はじまりのあの日21 ミクの誕生日
今度はウットリしながら運ぶリリ姉。と、入れ違いに、サキイカをしゃぶり、500MLの缶ビール片手にやってくるテト姉とめー姉
「おい、重音、メイコ。おまえ達、も~ヤって(飲んで)んのか。サボってんじゃない」
「にゃっはっは。い~じゃね~か、ハレの日だ。サボじゃね~から、来てやってんだぜ」
苦笑い、頭を二度、横に振る紫様
「ったく。ま、飲みながらでいい。つまみを運べ。俺がこさえた、スモークサーモンのカルパッチョが冷やしてある。カイト作のスライス玉葱ツナマヨ和えも。メイコ、こいつも良いつまみにもなるんじゃない」
「お、ナイス、かむい」
「あら~、嬉しいわ、カイト」
さっそく冷蔵庫から取り出す二人、と
「うん、こりゃ美味い」
「ビールにもワインにも合いそうね~」
おつまみを摘まみ食いして、缶ビールを一気飲みする、姉二人
「摘まむんじゃない、とっとと運べ」
「命令すんな。快感じゃね~か」
「メイコさん、油揚げ炙っておきました~。おつまみにどうぞです~」
「あら、ピコ君もありがと~」
順調に料理達が出来上がってゆく。開宴が近づくとともに、鮮度命料理の調理へと移行
「ムウ、神威殿、スバラシイホーチョウさばき。さすがSamurai。カイト殿も、シェフ以上でゴザルナ」
アル兄がベタ褒めする、彼とカイ兄の料理。賞賛されると、なぜだか、わたしも、鼻が高かった
「アル、サムライと包丁はカンケ~無いじゃない。レン堅梅干しとって」
「はいよっ。包丁侍、がく兄見参っ」
梅干しのタッパーを渡し、ポーズをキメる片割れ
「っはは~それ、久しぶりに聞くじゃない。大根細切り、レタスちぎって、スライスキュウリ。水菜、大葉ちらして、しあげにゴマ、梅肉、かつお節、決め手の九条ネギ」
大皿に、美しく盛り付ける彼
「サラダに梅肉の発想はなかった、さすが殿」
「旨いぞ~。これだけで、ドレッシング要らずじゃな~い。よし、完成。運んでくれ、アル」
「ショウチ、ミク殿が喜ブデゴザロウ」
ドレッシング要らずの彼サラダ。市販の調味ダレで味をつけるよりより、ずっと美味しい。梅を加えるレシピはこの日、初めて知った。大皿二つ、両手持ちで運ぶアル兄。煮物を温め直すカイ兄。発泡スチロール、氷の中から魚を取り出す彼
「魚って事は、ルカが買ってきた物だね、殿」
「わたしまだ、丸ごとのお魚は捌けないな~」
「ふふ、リン、今度教えてあげようじゃない」
かつては、包丁さえ握らせて貰えなかったわたし。あの日は既に、お料理要員の第一戦力『教えてあげよう』は、彼が認めてくれた証。気分が急上昇。天に昇るとはまさに、なカンジで
「ほんとっ、がっくん、絶対だよ~」
「二言はナイじゃな~い」
捌き出す彼。カイ兄は、アジフライ用のフライヤーをセット。わたしはコロッケ用のパン粉を用意。再び各々方、作業に没頭。お料理屋さんの舟盛りよろしく、船に造られたお刺身。出来上がった時に来たのは
「お、ルカ、タイミング良いじゃない。刺し盛り造ったぞ。氷敷いてあるから、運んでほしいじゃない」
お刺身大好きルカ姉。鮮度を保てるように、氷、その上にザルを敷いてツマを載せたもの。瞳の輝き倍の倍、ルカ姉
「ありがとう、神威さん。ぁの~まぐろ―」
「リンが上手に造ってくれたじゃない。これ、相当いいヤツなんじゃない。大間産なのか」
褒められて光栄。わたし、Vサインを示す
「まあ、うれしいですわ、リンちゃん。魚市場まで行ったカイがありますわ~。いえ、神威さん。大間の旬には、まだ早かったので。大船渡産のものです」
「さすがの鮮魚眼じゃない。すんごい、中トロ。ああ、冷蔵庫の中の、わさびと醤油も忘れるんじゃないぞ~」
「あ、ルカね~さん、お寿司も上がったよ~」
お寿司も完成。ルカ姉、握ってくれたMikiちゃんに、熱烈ハグをお見舞い。鼻歌交じりに運ぶルカ姉。このあたりから次に次にと、入れ違い
作品名:はじまりのあの日21 ミクの誕生日 作家名:代打の代打