はじまりのあの日12 古都と公演とガールズトーク
彼を観ながらしばらく列車に揺られている、と
「ほ~ら、二人も起きなさ~い」
めー姉に起こされる。どうやら眠ってしまったようだ。わたし、逆に彼に寄りかかっていた。やや照れながら起きるわたし。彼は自分に掛かっている、わたしのコートをみて
「優しい気遣い、ありがとうリン。おかげで暖かかったじゃない」
そう言って撫でてくれた。その言葉が、とてつもなく嬉しかった
「忘れ物はダメですよ~」
「確認して降りなきゃね~」
ピコ君、Mikiちゃんが注意喚起、揃って電車を降りる。降り立つ駅は目的地ではない。乗り継ぎの特急列車を待つためだ。駅の構内、駅ビルの中で数分を過ごしていると、ここでも気付いてくれる人がいる。握手や記念撮影に応じているうち、乗り換えの特急が到着。特別車両である、一号車に乗り込む
「お、すっげ、豪華~。修学旅行と全然ちゃう(違う)わ、やっぱ」
「グリーン車ですからね、恐縮しますよ」
リリ姉、乗車して感想。先生は眉を下げる
「りゅうとくん、いっしょにすわろっ」
「おとなりです、ゆきちゃん」
手を繋ぎ合うユキちゃん、リュウト君
「イロハチャン、フワリ(すわり)マショウ」
「オッケ~、オリバーくんっ」
腕を組む、オリバー君、いろはちゃん。お隣さんが決まって、腰掛ける天使様
「お隣さんが決まったら、お向かいさんですよ」
キヨテル先生が、オリバー君、いろはちゃんが腰掛ける席を回し、向かい合わせてあげる。天使様、大喜び
「じゃ~、隣に座ろ~ぜセンセ。天使様の横にっ、座席も回転~」
「はは、リリィさん、少し落ち着きましょう」
花が咲くリリ姉を、宥め(なだめ)ながらキヨテル先生。通路を挟み、天使様の横、向かい合って腰掛ける
「アラ、その手がありましたわ」
ミク姉に、レンの隣を譲ったルカ姉、目が輝き席を回転させる。ふたり掛けのイスと一人掛けのイス。わたしはさっさと彼の横に、と
「リン、俺と一緒ばっかりで飽きない」
気遣ってくれたのだろう、別席を聞かれるが
「ん~、わたしはがっくんの隣が良いな」
躊躇無く、隣席を申し出る
「なら、窓側、通路側、どっちがイイ」
「窓側~」
遠慮というものを知らない
「ならゎたし、二人の前~。眺めて萌えてよ~ぅ。お話しもできるし」
「あ、IAちゃん、わたしも~。席迎え合わせて座ろうね」
IA姉、めぐ姉が正面に座る。席も決まって、電車に揺られる
「先程の駅で煎餅買いモウシタ、好きな方はどうぞデゴザル」
「あ、コーヒー買っといたよ~」
アル兄、カイ兄のお気遣い。楽しく彼と会話を交わし、IA姉めぐ姉に生温かかく眺められる。その目線は気になったが、小雪舞う、京の都に着いたのは十時半を少し回った頃。ホームから、改札を抜け広い駅の構内へ。一斉に集まる視線と、上がる歓声。注目されるのはありがたいこと。旅行に来ていた、外国の方にまで声援を頂く。天まで届くのでは無いかという階段の前
「は~い、皆さん笑って~」
修学旅行の学生さん。引率の先生からのお願いで、一同、記念写真に収まる。カメラマンを務めた、わたし達のプロデューサーが促す笑顔。手を振ってくれるみなさんに別れを告げ、待機していたバスに乗り、公演の会場へ入る。簡単な打ち合わせ、荷解の後で昼食を済ます。仕出し屋さんのお弁当、大きなエビ天が美味しかった。小休止の後
「さ~、リハ~サル始めるよ~」
「チビ四人、お前等揃っては初陣だぜぇ」
「緊張しすぎちゃ、ダメよ~」
