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梅嶺 四

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行軍が始まったあたり、梅嶺に来る恐怖と、記憶と、林殊の義侠心と、、、長蘇の心の中では葛藤し続けたのかも知れない。
だが来てみれば、懐かしさが勝ったのだ。
長蘇にとっては、赤焔事案の整理が着きつつあるのだろうか。
あの大惨事に、中々折り合いが着くものでは無いだろうが。蓋をして、目を背ける事が、出来るようになったのかも知れない。
長蘇は、前に進もうとしているのだろう。
「そうか、、、。私は武人では無い。そういう感覚は、私には分からぬ。
何かの焦りから、無理をしているのでなければ、良いのだ。」
どうしてやることも、藺晨には出来ない、それは長蘇の問題だ。
━━━梅嶺に来て、はしゃいだというのか、、、。━━━
思っていたよりも、単純なものだった。
ここ数日、天候も戦況も、穏やかな戦の狭間。
長蘇はこんな時ほど、何かを仕掛ける輩なのだ。
何気ない行動すら、、、もっとなにか、長蘇は、別の事を企んでいるのではないかと、藺晨はそう感じたのだ。
これ迄、幾度も、大渝軍との闘いはあった。
衝突はそう大きなものではなく、どちらが勝ったとも言えない終わり方をした。
もうじき厳冬に入るのだ。大きな戦になって、長期戦になるのは、粱軍としては望まないが、寒さに慣れている大渝としては、長期戦に持ち込みたいのかもしれない。
長引けば、大渝にも勝機は出てくるのだ。
初戦で粱軍は砦を奪い返し、防衛線を元に戻した。
そして、その後は全軍が衝突する大きな戦いもなく、大渝の攻撃も無く、ここ数日は、この砦ものんびりしたのものだ。
このまま、この調子で、穏やかに冬を迎えるのではないか、、藺晨はそう思っている。
━━━戦の勝敗がつかず、長引いているが、人が死なずに、何よりだ。
だが、長蘇はそれを、憂いて居るようにも見える。
長蘇は戦をしたがっているのか?、、、。
元々私は、武人の考えなぞ分からぬのだが、武人の顔の長蘇は、更に複雑でさっぱり分からん。
長蘇は、粱の大軍を率いるのだ。私に読まれる様では、務まらんのだろうが。━━━


「藺晨、ここ数日、体の調子が良い。
一度、軍議に出ておきたい。人から報告を受けるだけでは、よく掴めなくてな、、、。」
「軍議か、、、。」
「どうだ?、、。」
「ダメだと言っても、どうせ出るのだろう?。、、どれ、脈を診せろ。」
長蘇は腕を上げ、藺晨はそっと指先で触れて、脈を探る。
「、、、良くはない。」
言葉とは裏腹に、藺晨は微笑んでいる。
状態の悪さを、自覚させたく無かった。
━━━、、、、悪い。
よくこれで動いていれる、、、。━━━
最後まで、武人林殊でいようとしているのだろう。
━━━そうさせて、やるべきなのだろうか、、。━━━
藺晨の迷いは拭えない。
━━━先は、、、、ないのだ、、、。
長蘇が一番分かっているのだ。━━━
終わりは終わり、いつもなら面と向かってそう言える。
━━━だが、知ってしまった。
林殊の顔を、、、、林殊の心を、、、、
、、、、、、、林殊の青春を、、、。
今ならば分かる。廊州にいた時も、金陵にいた時も、そしてここでも、長蘇は常に、林殊だったのだ。━━━
長蘇は、林殊のまま、終わりたいと思っているのだろう。
だが、生かしてやりたいという、藺晨の欲。
長蘇の生を切望する者は多い。藺晨もその一人だった。
「、、、、少しだけなら、、。軍議を聞くだけだ。報告を聞いて、後は蒙摯達に任せろ。、、、それならば、、、、。」
長蘇の気持ちに添えるように、藺晨は口から言葉が出るに任せた。
