止まり難いって、昨日…ハサン先生が言ってた…。それに、アムロ大尉の身体…傷痕が凄く沢山あって…戦闘での怪我の痕だって言ってたけど…注射の痕みたいな…小さな傷も沢山有った…」
三人は視線を合わせ、嫌な想像を思い浮かべる。
「まさか…アムロ大尉…」


◇◇◇


数日後、アーガマはサイド7のコロニーへと補給の為に入港した。
そこで、アムロはまた前回と同じように一人、街の中へと出掛けて行った。
少し歩くと、後ろから知った気配を感じる。
足を止め、後ろを振り返ると、そこには髪を黒く染めたシャアが立っていた。
「やっぱり、アーガマに貴方の息のかかったクルーが居るんだな」
そうでなければアーガマの動向がこうも簡単に漏れる訳がない。
そもそもシャアも、ジオンから“クワトロ・バジーナ”という偽名で連邦に潜入していたのだ。まだ他に仲間がいてもおかしくはない。
溜め息混じりに話すアムロに、シャアが余裕の笑みを浮かべる。
「さぁな」
「まぁ…いいさ。今のところ貴方はまだ事を起こしてはいないようだし…ハマーン・カーンに手を貸す訳でもなさそうだからな」
「奴らと一緒にしてもらいたくないな」
「…で?今日は俺に何の用だ?」
「君こそ、私を探しに出てきたのじゃないのか?」
シャアの言葉に、アムロの顔が赤く染まる。
「そんな訳ないだろう!」
「そうか?私は君に会いに来たよ」
気付くと目の前に綺麗な顔が近付いて来ていた。
そして、アムロの腰に手を回して、とある建物へと歩き出した。

「ん…んん」
部屋に入った途端、アムロはシャアに抱き締められ、唇を奪われる。
呼吸もままならない程のキスに、アムロはただ翻弄される。
「アムロ…」
切なげに名を呼ばれ、自分を求めるシャアの心が肌を通して伝わってくる。
そしておそらく、反対に自身の想いもシャアに伝わってしまっているだろう。
ニュータイプ同士、隠すことの出来ない同調。
二人は心の赴くまま、互いを求め合った。

「…なぁ、ジオンが…強化人間の研究をしてたの…知ってるか?」
ベッドの中で、シャアの逞しい腕に抱かれながらアムロが問う。
「強化人間…エルピープロジェクトか…」
「エルピープロジェクト?」
「ああ、詳しくは知らないが、ニュータイプの遺伝子を組み合わせて、試験管ベビーを培養していると聞いたことがある」
「それが実用化されてる事は?」
「噂では聞いている。確か、グレミー・トトの管轄の筈だ」
「そうか…」
「それがどうかしたか?」
「…いや…」
「アムロ?」
「ニュータイプは…やっぱり戦争の道具なのかな…」
作品名:Never end.2 作家名:koyuho