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梅嶺小噺 1の三

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少し頭を冷やして、太皇太后にねだってみる、そんな手もあったのだが、ついこの前、太皇太后経由でねだり事をして、ひと騒動あり、太皇太后の顔まで潰してしまったのだ。さすがに今回は頼めないと、林殊も分かっていた。

大体の収蔵場所を、靖王は覚えていた。
どうにもならぬなら、忍び込む、、、。林殊は体の軽さには自信がある。
禁軍の十数人で、建物を警備している。
二刻毎に、警備の兵が入れ替わる。
忍び込むなら、その時が絶好の機会なのだ。
二人でひっそりと、その時を待っていた。
警備の一人が、隊長らしき者に何か耳打ちし、そして宝物庫がある敷地の塀の外に出て行った。
「よし景琰!、動きがあったぞ。間もなく交代だ。」
「ああ。」
「禁軍の交代式の時が狙い目だ。」
任務に就く隊と、解かれる隊が、全員、宝物庫の前庭に集まり、交代をするのだ。全員が建物から、幾らか離れるその瞬間を狙っていた。
だが、直ぐに来ると思っていた交代の兵は、中々現れない。
「なんだ?、中々、来ないぞ。」
「小殊?、先程の兵が気にならないか?。」
「う〜ん、、何しにここを離れたんだろう、、、?。」
「小殊、今日は止めた方が、良くはないか?」
「、、うっ、、、そうだな。止めとくか、、。」

その時、宝物庫の門に、一人の人影が現れる。姿からして朝臣のようであり、その姿は堂々としていた。
「げえっ!!。」
「どうした?、小殊?。」
「、、、、、父上だ、、。」
「えっ!!!。」
紛れも無い、林燮その人だった。

林燮の元に、隊長らしき人物が駆け寄っていき、二人は暫く話をしていた。そして、隊長が守備に当たっている兵達に合図をすると、兵は一斉に集まり、隊列を為し、宝物庫の門から出ていった。

「ヤバい、私達は父上から、見つかってるぞ。」
「えっ?、、、まさか、、、。」
本当だった。
中庭に茂みはいくつもあるのに、林燮は真っ直ぐ、林殊と靖王が隠れている所に向かってくる。
「小殊が見たがっていたから、特別に手を回して、剣と弓を見せてくれるんじゃないか?。」
「それだったら、どんなに良いか、、。絶対違うぞ。」
そして林燮は、二人の隠れる茂みの前でぴたりと止まった。
「早く出てこいっ!。こんな所に忍び込みよって!、、。」
諦めて林殊がゆっくりと立ち上がる。
見つかったのなら、早く出た方が面倒臭くない。
「父上、ご機嫌、麗しゅう、、。」
「何が『麗しゅう』だ!。馬鹿息子が!!。」
「、、、、。」
遅れて靖王が立ち上がる。
「殿下まで!!。」
林燮は驚いていた。
「私が反対したから、大方こんな事になるだろうと思っていた。禁軍の宝物庫の担当に、お前が来たら知らせてくれと、頼んでおいたのだ。
見て見ぬふりをしてくれたのだ。ここには楽に入れただろう?、そうでなければ、お前など、ここに入れる訳が無い。」
「あ〜〜〜〜、、、、やられた、、。」
悔し気な林殊だった。
「お前のやる事など、みな、お見通しだ!。馬鹿め。
、、、、しかし、殿下まで、、、。
お前ときたら、品行方正な殿下を、こんな事に巻き込みよって!。」
「あ、、いや、、私が見たいと小殊にせがんだのだ、、。巻き込まれたのは小殊の方で、、、。」
「、、ほら、父上、、、ね、今回は、私じゃないです。」
どうせ靖王は王族、しかも、皇帝の息子、バレてもたいした騒ぎにはならないだろうと、靖王も林殊も、咄嗟に頭が回った。
この後、林殊がどうなってしまうのかを考えてしまって、靖王はつい、嘘が口から出てしまった。
だが、効果は逆だったのだ。
「殿下になすり付けるとは!!。
お前という奴は!!、来い!!。」
「あ──────っ、、、。」
林燮はむんずと、林殊の耳を掴み、茂みの陰から林殊を引っ張り出した。
「殿下、お止しなさい。何故、庇うのです。小殊がした事と、全て分かっているのですよ。
宜しいですか、君子たるもの、こういった輩の言うことに、惑わされてはなりませぬ。靖王殿下はそういうお立場なのですぞ。母上様が泣きますぞ。」
「えーっ、、景琰がしたって言ってんのに!。」
林殊は、うっかり口を滑らせてしまった。
「何だと!!、殿下の御名を呼び捨てて!!。お前には、あれ程、わきまえよと、言っておいたのに!!!。」
林燮は、林殊の耳を掴む手に、力が入る。
「いでででででででで、、。
み、、耳、取れます、、。御父上様〜、、。」
「馬鹿者!!。お灸を据えてやる!!。」
「ひぃ〜〜〜〜、、。」
靖王は、林燮の剣幕にたじろいでいた。下手にまた口を挟んたら、またボロが出かねない。
「殿下、靖王府にお戻り下さい。この件は小殊がしでかした事。殿下に類は及びません。」
「父上、、逃げませんから、、手を離して〜〜。」
「やかましい!、誰が信じる!、戻るぞ!!。
、、、、では、殿下、失礼を、、。」
林燮の物言いには、嫌も応も無い。
従うしかない強さがあった。
林燮は、恭しく頭を下げると、林殊の耳を掴んで引っ張ったまま、門の方に向かって行った。
「痛てて、、、、ぃてぇっ、っってんのに、、、。
、、、っぁぁぁああっ、、、。」
また、林燮の手に力が入った様だ。
靖王は痛がる林殊を、ただ見送るしかなかった。