藺晨には、これ以上の善断は無かった。
「十分だ。」
「いいか、少しでも調子が変わったら、席を外すのだぞ。
私が付き添っている。私に言え。その場を繕ってこの部屋に戻るから。」
「ん。」
「お前が倒れることを、皆、恐れている。分かっているな?。蒙摯達を困らせるなよ。」
「頼りに致します、主治医殿。」
長蘇が軽く頭を下げる。
「その場で倒れてみろ!!、いいか!!、将軍等が並ぶ前で、私がお前を抱き上げてここ迄運ぶぞ!!。」
「それは御免だ。」
「だから絶対に無理をするな。倒れたら、私が、長蘇の漢としての名声を落としてやるからな。」
「分かった、もう分かったから。」
「お前が素直にハイハイ聞く時は、別の事を考えてるからな、全く、病人のくせに、油断も隙も、、、、」
そう言いかけた時、飛流が部屋に飛び込んでくる。
三つどころか、黒い壺ごと持って来た。
黒い壺は、飛流の両手に収まるほどの大きさで、口には紙が被さり紐で結われて、封をされている。
「はい。」
藺晨に、壺を差し出す飛流は、上機嫌だった。
「機嫌が良いな、飛流。中身が何か、分かったか。」
「うん。」
「匂いか。」
「うん。」
壺の中は干した果物だが、しっかり封をしているのだ、中々匂いは嗅ぎ取れないのだろうが。
飛流は封に、鼻でも付けて嗅ぎ取ったのか、想像して、長蘇は笑った。
藺晨は封を解き、中の干した杏を一つ摘み、飛流に渡す。
貰うと直ぐ、飛流は口に入れた。
口の中に、甘さと酸味が広がる。
金陵では、様々な点心や果物を食べる事ができていたが、梅嶺の軍営の中ではそうもいかない。甘い物などは貴重だった。
蘇宅の吉さんが持たせてくれた飛流の好物も、梅嶺のはるか手前で、食べ終わっていた。
飛流は、杏を満足そうに味わっていた。
「美味いか、飛流。」
「うん。」
そして飛流は、藺晨の前に手を出す。
「もう一つ。」
「馬鹿を言うな、飛流には一つだけだ。薬を飲んだ後に長蘇が食べるのだ。飛流にはもう無いぞ。」
「え──っ、、、、、もう一つ!!。」
飛流には久々の味が、余程、美味かった様で、物足りなかったとみえた。力ずくで、藺晨の壺から奪い取ろうとしていた。
「無い、、、コラ!、、やめろ飛流!。」
壺を巡っての攻防戦。
武功では藺晨がはるかに上だが、必死な飛流にたじたじだ。
飛流は、何としても食べたいのだ。
「駄目だ!!。こら、止めないと、本気を出すぞ。」
「、、、、。」
攻撃は一旦止んだが、飛流は納得した訳では無い。
隙を見て、直ぐにまた、奪いにかかるだろう。
「長蘇、薬を飲んだらこれを食べろ。」
そう言うと、急いで藺晨が干し杏を二つ、長蘇の手の中に握らせる。
握らせるのが、終わるか終わらないうちに、また、飛流が手を出してくる。
「よせ!、飛流。なんて聞き分けのない、、、。」
藺晨は飛流を躱しながら、部屋の扉まで辿り着く。
「飛流、蘇哥哥に薬を飲ませたら、もう一つやるぞ。」
そう言うと、部屋から退散し、扉を閉めた。
ぱたぱたと遠ざかる足音が聞こえた。
長蘇は笑っていた。
悔しげに飛流が、だんと、足を一つ鳴らす。
そして長蘇の寝台の側に座ると、枕元に顔を臥した。
長蘇が飛流の頭を撫でながら、話しかけた。
「仕方ない、、蘇哥哥が薬を飲んで、飛流が食べられるようにしてやるか、、、。」
飛流が顔を上げる。
もうそれしか道は無い。
長蘇は飛流に微笑みかけると、薬の器を口元まで持っていく。
「、、、、。」
独特な匂いが嫌なのか、長蘇の手は、そこで止まって飲もうとしない。
「飲んで、哥哥!!。」
長蘇はいつまでも躊躇して、飲もうとしなかった。
飛流は痺れを切らしている。
「哥哥〜〜〜!!。」
作品名:梅嶺 四 作家名:古槍ノ標