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ディアブロスプリキュア!

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同学園内 保健室

 教室での惨劇の後、何とかはるかはリリスを見つけた。そして出血がひどい彼女を保健室まで連れて行き、現在は彼女の額に包帯を巻いている。
「もうびっくりですよ……突然あんなことするなんて、何だかリリスちゃんらしくありませんでした」
「ご、ごめんなさい……」
 珍しくしおらしい彼女を見たはるかは諭すようにリリスに話しかける。
「どんな理由があるのかは知りませんが、自分を過度に責めても何も良いことなんてないと思いますけど」
「……」
 すっかりリリスは黙り込んでしまった。いつもははるかの方がリリスに諌められることが多いので、はるかはちょっとだけ変な気分だった。
 とにかく、ようやく親友が冷静さを取り戻してくれた。安堵したはるかはリリスの包帯を巻き終えると、苦い顔の彼女に教室で聞けなかったことを尋ねる。
「ところでリリスちゃんは、プリキュアって知ってますか?」
「え?」
 はるかの質問にリリスは息をのむ。
「いえ、さっき尋ねてもリリスちゃん全然聞いていませんでしたから」
「そ、そうね……私はそういうのあんまり興味ないから詳しくは知らないけど。プリキュアって何なのかしらね?」
 自分が問題のプリキュアであることは絶対に口外してはいけない――彼女は体裁を取り繕った様に親友に尋ねた。
 すると、はるかは口角をつり上げ不敵な笑みを浮かべ熱く語り出す。
「ふふふ。リリスちゃん、よくぞ聞いてくれました。プリキュアとはですね……弱きを助ける正義のスーパーヒーロー、もといスーパーヒロインなのです!!」
「す、スーパーヒーロー……!?」
「はい!! これまで世界各地で都市伝説として語り継がれてきましたが、よもやこの黒薔薇町にプリキュアが現れるなんて夢にも思っていなかったですよ!!」
 世間一般の解釈に基づけば、プリキュアは言うならば世界を守る為に戦う少女たちの俗称だ。キュアという言葉を接頭語にして個々に別々の名前を有し(あるいはまったくこのルールに該当しないケースも存在する)、人類の害悪となり得る存在を倒している。また、プリキュアに変身しているのはほとんど中学生であり、小学生や高校生というのも稀に存在する。
「それがこの写真の子っていうの?」
 先ほどはるかに見せられた写真をもう一度取り出し、写真にくっきりと写るキュアベリアルとなった自分のことを指さしながら、リリスは尋ねる。
「はい!! これこそ決定的証拠ですね!!」
「演劇部の練習じゃあるまいし、フリフリの衣装着て悪と戦う中学生なんていないわよ……」
 リリスは自分こそがそのフリフリの衣装を着て悪――自分こそ悪魔なのであるが――と戦っていた中学生であるとは悟らせないように、よくそんな恥ずかしいマネができるものだと態度に表して見せる。しかし、内心では未だ動揺を隠せない。
「あ~……またリリスちゃんの論理的で冷たい見解が始まりましたね」
「論理的で何が悪いの? プリキュアってものに関する疑問はまだまだ尽きないけど、どうしてプリキュアが出たってだけで世間はそんなに騒ぎ立てるのかしら」
 プリキュアの力を手にするリリスには、プリキュアが世間に与える影響なんて考えたこともなかった。
「分かっていませんね、リリスちゃん! 彼女たちはスーパーヒーロー……もとい、ヒロインですよ! この世の悪を懲らしめて、世界の平和を守ってくれるのです!!」
「一種の救世主とでも言いたいの? この国ってそんなに治安が悪いとは思えないけど」
「そういう現実的な話では無くてですね……ああ、でもなれることならはるかもプリキュアになってみたいですね!!」
 つい先ほどまで、自らの失態にテンションがどうにかなっていたリリスであったが、その言葉を聞いた瞬間、一気にいつもの冷静さが戻ってくるのを自分でも感じ取った。直後――リリスは顔を歪め、低い声でつぶやいた。
「はるかさ。ヒーローになりたいって思うのはいいけど、力を得たら得たで結構しんどいってことが想像できる?」
「え……?」
「どんな人間でも、勇気を出したら誰だってヒーローになれるわ。だけど誰でもヒーローになれるというのは、励ましではなく警告よ」
 誰でもヒーローになれることは励ましではなく警告……リリスの口から飛び出したその言葉にはるかは思わず息をのんだ。
 やがて、リリスはパイプ椅子から腰を上げ、教室に戻るために歩き出した。
「教室に戻るわよ」
「「あ、はい……」
 慌てて彼女に合わせてはるかも保健室から出て行った。
 教室に戻るまでの間、はるかはリリスに話しかけることができず、ただ黙って彼女の背中を見つめながら廊下を歩き続けた。
(誰でもヒーローになれることは励ましじゃなくて警告……? それって、どういう意味なんでしょうか?)

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