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はじまりのあの日18 おやすみの魔法

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「ごめんな、さっき不用意に脚なんか触って。自分で言ったクセに、子供扱いして、頭なんか撫でてさ。これからは気を付ける。許して欲しい」

照れるように眉を下げ、謝ってくる彼。確かにちょっと驚いた。実際少し、気恥ずかしかった。でも、喜びの方が大きかった。火傷していないか、気遣ってくれたこと。お嬢様と執事、鏡越しに、そんな構図が観られたこと。頭を撫でてくれたことも『気を付ける』とは、もう頭を撫でてくれないということだろうか。心の警報器が、一斉に鳴り響く

「あ、で、でも、わたしはイヤじゃないよ。撫でてくれるのも、膝に乗るのも。さっきも嬉しかった。心配してくれて、拭ってくれて。お姫様みたいな気分だったよ」

思うよりも先に、言葉をしぼり出す。撫でてくれないのはイヤだ。子供扱いはイヤだが、今までのように接してくれないのはもっとイヤだから

「ん、そうか、ふふ、お姫様か。お姫様にしては、ちょっとじゃじゃ馬さんじゃない」
「あ、ひっど~い。もぅ、わかってるよ、自分でもっ。IA姉やルカ姉みたいに、おしとやかじゃないことくらい~」

じゃじゃ馬の言葉に、ほんの少し心がささくれ立つ

「ははは、良く分かってるじゃない。でもまぁ、IAのは、おしとやかってカンジじゃない。ルカはシトヤカな『フリ』は上手いけど。ああ見えて、けっこう元気良し。実は一番おしとやかなのはピコな気がす~る。どうなってるじゃない」

言われてみるとそんな気がする辺り、なんだか『オカシイ』

「俺の部屋までかぼちゃのパンツで来ちゃう、じゃじゃ馬のお姫様。キミは君のままで良いじゃない。誰かみたいになろうなんて考えないで。考え無しで来ちゃうトコロは治してほしいけど」

ちょっとヒニクっぽく言って、微笑む彼の顔は優しい。わたしの事を思いやってくれる、それが伝わってくるのは嬉しいが

「ぅ~わかった、気を付けるぅ」
「うん。俺も気を付ける。ごめんな」

もう一つ、彼から伝わってくる『申し訳無い』という想い。さっきも感じた警戒感『気を付ける』つまり、今までのように接してくれないということ。甘えさせてくれないということなのか。それは嫌だ、絶対嫌だ

「がっくん、そんなに急に変えないで。えっと、頭撫でられるの、わたし気に入ってるの。膝の指定席だって、まだまだ乗ってたいんだから。急に変な大人扱いしないでよぅ」

若干涙目、どんどんと気持ちが下へ向く。ソファの上、縮こまって体育座り状態。自分の膝小僧を観る。少し赤いのは、さっき零した紅茶の熱がまだ残っているから。不意に、頭の上が暖かくなる。錯覚かと思った。だから、顔を上げた

「ごめんごめん、そんなつもりじゃない。さっきからリンに、嫌な思い、させてるみたいじゃない」

立ち上がってわたしの脇に来て、頭を撫でてくれる彼。ああ、錯覚ではなかった、至高の感触

「心配なの、キミの事が。そんな格好で来ちゃう迂闊さ。子供と大人の狭間の危うさ」

名前でなく、また『キミ』と。彼がわたしに接してくれる。どこまでも真剣に。何より真摯に

「だからお小言、言っちゃった。大切なの、キミのこと。それだけは分かって欲しいじゃない。でさ、俺がキミにすることで『もうヤメテ~』ってなったら、いつでも言って。それまでは、今までのまんま。俺の膝は、キミだけの指定席」

片目を瞑る。少し困り顔になって『なんだこりゃ、キザすぎる』なんて笑う彼。わたしの心、込み上げるのは、安堵と幸福を混ぜて、10倍に濃縮したような。なんとも言い表せないような感情