....................................



その日の夜更け、靖王は金陵の外れにある、森の中を歩いていた。
大木が繁る、森の中だった。
そして奥に見える一本の木に、近付いて行った。
━━━やっぱり罰をくらってる、、、。━━━
遠くに見える一本の大木には、グルグルと縄が回してあった。
恐らくこの木の影に、林殊は括られて居るのだろう。
林殊は、様々なイタズラを尽くし、林燮の罰も、回を追うごとに、度合いが強まっているように思えた。
林殊がまだ幼い頃は、屋敷の部屋に押し込める程度だったが、この頃は木に括られたりする事が多くなった。このままイタズラが収まらなければ、終いには木に吊されるのかも知れない、、、。
大木の陰になり、靖王の方からは、林殊の姿は全く見えない。
「小殊。」
縄の巻かれた大木を回り込むと、林殊は根元に胡座をかいた形で、縛り付けられていた。
いつもは立たされて縛られているのに、林燮は温情をかけたのたろうか、靖王はそう思った。
座ってうなだれて、林殊はすっかりしょげている様に見えるのだが、実は違うだろう。
「あ"〜〜〜、、、靖王殿下、、、。」
「やめてくれ。小殊から殿下呼ばわりされると、、、むずむずする。」
「、、ぷっ、、、。私も、口の辺りがむずむずするんだ。」
少し顔を上げて、林殊が笑う。
靖王は林殊の側にかがんで、林殊を縛る縄を、しげしげと見ていた。
「何だか、、今回は縄が緩いのではないか?。抜けられそうだが、、。」
靖王は、林殊を縛っている縄を、弄りだした。
「や、、やめろ景琰、、、触るな!。
親父のヤツめ、、また変な結び方したんだ。この前、抜けられそうだと思って縄目を解こうと動いたら、縄が締まっていって、とんでもなくキツくなっていったんだ。一晩苦しんだんだぞ。喚いても誰も助けに来ないし、、、。
、、あの時と同じ縛り方だ、、コレ。」
「えっ、、そうなのか?。」
「うん、、、やめて、、。」
作品名:梅嶺小噺 1の三 作家名:古槍ノ標