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鳥籠の番(つがい) 3

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そして、そこにいくつも華を咲かせると、ゆっくりと下へと唇を這わせていく。
「あ…シャア…」
胸を飾る尖を唇に含まれれば、直ぐに固く立ち上がり、アムロは小さく声を上げる。
シャアの愛撫に翻弄され、蕩けさせられながら、そこから伝わる自分を求める心に歓びが込み上げる。
『シャアが俺を求めてくれている…』
アムロはシャアの柔らかな金髪に指を絡め、「もっと」と強請る。
『もっと…俺を求めて…俺を…貴方にものにして欲しい』
その想いが伝わったのか、シャアが顔を上げ、嬉しそうに微笑む。
「アムロ…」
「シャア…俺を…全部貴方にあげるから…貴方が欲しい…」
「ああ、私も君に全てを捧げよう…」
どちらとも無く唇を寄せ合い、重ねていく。
互いを求め合うように…。


翌朝、シャアは腕の中で眠るアムロの寝顔を見つめ、優しく微笑む。
昨夜、顔を赤く染め、瞳を潤ませながら「好きだ」と言ってくれたアムロに愛しさが込み上げた。
そして、「マスターだから好きなのか」との問いに、「違う」と即答してくれた事に歓びが溢れた。
今のアムロに過去は無い。
一年戦争で何度も戦い、ララァを間に挟んでの遺恨もあった。
エゥーゴでは共闘していたとはいえ、過去の蟠りが無くなった訳では無い。
それに、エゥーゴから姿をくらました私を“アムロ”は軽蔑していただろう。
しかし、今、ここにいるアムロはそんな事も知らず、自分を受け入れ、好きだと言ってくれる。
勿論、マスター登録によってマスターに従順になるように操作されている為の言葉かもしれない。
けれど、アムロから伝わる心は今の“アムロ”にとっては本物なのだろう。
だから、心のままにアムロを求めた。
そしてアムロも、ダカールで半ば無理やり抱いた時とは違い、心から自分を受け入れてくれた。
「アムロ…君をもう手放す事は出来ない…。私と言う鳥籠の中に君を一生閉じ込めて離さない。だから…私を…傍で支えてくれ…」
そっとアムロの柔らかな癖毛を撫ぜる。
「私は…ネオ・ジオン総帥として、己のなすべき事をせねばならん。その為に、人として許されぬ行為をしようとしている。その業を…一緒に背負ってくれ…」
そこまで言って、フッと笑いが込み上げる。
「鳥籠の中に居るのは私も同じか…ネオ・ジオンという鳥籠から出る事もままならない…」
周囲を見回し、豪華な内装の室内を見つめ、溜め息を漏らす。
「それならば…この鳥籠の中で二人で生きて行こう。番として、共にここで生き、死んで行こう…」
腕の中のアムロを抱きしめ、その癖毛に頬を埋める。
「君とならば…鳥籠の中も悪くない…」


