芳川裕美の想い(前編)
裕美は可愛いフリルがいっぱい付いたピンクのドレスを身に付け、頭に造花で作った花冠を載せた。そして鏡の前で自分の姿を見てから、隣の部屋に「*着替え出来ました」、と声を掛けた。原田が「じゃ入って来て、こっちの準備も終わったから、」と答えた。
引き戸を開き、部屋を見た裕美は驚いた。最初に入った地味な部屋の壁には白いスクリーンのような物が吊るされ、床には真っ赤な絨毯が敷かれていた。そして三脚の付いた大きなカメラと幾つもの照明が有った。
しかし裕美以上に驚いたのは、部屋に入ってきた彼女の姿を見た原田だった。彼は思わず、「おお〜!可愛いな〜!!」と感嘆の声をあげた。原田は目を細めて裕美を見ながら、「やっぱり裕美ちゃんは可愛いなァ、・・キミなら何を着ても似会うと思っていたんだ、」と感心したように言った。
しばらく裕美に見入っていた原田が、「じゃあ、そこに立って、」と言い、白いスクリーンの前を指差した。裕美がスクリーンの前の絨毯に載ると、原田は裕美を囲むように置いた照明のスイッテを入れた。そして大きなレンズが付いたカメラで撮影を始めた。
幾つもの衣装に着替えて何百枚もの写真を撮られた裕美だが、一つだけ着たいと思わないコスチュームが有った。それはスクール水着のように肌にピッタリし体型がはっきり浮き出る物だった。ところが、嫌な物は着なくていいと言った原田が、「何とか着てくれないか?、それで終わりにしよう、」と言ったのだ。そして、「これだけは下着を脱いで着てね、」と言った。
この時裕美は、際立つ身体のシルエットに自信が無かっただけで、下着まで脱ぐことに抵抗は無かった。むしろ原田には全裸になることを強要されても良いと思っていたのだ。
裕美はスクール水着にフリルが付いたような衣装に着替え、何度も鏡の前に立った。やっぱり身体の線がはっきり分かって嫌だと思った。背中を反らせて胸を突き出してみても膨らみは小さいし、腰から太ももまでのウエストラインも子供っぽかったからだ。それでも裕美はカメラの前に立ち、様々なポーズを要求されて何枚もの写真を撮られた。
原田が、「なぜ、このコスチュームの写真が必要かと云うと、衣装を着て撮った写真と組み合わせて一枚のイラストにするからだよ、」と言った。そして、「どんな風に成るのか、原画が出来たら最初に見せるから、」と言った。
裕美が隣の部屋に戻って着替えを始めると、原田は撮影の機材を片付け始めた。
その時、隣の部屋から裕美が呼んだ。原田が「どうしたの?」と声を掛けると、「さっきの衣装が脱げないの、ファスナーが壊れたみたい、」と返事をした。そして、「脱がして下さい、」と声を掛けた。原田は躊躇した、(コスチュームの下は何も着けていないはずだ、いくら中学生だと云っても裕美は女だし・・しかし彼女は恥を忍んで声を掛けたのだ、助けてあげなくては)と頭を巡らせた。そして、「分かった、部屋に入るよ!」と声を掛け、隣の部屋に入る引き戸を開けた。
裕美はパーテーションの陰に居た。原田は「いま行くから背中を向けて、」と言いながらパーテーションを回り込んだ。そして、そこで見た裕美の姿に原田は息を止めた。
衣装が脱げないと言った裕美の言葉は嘘で、何と彼女は全裸で立っていたのだ。原田は慌ててハンガーから適当な衣装を外し、正面を向く裕美の裸体に掛けた。そして嘘をついたことは責めず、「脱げたじゃないか、風邪をひかないうちに、早く支度しなさい!」と言った。裕美はそんな原田の言葉を聞こうとせず、「原田さんも裸になって!・*私を抱いて!」と言った。
作品名:芳川裕美の想い(前編) 作家名:潮 風