一時から三時半までは、内容の濃いリハーサル。公演は五時から。この日、口火を切るのは、天使組四人の歌とダンス。言葉遊びの歌。ミク姉が歌ったのをカバー。リハーサルを終え、シャワーで汗を流す。衣装、メイクをあわせる。徐々に緊張を高めてゆく。適度な緊張は、上演に良い効果をもたらす。ただ、子供達四人の緊張は、どう見ても違う。初めての大舞台に、硬直する
「リュ~、みんなも、ダイジョ~ブだって。楽しくやればい~んだぜ。心配すんな」
公演開始、三分前。ステージの脇、緊張で、半泣きの天使様。リリ姉がワザと強く頭を撫で
「大丈夫です。皆さんは誰よりも練習していました。その通りに歌って踊れば良いんですよ」
父親のように。キヨテル先生も、一人一人の手を取る
「お前達、全力でやって来い。何かあったらすぐに呼べ。俺が必ず救けに行ってあげようじゃない」
優しい彼、天使様の面前で言う。頬を、両手で包む。公演の幕が上がる
「「「「はじめましてみなさま。よにんでうたうの、はじめてです。おうたも、おどりもがんばりま~す」」」」
自己紹介の後、天使組が歌い踊る。わたしたちは、その間、舞台袖で祈っていた。失敗しないように。実力を出し切って貰えるように。お客さんに、気に入って貰えるように。歌が始まる。踊り始める。歌詞一つ、ポーズ一つ。決まる度、頷くわたしたち。握る手に、汗が滲む。祈るように見るルカ姉。手を合わせ、何か称えるアル兄。テト姉も、普段決して見せない、半泣き顔。わたしも、彼の腕にしがみつく。彼の顔『弩』真剣
「「「「ありがと~ございました~」」」」
歌が終わって、お礼の言葉を述べる天使組。鳴り止まない、拍手と歓声は、大成功の証。舞台裏へと駆けてくる四人。安心したのだろう。張っていた気も抜けたんだろうな。泣き笑いの子供達。メンバー全員、我先にと抱きしめた。天使様が、口火を切ってくれたおかげ。その日の公演は、どこか新鮮な盛り上がり方だった。何というか、皆さんの声が、いつも以上に暖かかった。そういえば、あの日が初めてだった。わたしと彼、二人で歌ったときに上がったあの声。お客さんの
『がくリン来たぁぁぁ~』の声
あの時は無性に嬉しかった。大喜びして、ハイテンションで、彼を引っ張るように乱舞したことを憶えている。緊張が解けた天使組も、わたし達と共に歌い踊る。大盛況の公演が終わる。アンコールに、二曲で応える。後に、フルメンバー初の伝説公演と評価を頂いた、京の都での舞台だった
「りゅ~、よっく頑張ったぞ~。格好良かったぜぇ~」
「ありがとうございます、りりねえさま」
楽屋に入る。真っ先にリリ姉、リュウト君を撫でながら
「ユキさんもお疲れ様です。大変素晴らしかったですよ」
「あ、ありがとう、ひやま先生」
ユキちゃんは照れ笑い、お水を手渡す先生
「ねこちゃんもおりこうさん」
「ぼく、感動しちゃった~」
「ちょ~かわいかったよ~」
「カルちゃん、ピコさん、ありがとう。Mikiちゃんも~」
お揃いコスチュームの、カル姉とピコ君達。撫で回されるいろはちゃん。Mikiちゃんは汗を拭いてあげる
「オリバーもよく頑張った。四人の中では、お兄さん。皆を纏めていたじゃない」
「アリガトホ、ガクサン」
紫の彼、オリバー君を抱き上げながら。皆が思い思い、天使様を褒め称える
「さあ、ジュースで乾杯しましょ。その後身支度して、旅館で大宴会。打ち上げよ~」
「張り切ってるじゃんメイコちゃん。ま、この後は飲んべえタイムだ。思いっきり楽しむぜ」
「ふふふ。ワタシも頂けるようになってから、すっかりお酒の虜ですわ」