「ありがとう、がっくん。わたし、嬉しい。何だか凄く」

『痛いほどに嬉しい』そんな言葉を聞いた気がする。まさにそれだろうか。きっとにやけていただろうな、わたし

「でもさ、なんでそんなに思ってくれるの」
「ん」

撫で続けてくれる紫様。にやけるどころではない、蕩けてしまいそうだった。そこまで『彼の』ナデナデが好きで、良く『想い』に気付かなかったものだ、自分のなかの。今は思う

「がっくんて、メンバーみんな大事にしてるよね。わたしもそう。わたしも大事にしてくれる。どうしてかな、わたしに優しいの」

さてどう応えて欲しかったやら。もちろん、あの日のわたしは気付かない。それに京の都でめー姉達は言っていただろうに『リンには過保護』と。弟、天使様に輪を掛けて『優しすぎ』る態度で、わたしに接してくれていることに気付いていない発言。その発言に、すこし考えた後彼は

「やっぱりあの日が特別だったから、かな。全部が強烈だった。俺、緊張してたじゃない、実は。尊敬する人達の中に、混ぜて貰えるかって。そしたらさ、すっ飛んできたおチビさんに、有無を言わさず引っ張られてさ。憧れの人達の前に押し出されて。仲間にして貰って」

顎に拳をあてて、クツクツと笑う彼。わたしの頭から手が離れる。これは残念。今度は、ベッドに腰掛ける彼

「天使様の歓迎会で、リン、言ってたけど結んだじゃない、リボン」
「うん、がっくん上手に結んでくれた~」

応じてくれた。エントランスの鏡の前、リボンを結んでくれた夜。覚えてくれてた、紫様。とても嬉しい

「めぐ達が『妹』がPROJECTにまだ居なかったから。それもあるだろうな。レンが自己紹介でさ、確か『兄さん増えた』って言ったじゃない。まだリュウトも生まれていなかった」

腰掛けたままで、上半身を少しかがめてわたしと目を合わせてくれる

「俺も思った『弟ができた』って。その流れで思ったんじゃない。リボン結びながら『妹が増えた』って。随分歳が離れた『兄妹』だけどさ」
「そっか、妹なんだ。わたしがっくんの妹」
「そ、ずっと一緒に過ごしてきた、大事な妹」

嬉しい反面、心のどこかが落胆する『妹』という言葉。まあ『娘』や『孫』と言われないだけ良かっただろう

「そう考えれば、いつの間にか増えてるじゃない俺の『弟妹(きょうだい)』でも、勇馬やピコは、レンとちょっと違う弟感。リン、キミも同じ。めぐやリリとは又違う『妹』」

ちょっと違う、それが気になる。どう、想ってくれているか。どう違うのだろう、思って、彼の眼をのぞき込む

「リンとレンはさ、本っ当、小さな時から一緒だったじゃない。って言ったら、めぐは赤ん坊の時から一緒だったけどさ。俺は、昼間学校行って、面倒は親父が頼んだシッターがみてくれてた。ただ、夜は俺があやしてたし、半分『娘』みたいなカンジなのかもしれない」

わたしの視線を、真正面から受け止めてくれる紫の彼。目を合わせに行ったわたしのほうが、照れてしまう。頬が熱い

「それに、俺自身が『子供』っだった、て~のもあるじゃない。めぐを『護る』って思っても、俺自身まだ『護られる』立場だった。たま~にオヤジが、義理のオフクロが、帰ってくると痛感した」

困り顔になる彼

「世話焼かれること、焼かれるコト。でもそれがさ、大学中退して、独り立ちして、本当に『護る』って立場になった。めぐを、リリを、カルを、さ。まだあいつらは『子供』だった『アニキ』から『親』みたいな気持ちに変わっちゃった」

メンバー全員、本当の『親』からは遠くなってしまった