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代打の代打
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はじまりのあの日18 おやすみの魔法

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「違うの~っ、嬉しいのっ。そんなに大事に思ってくれてっ。ぅぅぅ、何か幸せ。だって『大事なキミ』なんて言ってくれたっ」

足の指をワキワキと動かしてしまう。嬉しいなら気付け、などと今のわたし、毒づいてみるが、何の意味も無い。圧倒的幸福感に、身体が萌え上がっている

「大げさじゃない。多分、カイトやメイコも同じ事思ってるんじゃないかな」

お酒のグラスを取る音が聞こえる

「そうだとしても~、そんな風に言ってくれるの、がっくんだけっ。めぐ姉達にも言ってたの『必死』に護る~なんて『大事なキミ』な・ん・てっ」
「いや、言ったことないはず。護るって言ったことはあったはずだけど。やっぱり歳とって変わったんじゃない。子供の頃、めぐ達護るってのは、相手を『ぶっ潰す』『決死』で護る的な考えだった。未熟だよな」

ようやく、顔を上げるわたし。きっぱりと言い、お酒を含む彼

「でも、今は違う。護るってさ『必死』にあがくって感じなワケ。どこかで聞いたじゃない『決死と必死は違う』って」
「ケッシとヒッシ、どういう事、がっくん」

頭悪し。今にして思う、せめて、必死くらいすぐ、漢字を思え

「『決死』ってさ、何を足掻いても、最後は逝っちゃう、あの世に。でも『必死』はそうじゃない。言うじゃない『必死に生きる』とかって。昔の俺は『決死』だった」

見やる彼、眉を下げ『馬鹿者』という表情。その気持ちを読み取れるのに『真意』を読み取ることができない

「昔の俺は『クタバッテモ護る』だった。でも『クタバッタ』らその先、護ることはできない。今はそう思う。たったその一瞬、護るんじゃない。長い間護りたいって。だからこそ、じゃない『必死に護ろう』って考えになったの。必死だったら、ずっと護ってあげられる。護る必要が無くなる時まで、自分で歩ける時まで。それに加えて『護る』って『削っても』って感じになったじゃない」
「ケズル~」

なにを削るというのだろう、体育座り状態のままやり取り。頬の熱はまだ下がらない

「自分の時間、自分のごはん、自分の命。削ってでも護る。全部を『無く』したら、自分が無くなっちゃう。だから『削る』削った分、あげられる。あげただけ、また少し護ってあげられる」

微笑みが、言葉が、その声が、優しい。優しさを、今、すべてわたしに振り向けてくれている。わたし、彼の優しさに溺れてしまう

「足りないもの、大人組から、俺から、削っていって、リン。必要なもの、持って行って。削られたところは『必死』こいて元に戻せばイイじゃない。もう少しの間、大人に頼って」

完璧な微笑みを浮かべながらながら

「もう少し護らせて、キミを」

完全にノックアウト。その顔で、その微笑みで、言われて心トロトロ。再び、顔を膝に付け、隠す。それ程の有頂天で、何故気付かなかったのか。まあ、気付かなくて良かったんだけど。しばし幸福感のぬるま湯に、足の先から頭のてっぺんまで浸かる。幸せのお湯で満たされた浴槽、這い出して、顔を僅かに上げてみる。丁度、お酒を一口含んだ彼。微笑み返してくれる。頬が熱くなって、また顔を下げる。正体不明幸福感、波のように、寄せては返す

「~、~」

束の間、足の親指同士を擦り合わせ、宙に浮く心を僅かに静めにかかる。それでも、浮きにウキウキだったんだろう。想いに気付かないまま、バカみたいに歯の浮く台詞を吐いた。小声で言った、聞こえるだろうから

「護ってね、がっくんっ、わたしが一人で歩ける日まで。お願いだよ、わたしの王子様」

顔を少し上げて見る。意外そうな顔。良かった、二人だけの時で。メンバーの前だったら、どんな視線を浴びたことやら、この一連のやり取り

「王子様、俺が。っはは、リン、王子なんてカンジじゃ~ない、俺は」

をした後、大層可笑しそうに笑う。その笑い声が、わたしを正体不明の浮遊感から解放。正常に戻してくれる

「王子様だよ、がっくん。昔さぁ、ホントはじまりの日、レンを王子って言ったよね」
「よ~く覚えてたじゃない。言った、他に言いようが無かったから。王子と姫、二人とも、その通りに育ってるじゃない」

また嬉しくなる事を告げてくる彼。その通りとは『姫、王子』と思ってくれている

「ふふふ、ありがとう。でもね、わたしに言わせれば、がっくんの方が王子様。よっぽど王子っぽい~」
「そうか、嬉しいけどさ、やっぱりそんなんじゃあない。はは『大叔父様』って感じじゃな~い」
「っはははは~」

大オジサマの冗談に、吹き出してしまうわたし。でも、可笑しさの中に生じた疑問を投げかける

「がっくんさぁ、最近よく言うよね、オヤジとかオッサンって、自分の事。でも、わたしが思ってるようなオジサンじゃないよがっくん」
「う~ん、まあ、若くいたいとは思うけどさ。30にも成れば、自覚持っとかなきゃ。ジキに31に成っちゃうし。いい歳して、若い時と同じ気持ちじゃ~ダメなトコロもあるじゃない」
「30歳って、オジサンなの~。じゃあ、30歳になったらイキナリそんな変わるの、若い時と。若いって、29歳までなの、がっくん」

話しが砕けたおかげ、ようやく顔が上げられる。完全に。膝に肘を乗せ、右手に顎を乗せる紫様。多少難しい顔つきになって

「さてな、イキナリ変われるもんじゃない、人なんて。でも、覚悟を持っておけって感じ。戒めみたいに使うわけ『オヤジ』って。いつまでも浮つくんじゃないって。これからは色んなコトが変わっていく。さっきリンに言ったよね『大人じゃない、子供でもない』俺もそんな状態なのかな」

目が笑っているのは、自覚があるからなのだろう

「『若くもない、歳でもない』って状態、谷間の年齢か。中々に難しいじゃない」
「ん~、よくわかんない~。でも、似たような感じかな、がっくん。さっき言ってた、わたし達と」

『狭間』のわたし『谷間』の彼。やや膝を下げ、顎を膝に乗せる

「まあ、そういうことにしておこうじゃない。似たような悩みがあるってことで。14歳の可愛い悩みと、30歳、オッサンの廃れた悩みじゃ、色合いは違うけど」

口の端を上げ、薄く笑う彼

「さぁ~て、これ以上の夜更かしはイケナイな。リン、ダブルの部屋だから、ここで歯磨きしていったら。すぐに部屋で休めるじゃない。コップと歯ブラシは部屋に持ち帰っちゃえ」

という彼の提案。わたし、幸福感でうわついて、調子に乗って

「な~らぁ、ベットも二つあるよね。にゅ~よ~くの時みたいにさ、ここで寝てもいいかなぁ。あ、ベッドは別でさ」
「コラ」

あ、しまったまた失敗、目が本気モード。怒らせてしまった

「リ~ン、大人になるってさ『気を付けなきゃならない』コトが増える、沢山になるの。ふふふ、化粧習ってるのと同じようにさ、ルカやめぐに教えて貰おうじゃない『ソノアタリ』も。俺、もう今はこれ以上言わない」

一瞬で眼差しを暖かな物に変えてくれる彼

「色~んな事教えて貰って。ルカやめぐ、メイコ女王様なんかに。大人準備も大事~。メンバーだけじゃなくってさ、友達とか、先輩でも良い。それもお勉強だ」