芳川裕美の想い(前編)
取り出した名刺には『株式会社AIS、原田昭夫、イラストレーター』とあり、携帯の電話番号とEメールアドレスが書かれていた。
裕美は名刺を見ながら元旦の朝を思い出した。自分から見たら父親に近いようなオジさんの、チョッと茶色くて短い髪の毛、大きくて優しそうな目、無精ひげの口元など。誰かに似ている訳では無いが、どこかで会った事があるような親しみのある顔だと思った。そして裕美はそんな原田の顔を思い出しながら、胸の鼓動が高鳴るのを感じていた。
なぜ原田の顔を思い浮かべると胸が高鳴るのか、その理由が解からないまま裕美は妄想を始めた。それは『学校の帰り道で偶然原田に会う、すると彼は裕美を誰も居ない自分の部屋に連れて行く。そして原田は裕美を裸にし身体中にキスをする。原田も裸になって今度は裕美が彼の身体中にキスをする。そして原田のアレが自分のアソコに・・・』。
そんな妄想を頭で描き始めると、裕美の右手は無意識のうちに自分の股間に延びていく。そして妄想の中の自分が果てるのと同時に、頂点に達し「*イクゥ**!』と無声音で叫びながらカラダを硬直させた。
オナニーなどする気分では無かったはずの裕美が、原田の顔を思い浮かべた途端に妄想を始め、淫靡な世界に浸りながら頂上に昇り果てた。それでもまだ裕美は、自分の心が危険な恋の入り口に立っている事に気付かなかった。
呼吸を整えるように大きく息を吐いた裕美は、自室のベッドに投げ出していた身体を起こした。気が付くとスカートは腰まで捲くれ上がり、ピンクのパンツは太ももまでズレ落ちていた。軟らかい恥毛がまばらに生える股間が丸出しになり、小さな淫裂からは透明な粘液が滲み出ていた。裕美はティッシュで股間を拭きながら、今迄で一番気持ち良いオナニーだったと思った。
一度オーガズムに達すると裕美は妙に心が落ち着き、いま自分がやりたい事を考え始めた。裕美はパソコンの電源を入れ、関心ごとであるフラワーデザインのサイトを検索し始めた。裕美は小学校を卒業する時、担任だった女性教師に自分で作った花束を贈った。それは自宅の庭に咲き始めた春の花を適当に寄せ集めただけのものだった。しかし担任の女教師は深く感動し、『裕美ちゃんは生け花かフラワーデザインを勉強するといいわ、』と言ったのだ。それ以来裕美には、将来成りたい職業の一つにフラワーデザイナーが加わったのだ。
しかし勉強の為のサイト閲覧は1時間もすると飽き、脳の巡りが悪くなり集中力が切れてきた。フラワーデザインは余りにも千差万別で、自分の目指すものが判らなくなってしまうのだ。そんな時に頭をリセットするのは花に関係の無いサイトを見る事だ。
動画配信サイトで好きな音楽を聴いているうちに気持ちが上向いてきた裕美は、アダルトサイトに移動して破廉恥動画のサムネイルをクリックした。
流れてきた動画の男は若い女の子をソファーに押し付け、学校の制服らしいスカートを靴も脱がさないまま剥ぎ取った。そして可愛らしいパンツを一気に引き下ろすと、丸見えになった性器に口を押し付けた。
いつもならこの時点で吐息を荒くする裕美だが、先程のオナニーから2時間も経たない今はなぜか冷めた目で観ていた。そして又、二重瞼の大きな目に笑い皺がある原田の顔が頭に浮かんだ。
作品名:芳川裕美の想い(前編) 作家名:潮 風