「ほ~ら、二人も起きなさ~い」
めー姉に起こされる。どうやら眠ってしまったようだ。わたし、逆に彼に寄りかかっていた。やや照れながら起きるわたし。彼は自分に掛かっている、わたしのコートをみて
「優しい気遣い、ありがとうリン。おかげで暖かかったじゃない」
そう言って撫でてくれた。その言葉が、とてつもなく嬉しかった
「忘れ物はダメですよ~」
「確認して降りなきゃね~」
ピコ君、Mikiちゃんが注意喚起、揃って電車を降りる。降り立つ駅は目的地ではない。乗り継ぎの特急列車を待つためだ。駅の構内、駅ビルの中で数分を過ごしていると、ここでも気付いてくれる人がいる。握手や記念撮影に応じているうち、乗り換えの特急が到着。特別車両である、一号車に乗り込む
「お、すっげ、豪華~。修学旅行と全然ちゃう(違う)わ、やっぱ」
「グリーン車ですからね、恐縮しますよ」
リリ姉、乗車して感想。先生は眉を下げる
「りゅうとくん、いっしょにすわろっ」
「おとなりです、ゆきちゃん」
手を繋ぎ合うユキちゃん、リュウト君
「イロハチャン、フワリ(すわり)マショウ」
「オッケ~、オリバーくんっ」
腕を組む、オリバー君、いろはちゃん。お隣さんが決まって、腰掛ける天使様
「お隣さんが決まったら、お向かいさんですよ」
キヨテル先生が、オリバー君、いろはちゃんが腰掛ける席を回し、向かい合わせてあげる。天使様、大喜び
「じゃ~、隣に座ろ~ぜセンセ。天使様の横にっ、座席も回転~」
「はは、リリィさん、少し落ち着きましょう」
花が咲くリリ姉を、宥め(なだめ)ながらキヨテル先生。通路を挟み、天使様の横、向かい合って腰掛ける
「アラ、その手がありましたわ」
ミク姉に、レンの隣を譲ったルカ姉、目が輝き席を回転させる。ふたり掛けのイスと一人掛けのイス。わたしはさっさと彼の横に、と
「リン、俺と一緒ばっかりで飽きない」
気遣ってくれたのだろう、別席を聞かれるが
「ん~、わたしはがっくんの隣が良いな」
躊躇無く、隣席を申し出る
「なら、窓側、通路側、どっちがイイ」
「窓側~」
遠慮というものを知らない
「ならゎたし、二人の前~。眺めて萌えてよ~ぅ。お話しもできるし」
「あ、IAちゃん、わたしも~。席迎え合わせて座ろうね」
IA姉、めぐ姉が正面に座る。席も決まって、電車に揺られる
「先程の駅で煎餅買いモウシタ、好きな方はどうぞデゴザル」
「あ、コーヒー買っといたよ~」
アル兄、カイ兄のお気遣い。楽しく彼と会話を交わし、IA姉めぐ姉に生温かかく眺められる。その目線は気になったが、小雪舞う、京の都に着いたのは十時半を少し回った頃。ホームから、改札を抜け広い駅の構内へ。一斉に集まる視線と、上がる歓声。注目されるのはありがたいこと。旅行に来ていた、外国の方にまで声援を頂く。天まで届くのでは無いかという階段の前
「は~い、皆さん笑って~」
修学旅行の学生さん。引率の先生からのお願いで、一同、記念写真に収まる。カメラマンを務めた、わたし達のプロデューサーが促す笑顔。手を振ってくれるみなさんに別れを告げ、待機していたバスに乗り、公演の会場へ入る。簡単な打ち合わせ、荷解の後で昼食を済ます。仕出し屋さんのお弁当、大きなエビ天が美味しかった。小休止の後
「さ~、リハ~サル始めるよ~」
「チビ四人、お前等揃っては初陣だぜぇ」
「緊張しすぎちゃ、ダメよ~」
