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はじまりのあの日16 バレンタインとリップサイン2

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「かるの大好物が又増えてしまった。天使様のちょこむーす」

めぐ姉、涙まで浮かぶ。カル姉、破顔で頭を振る。今日は、珍しいリアクションが多い

「ハンパねぇっ、マジ美味いスっ。みんな、マジありがとなっ」
「こんなにお礼言う勇馬、レアだね~。んっ、美味しいぃ。うちからもありがとう~。生クリームとチョコムースって反則技~」

お礼連発の勇馬兄。突っ込むのは、Mikiちゃん

「本当~だね、Mikiちゃん。んん、すごい。こ~れめちゃくちゃ美味しい。ありがとうね、みんな」
「天使のチョコムース。はっ、これは売れるじゃね~か」

甘い物好きカイ兄、笑顔三倍。商売っ気を出すテト姉。わたしも、彼の隣。立ったままで口をつける。爽やかな甘さ。口内をくすぐるムースの感。きめの細かい生クリームも絶妙だ。みんなに褒められて、照れっ照れの天使様。その表情がまたも愛らしくて、メンバー萌え萌え

「とっても美味し~よ、みんなありがとう~。がっくんの教え方も上手だったんだね」

見上げる紫の彼。微笑んでくれる

「俺は横から口出ししただけじゃない、リン。まぁ、美味しい一番の理由は、アレのおかげじゃない」
「アレってなぁに~神威のに~さ~ん」

正面、紅茶と共に楽しむIA姉。小首をかしげる

「天使様が掛けた魔法~。効果バツグンじゃない」
「あら、どんな魔法なの~神威君。これ、完全にアタシ好みの味よ~」

コーヒーウォッカで上機嫌のめー姉。隣に居る、カイ兄に寄りかかる。いたずらっ子な眼差し

「ぬふふ、隠し味に、大好物のラム(酒)が入ってるからだろうな、メイコ女王陛下。まあ、沸騰させて、酒の気は飛ばしてるけど。魔法はな、ムースをまぜマゼしながらさ」
「「しながら~」」

ピコ君、Mikiちゃん。期待感にアホ毛が揺れる

「『美味しくな~れ~』って、かけた魔法。俺、萌え萌えで逝っちゃうかと思った。想像してみろ~、お・ま・え・達~」

そこに居た全員、想像してみる。しかも、やや誇張して。クリームまみれの天使様が、微笑みながら『おいしくな~れ』の魔法。メンバー全員、大破炎上。よく、誰も倒れなかった。しばらく全員、無言で顔を覆う

「っはあ。も~ぅ萌え萌え~。ありがとうね~みんな~。でも、ずる~い、神威のに~さん」
「ん、なにかズルした、俺」

泣き笑いのIA姉、上目遣いで彼を見る。珍しく小悪魔ポーズ。紫様は、ウォッカ片手に上機嫌

「だって~、想像じゃなくて~。らいぶで観たんでしょ~、マホ~をかけたところ~。ぅ~らやまし~い~」
「ふふふ。キッチン要員の役得~。教えたカイがあるってモンじゃな~い。大変だったぞ~、逝きかけたじゃない。一瞬記憶が飛んでる」

こめかみの辺りで、指を回す紫様

「ぅあっははぁ~。その時入ったんだな~。がく兄、ケーキの中から固形バター出てきた。紙剥いでないやつ~」

爆笑の弟。苦笑いで謝る彼。幸い、出てきたのは、それ一個だけだった

「はい、リュウト君、チョコレート」
「ありがとうございます。ぼくからもちょこれーとです」

安心した天使様も、それぞれチョコ交換

「はい、オリバー君っ。色~んな味のチョコビスケなの~」
「イロハチャン、ネコサンノチョコクッキーデフ~」

メンバー全員が、総勢贈りあう。21名が21人と交換を終える。一仕事終了、本格的にケーキタイムに移行。グラスに琥珀色のウォッカを注ぎ、ムースを手に暖炉前の席に移動する彼。ついて行くわたし。彼作のブッシュ・ド・ノエルを手に持って。彼の横に腰をおろす。キヨテル先生の膝に乗るユキちゃん。先生、よく正気を保てると思った。リリ姉にもくっつかれている状態だし

「あれ、そ~いえばリン。最近おにぃに乗らね~じゃん。今、ユキがセンセに乗ったの見て思ったけど」
「あ、言われてみればそうかもね。どして、リン」

彼の膝に乗らないわたし、不自然に感じての質問。訪ねてくる、リリ姉。彼のノエルを手に、カイ兄。まあ『膝の上にいる方が自然』というのもどうかと、今は思う。乗ることが出来なくなった理由。古都のあの日以来、彼の膝に座ると受ける、生暖かい視線。それが気になって、座れなくなってしまったのだ。素直に、ワケを口にする

「だって~。がっくんの膝に乗ると、みんな変な顔するんだもん。何だかイヤ」
「確かに。アレは気になる。生暖かい。お前達何か言いたいことでもあるのか」

隣の彼まで同感だと頷く

「うそ。あああしまった~。あう~、責任感じるわ」

なんて言い、落ち込むめー姉。相当な落ち込み方。珍しいリアクション合戦

「ぐああ~おにぃ、リン、すまね。ん~なつもりじゃなかったんだ」

リリ姉頭を抱えながら謝る

「だから言ったのに~。みんなそんな目でみたらダメだって~」

珍しくIA姉、メンバーにお説教をする。でも、IA姉の眼差しも、実は同じ

「あ、あのね、リンちゃん。気にしなくても良いんだよ~。これからはそんな風に観ないから~」

めぐ姉に言われる。何の事だか、分からなかった。が、そんなことを言われれば、余計に気になってしまう

「ま、俺のほうはどうでもいい。リンの気が向いたら、何時でも乗ったら良いじゃない」

頭を撫でてくれる彼、ああ、心地イイ。まあ、結局彼にひっついている事に変わりはなかったのだけれど

「なんだ~、かむい『乗ったら』なんて促してよう。お前結局は、まごう事なきろ―」
「か・さ・ね・さ~ん」

眼鏡を外す先生。たちまち眼光が鋭いものに変わる。膝の上のユキちゃんからは見えない。フライング土下座のテト姉、しながら、チョコレートを献上する

「テトちゃんどうしたの~」
「オイタのしすぎはいけね~よってこと。気にすんなユキっ」

リリ姉が頭を撫で、益々先生にくっつく