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梅嶺小噺 1の三

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珍しく消極的な林殊だった。相当酷い目に遭ったのだろう。
「くそジジイめ!、わざわざ変な木選びやがって!。
見ろよ、この頭の後ろの木のコブ、ちょうど頭に当たって、首を上げられないんだぞ。
、、そう言えばこの前の時、この木を見て、嬉しそうにニヤついてたんだ、、、。父上は、あの時から使おうと、狙ってたんだ、きっと!。」
言われた通りに、木をよく見ると、林殊の後頭部辺りに、頭ほどの瘤が出ており、それが邪魔で、林殊は頭を上げられない。林殊はずっと下を向かざる得ないのだ。
「首、、、疲れないのか??。」
「、、、もう、、限界、、、。」
「林主帥を呼んでこようか??。」
「、、、、、来るわけないじゃん。」
「、、、そうか、、、、。」
ああ、可哀想に、、、そう思うが、靖王には、どうも出来なかった。
縄を切れば、また林殊が上乗せした罰をくらうだろう。
普通の親ならば、何かあってはと、誰か近くに隠れて見ているものなのだが、林燮に至っては、我が子の悪運を信じているのか、誰も付けずに放って置くのだ。
幸い、林殊は罰を受けて、今までは何も無かったのだが、、。

「小殊、背中の傷は大丈夫か?、かさぶたにはなっていたが、まだちゃんと治ってないのだろう?。痛くはないのか?、痺れたりはして無いか?。また傷が開いているのではないかと、心配なのだ。
小殊に言われるままに、素人の私が治療してしまったが、そのせいで治りにくくなるのではないかと、、、、。
林主帥に理由を話して、拘束を解いてもらおう。私が林府に行き、話してくるから。」
「え??、、、あ、、、、。」
真剣な眼差しで靖王は語る。
「大丈夫だ、、猪退治は善行なのだ、林主帥とてきっと怒らぬ。」
───景琰は、ホントに私が、痛がってると思ってたのか!。嘘だろ、、、───
生真面目というか、律儀というか、、、、。
───景琰、、、、ダメじゃん、、。───
元はと言えば、林殊が言い出した猪退治だった。
たかが猪一匹、そう簡単に考え過ぎていた。
そして、一つ間違えば、靖王が命を落としていた。
靖王を庇って、怪我をしたから、ほんの少しだけ、恩を売ってやろうと思っていた。
痛がれば、靖王が思い通りに動くものだから、林殊は面白くなって、歯止めが効かなくなったのだ。
口で言う程、痛くなど無かったのだ。
林殊以外には、靖王はこうはならない。
それを知っていて、林殊はやったのだ。
林殊のその全てを心配し、受け止め、その行動や言動を信じてくれる。
親友以上の、だが、両親とも違う愛情だった。
───まるで兄さんみたいだ、、、、。───

「ん?。」
林殊が何かに気が付いて、鼻をヒクつかせた。
「スンスンスンスン、、、、、、匂う、、。何か持ってる?、景琰?。」
「あ、、腹が空いているのではないかと思って、、、。」
靖王は懐から、紙包みを二つ出した。
わくわくして、林殊は靖王の手元から目が離せない。
開くと、焼いた鶏を、大ぶりに切り分けたものが四〜五切れ、包まれていた。
「おお〜〜〜!!!。」
そしてもう一つは、静嬪の点心だった。
今日は本来、靖王が芷蘿宮に行き、静嬪に挨拶をする日だったのだ。そこに林殊がついて行って、お宝を見てこようとしていたのだ。
騒ぎの後、靖王は、本来の目的の芷蘿宮に行き、事の子細を静嬪に聞かせた。
あまり林殊が酷い目に遭わない様に、母親の静嬪ならば、何か良い知恵を貸してもらえるかもしれないと、相談したつもりだったのだが、、、、。
静嬪は心配するどころか、林殊らしいと面白がっていた。
そして靖王の帰り際に、この二つの包みを持たせたのだ。
静嬪らしい気遣いだった。
靖王が芷蘿宮を去る時には、いくらか心が軽くなった気がした。