◇◇◇


あるホテルの一室で、男が端末に向かって通信をしている。
「よう、久しぶりだな。今は地球か?ブライト」
モニターの向こうでは、かつての戦友であり上官だった男が疲れた顔をしてこちらを見ている。
「ああ、お前も元気そうで何よりだ、カイ。ハマーン・カーンが死んだ事でネオ・ジオンとの抗争も一応落ち着いたからな。上の命令で降下した」
「それで連邦お偉方に会って、うんざりしたって感じだな」
「…まぁな…」
「エゥーゴはやっぱり、そのまま地球連邦軍に戻るのか?」
「おそらくな。クワトロ大尉が居ない今、あの組織をまとめ上げる人間がいない」
「クワトロ・バジーナか…。あの男、生きてるぞ」
男、カイ・シデンがモニター越しにブライトを睨み付ける。
「…だろうな。アムロが生きていると断言していたから、そうなんだろう」
「アムロか…あいつの行方だが…悪いな。まだ掴めていない。」
アムロはカラバで活動中、負傷した際に連邦に脱走兵として拘束され、そのまま行方不明だ。
おそらくニュータイプ研究所に連れて行かれたと思うが、どの研究所なのか、今どうしているのか全く消息が掴めないでいた。
「俺の方でも当たっているんだがな…全く情報が入ってこない。ただ、昨日会見した政府のお偉方が気になることを言っていた」
「気になること?」
「ああ、ジュドーがお偉方を殴ろうとしてな、なんとか俺を殴らせて事無きをえたんだが、その時に高官の一人が “ホワイトベースの元クルーは相変わらず厄介事を持ち込んでくれる”と漏らしたんだ」
「ホワイトベースの元クルー?今、連邦と関わっている奴なんてブライトとハヤト…は戦死したんだったな…残るは…アムロか」
「ああ、もしかしたら、アムロは自力でニタ研から脱出しているかもしれん。軍としては、また脱走されたなんて公に出来ないから隠匿しているだけで…」
ブライトの言葉を聞き、カイは顎に手を当てて考える。
「…確かに…いくらニタ研を調べてもアムロの痕跡が掴めない。となれば既にアムロは居ない可能性は高い。しかし…」
「しかし?」
「脱出したのなら、ブライトなり俺にコンタクトを取ってきても良くないか?」
「確かにな…」
更に考え込み、カイが重い口を開く。
「なぁ、ブライト。強化人間達は…皆、記憶操作をされていたと言っていたな」
確かに、ロザミア・バダムはカミーユを兄と思い込まされていた。それに、会った事は無いが、カミーユが地球で接触したフォウ・ムラサメという少女も記憶を失っていたらしい。
「まさかアムロも…!?」
「可能性はある。奴らとしてはアムロ程のパイロットを手放すのは惜しい筈だ。ネオ・ジオンはアクシズの勢力は制圧出来たが、まだ他の派閥や反連邦の組織はいくらでもある。いざという時に使える兵士は欲しいはずだ。それも、ニュータイプであり、単騎で艦隊を殲滅出来る兵士は…」
ブライトはかつて一年戦争でのアムロの戦績を思い出す。
ガンダム一機で、何隻もの戦艦を沈めたその戦績を…。
「確かにな…」
「しかし、既に脱走歴があり、連邦に反感を持っているアムロを従わせるのは難しい。それに、あいつがいつ敵勢力に回っちまうかとビクビクしてる。だから過去に退役もさせずにシャイアンに幽閉した」
「ああ…そうだな…」
「ならば、従順な兵士にすれば良い。そう思っても不思議はないだろう?」
「しかし、それはあまりにも倫理に反する」
「倫理?そんなもん、今更だ。あいつが戦後にニタ研でどんな扱いを受けてきたか知ってるだろ?それに強化人間はその強化処置により精神的に不安定になる。それを安定させる目的もあって記憶操作をする。そして、連邦で行われていたかは知らないが、ネオ・ジオンの強化人間は“マスター登録”という処置を施され、マスターとなる人物に従順に従うようマインドコントロールされていた。エルピー・プルもそうだっただろう?」
確かに、プルもプルツーもグレミー・トトをマスターと呼んで従っていた。
途中でプルは何故かジュドーをマスターに切り替えてしまったが、そのジュドーには従順だった。
「マスター登録…。確かにな、プルにはそう言った処置がされていたと思う」
「実はこの処置には記憶操作同様、被験者の精神安定の目的もある。マスターに従う事によって拠り所を得て、能力の方向性を定めるんだ」
「まさかアムロにもこの処置を!?」
「あくまで可能性だ。上手いこと逃げて、今は何処かで様子を伺って、俺たちとの接触も避けているのかもしれない。もしくは何処かの組織に拉致されたか…それとももう…」
「カイ!」
作品名:鳥籠の番(つがい) 3 作家名:koyuho