二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
代打の代打
代打の代打
novelistID. 63523
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

はじまりのあの日18 おやすみの魔法

INDEX|7ページ/10ページ|

次のページ前のページ
 

「ただ、帰ってきたんだよな、オフクロが。めぐにとっては、本当の親が。俺が22の時か。ま、やっぱり家にはあまり居なかったけどさ。一応『家主』が来たわけ。親っていう『護る』人間が帰ってきた。格闘試合とかトレーニングで、俺も家空けることが増えたけど、今までみたいな不安、無くなった。一応『護ってくれる人』がいるわけだ」

顔を下げる彼、一度その表情が少し曇る

「さすがに、めぐ達を残してPROJECTに参加するかは迷った。でも、めぐがさ『わたし達は十分ぽ兄ちゃんにお世話になったから。今度はぽ兄ちゃんの人生(みち)を行って』って」

顔を上げ、今度は微笑みをうかべる

「追いかけてきてくれた時思った『一人前』に成ったなって。まあ、来たばかりの日は、まだその歳じゃなかったけどな、リリカルは。護りたい妹達であっても、あの子ら今もう、自分の足で歩いてる。そこら辺はわきまえなきゃ」
「ぅん~、なぁに、がっくん、わたしは違うって言いたいの。たしかにわたしは大人じゃないけどさぁ、自分で参加を決めたんだよ、PROJECT。自立してるつもりなのにさ」

声に、非難の色を混ぜる。何だか『自立できていない』と言われている気がする。これは聞き捨てならない。すると紫様、顔が真剣モード

「リン、レン、他の子供達もか。確かに『歌い手』としては一人前だ。同じ歳の子供達よりしっかりしてる。でもね、まだ『一個人で』一人前かって言ったらそうじゃない」

また上半身をかがめる、距離が少しわたしに近くなる

「非道い物言いカモしれない。だけど『歌い手』って括りを取って、キミを、いや、レンも、天使様も。一人前の扱いをしてくれない、世の中は。リン、アルバイトできるかな、まぁ、新聞配達は除いて。キミは歌い手の他の『職業』考えたことないんじゃない」
「ぁ」

考えたことも無かった。そう、めー姉に、カイ兄に、紫の彼に『育ててもらった』わたしとレン。いや、ミク姉もだ。兄と姉、二人は始め、アルバイトをしながら歌っていた『食べるのに困らない』などと考えた事があった。めー姉、カイ兄、アルバイトをしていたということは、他の収入が無ければ回らないから。恥ずかしいことに、初めて思い知る

「俺は格闘家、重音は『隊』アルは工場だったか。メイコは喫茶店のウエイトレス、カイトはファミレス。Mikiも寿司屋でバイトしてたっつてたな」

告げられる職業。そうだ、わたし達はまだ『学生』特に、わたしと弟は、アルバイトさえしたことがない。しようと思った事すら無い。それがどれだけ幸せな事か

「ま、職がどうのってんじゃなくってさ。一人前ってのは、そうやって、歌い手を離れたとしても『自分だけで生きていける』状態のこと。そりゃ、絶対誰かの世話にならなきゃ、人間なんて生きてはいけない。でもね」

優しい眼差しが、わたしを包み込む。わたしの心、彼の優しさでくるまれる

「世話になりながら、それでも俺は一人でやって来た。カイトもメイコも、必死にキミを、ミクをレンを育ててきた、護ってきたじゃない。俺も、自惚れ入るけどさ、その一端を担いでいたと思ってるわけ。今、リリもカルも、一応世間に出れば『一人前』と見なされる時もある。キミ達はまだそうじゃない。キミ達はまだ、俺ら大人に『護られてる』状態なワケ。大人には『護る』義務がある」

目線を合わせ続けてくれる彼。何処までも真剣な眼差しに、わたし、合わせた目が離せない

「天使様は、それこそ『息子と娘』ってカンジだけどさ。妹なんだ、キミは『必死』になって、護ってあげたい妹。さっきの小言も、心配だから言っちゃった。それっだって、護ってあげたいからじゃない。だから、その日まで。キミが一人で歩けるその日まで。もう少しでイイ。ちょっと鬱陶しいカモ、だけどさ。キミを、君たちを、護らせて」

彼の想いが伝わってくる。それだけでもう、口の端が上がっているのが、自覚できる。身体が、正体不明の歓喜に痺れている。護ってくれるのだ、ナイト様が。いや『御館様』が、わたしを護ってくれる。刹那セツナの、その一瞬。着物姿のわたしを胸に抱いて、刀を構える紫の御館様。昼間、出陣行列衣装の影響もあったのか、そんな幻影を観た

「ルカが言ってたじゃない、ローファー贈ったあの日にさ。自分の脚で、自由に歩ける日まで。キミが素敵な人生(みち)を歩けるその日まで」

きっと、嬉しくなる事を言ってくれる。彼の瞳、宿る光が訴えかける。一呼吸を置いて、わたしを見つめ直して

「大事なキミを護らせて」
「~~っ」

その言葉に、さすがに視線を外してしまう。正体不明の幸福感に、心の中でもんどりうつ。体育座り状態の膝に、顔を埋める。だって、この上なくニヤ蕩けた(にやけて蕩けた)顔、見せたくない

「そんなに嫌だった、リン」

わたしの動作を『拒否』の仕草と捉えたようだ。紫様、不安げな声で聞いてくる