「景琰、早く食わせて〜。」
空腹で、どうにもならない様子の林殊だった。
靖王が包みから、一切れ摘んで、口を開けたままの林殊の口に近づける。
林殊が、ぱくっと鶏の端を口にくわえると、靖王は指を離した。
もごもごと靖王の手を借りずに、咥えながら器用に食べていった。
「美味ぇ〜〜〜。何でこんなに美味いんだ??。」
あまりに美味そうに食べるので、何だか靖王も嬉しくなる。
たちまち、最後の一切れになる。
「、、、あっ、、、、私だけ、食べてた、、。
靖王殿下も、、、食べれば?。」
「こら!、まだ言うか。
私はいいから、小殊が食べろ。私は母上の所で、これを出してもらったのだ。」
そう言って、靖王は最後の一切れを、林殊の前に出す。
嘘ではないのだ、だが芷蘿宮で靖王は、何も喉を通らなかったのだが。
「へへ、、じゃ遠慮なく〜〜。」
縄で縛り付けられながらも、嬉しそうに、美味しそうに平らげる林殊。
━━━本当に小殊は、何でも楽しそうだ、、、。━━━
母親静嬪が、林殊を心配しなかった理由が、何となく分かった。
父親に耳を捕まれ、引っ立てられながらも、反省など全くしていない様で、懲りずに、次の時はどうしようとかと、林殊が心のどこかで巡らせているように感じる。
だから、林燮の悩みの種はどこまでも尽きないのだろう。
どんなに罰を上乗せしようと、林殊はその次の楽しみを考えている。

包みの鶏肉は、結構な量だった。
もう点心は、腹に入らないのではないかと思ったが、途中噎せりながら、水を飲ませて貰いながら、林殊は、干した果物入りの餡が包まれた、大きな菓子二つも、ぺろりと平らげた。
「あー、食った〜〜。」
ようやく、人心地ついたようだった。
ゴツと鈍い音がする。
「くうっ、、、このコブのせいで、ささやかな伸びも出来ないのか、、。」
縛り付けられて、動かせる所など殆どないのに、首の自由まで、樹木の瘤に奪われていた。
「縄を解かれたら、金陵中の木のコブ切り落としてやる!!。」
悪さを止める気は、林殊には毛頭無いようだった。
こんな所も林殊らしく、だが、まさか木の瘤を取ると言い出すとは、、、、。いつも突飛なことを言い出すのだ。そしてやるのだ。
今回も瘤を、本当に切り落とす気だろうか。
━━━また、付き合ってやるさ。━━━
靖王はそう思った。

「、、、景琰、景琰。、、、頼みがあるんだ。」
「、、??。」
神妙な声だった。
一体何の頼み事やら、こんな声で頼まれるのは滅多にない。
「景琰、、、もっと側に来て欲しい。私の隣に、、。」
「??。こうか?。」
林殊の真剣な眼差しが、わずかな月明かりに照らされる。
━━━何か重要な話でもあるのだろうか、、、。
林主帥に仕返しでもするのか?。それならば今度こそ止めさせねば。━━━
ただならぬ様子の林殊に、幾らか緊張した。
縛られた林殊のごく側まで、座ったままで近付いた。
「うん、、、そう、、そこで。
私に、そのまま背を向けてくれないか。」
━━━一体、何だ?、私に顔を見られると恥ずかしいのか?。━━━
言われた通りに、縛られた林殊に背を向ける。
「ああ、、景琰、、、、。」
ほっとしたような、林殊の声と共に、靖王の肩に重みがかかる。
林殊の額が靖王の肩に寄せられたのだ。
心の底から洩らしたような声に、靖王は何故か胸が高鳴った。
「小殊、、?、、。」
「、、、、、、。」
話難い事なのか、林殊は押し黙ってしまった。
「、、???。」
「、、、、ぐぅ、、、、。」
作品名:梅嶺小噺 1の三 作家名:古槍ノ標