一時から三時半までは、内容の濃いリハーサル。公演は五時から。この日、口火を切るのは、天使組四人の歌とダンス。言葉遊びの歌。ミク姉が歌ったのをカバー。リハーサルを終え、シャワーで汗を流す。衣装、メイクをあわせる。徐々に緊張を高めてゆく。適度な緊張は、上演に良い効果をもたらす。ただ、子供達四人の緊張は、どう見ても違う。初めての大舞台に、硬直する
「リュ~、みんなも、ダイジョ~ブだって。楽しくやればい~んだぜ。心配すんな」
公演開始、三分前。ステージの脇、緊張で、半泣きの天使様。リリ姉がワザと強く頭を撫で
「大丈夫です。皆さんは誰よりも練習していました。その通りに歌って踊れば良いんですよ」
父親のように。キヨテル先生も、一人一人の手を取る
「お前達、全力でやって来い。何かあったらすぐに呼べ。俺が必ず救けに行ってあげようじゃない」
優しい彼、天使様の面前で言う。頬を、両手で包む。公演の幕が上がる
「「「「はじめましてみなさま。よにんでうたうの、はじめてです。おうたも、おどりもがんばりま~す」」」」
自己紹介の後、天使組が歌い踊る。わたしたちは、その間、舞台袖で祈っていた。失敗しないように。実力を出し切って貰えるように。お客さんに、気に入って貰えるように。歌が始まる。踊り始める。歌詞一つ、ポーズ一つ。決まる度、頷くわたしたち。握る手に、汗が滲む。祈るように見るルカ姉。手を合わせ、何か称えるアル兄。テト姉も、普段決して見せない、半泣き顔。わたしも、彼の腕にしがみつく。彼の顔『弩』真剣
「「「「ありがと~ございました~」」」」
歌が終わって、お礼の言葉を述べる天使組。鳴り止まない、拍手と歓声は、大成功の証。舞台裏へと駆けてくる四人。安心したのだろう。張っていた気も抜けたんだろうな。泣き笑いの子供達。メンバー全員、我先にと抱きしめた。天使様が、口火を切ってくれたおかげ。その日の公演は、どこか新鮮な盛り上がり方だった。何というか、皆さんの声が、いつも以上に暖かかった。そういえば、あの日が初めてだった。わたしと彼、二人で歌ったときに上がったあの声。お客さんの
『がくリン来たぁぁぁ~』の声
あの時は無性に嬉しかった。大喜びして、ハイテンションで、彼を引っ張るように乱舞したことを憶えている。緊張が解けた天使組も、わたし達と共に歌い踊る。大盛況の公演が終わる。アンコールに、二曲で応える。後に、フルメンバー初の伝説公演と評価を頂いた、京の都での舞台だった
「りゅ~、よっく頑張ったぞ~。格好良かったぜぇ~」
「ありがとうございます、りりねえさま」
楽屋に入る。真っ先にリリ姉、リュウト君を撫でながら
「ユキさんもお疲れ様です。大変素晴らしかったですよ」
「あ、ありがとう、ひやま先生」
ユキちゃんは照れ笑い、お水を手渡す先生
「ねこちゃんもおりこうさん」
「ぼく、感動しちゃった~」
「ちょ~かわいかったよ~」
「カルちゃん、ピコさん、ありがとう。Mikiちゃんも~」
お揃いコスチュームの、カル姉とピコ君達。撫で回されるいろはちゃん。Mikiちゃんは汗を拭いてあげる
「オリバーもよく頑張った。四人の中では、お兄さん。皆を纏めていたじゃない」
「アリガトホ、ガクサン」
紫の彼、オリバー君を抱き上げながら。皆が思い思い、天使様を褒め称える
「さあ、ジュースで乾杯しましょ。その後身支度して、旅館で大宴会。打ち上げよ~」
「張り切ってるじゃんメイコちゃん。ま、この後は飲んべえタイムだ。思いっきり楽しむぜ」
「ふふふ。ワタシも頂けるようになってから、すっかりお酒の虜ですわ」
作品名:はじまりのあの日12 古都と公演とガールズトーク 作家名:代打の代打