はじまりのあの日22 違和感の正体と告白
目を剥くめー姉、ややわたしに咎の視線を向ける
「リン、本当よ、気を付けなさいね。場合によってはリンの迂闊さで、神威君を傷つける事になりかねないのよ。心も、経歴も―」
「メイコ、良い、俺のことは。あの時も、俺が付いていけば、少なくとも部屋まで無事じゃない、リンは。それで構わない」
複雑な笑みの、彼と姉。観ると、カイ兄、アル兄、ルカ姉も、同様。めぐ姉までも困り顔
「貴男は本当に御館様なのね、リン専用の。リンの事なら、傷つくことさえ厭わない。だからこそ、もう一回だけ、繰り返すわ。リンの迂闊さで、神威君を傷つける事になりかねない。それだけは覚えておいて」
めー姉、腕組みしながら、優しく告げてくる
「こんな所も惹かれた所かな、リンが。過保護なんて安っぽい言葉じゃ、片付けられないね。殿、がんばって、ね。武士道、かなぁ、本当に殿様だ、殿って」
「な~んか運命的~。応援するよ~」
カイ兄、優しげに、悲しげ。ミク姉、撮影再開
「うん、カイ兄、大好きなトコロ~。がっくん、ありがとう。好きスキ、大好き。わたし今、すっごく幸せ~。ん~ア・イ・シ・テ・ル~」
「俺こそありがとう、リン。楽しいじゃな~い」
彼に、思いっきり抱きつく。撫で返してくれる紫の彼
「あ~ぁ、面白くないぜ、いちゃつきやがってよう。まぁ、リンたんが成就したってトコロは祝ってやる。かむぅ~い、何かあったら、何時でも『突き出して』やるぜっ、うけけけけ」
指をワキワキ黒テト姉。でも、祝ってくれているのは確か。その言葉を聞いた後、立ち上がってめー姉が寄ってくる。手にはショットグラスとキツ目のお酒。わたし達、いや、紫の彼を観て、真剣な顔で告げてくる
「でも神威君、覚悟が要るわよ。しばらくは、辛いこともあると思う。アネキの物言いはどうかと思うけど、実際ね。貴男なら言う必要ないと思ってるけど。リンはまだ―」
「大人じゃない。って言おうとしたんじゃない、メイコ。分かってる、俺は大人だ、歳だけは。8歳25歳じゃないけどさ、14歳31歳だって、まだ反則だ」
その言葉を肯定するように、切なげな顔をするめー姉。さっきもそうだった、姉は言っていた『超えなきゃならない山は多い』と。紫様の笑み、切なげな、笑み
「―。神威君、相当つらいと思うわよ。覚悟、して『この先』どんどん辛くなると思う」
手渡すめー姉、お酒を受け取る、紫の彼
「だから今、その覚悟決めようじゃない。ありがとうな『酒(景気づけ)』」
グラスの中身を一息に。空になった杯を勢いよくテーブルに置くと
「ってことで、ちょっと外す。リン、つきあって」
さらに頭を撫でてくれた後、立ち上がる彼。丁寧な動作で下ろしてくれる
「ん、がっくん。めー姉、どうしたの」
「ふふ、ちょっとね。でも、わたしはそれを含めて応援してる。乗り越えて見せて、神威君」
彼自身、きっと変化を感じたから。わたしの甘え方に。この甘え方はまだ早い。その変わり方、まだ受け入れられない。そう彼が覚悟を決めたこと、わたしに言うために。姉兄結婚式の夜わたしは夢を観た。わたしはあの夜、8歳に戻って『今』と変らない、彼と歌う、夢を観た。それは心が感じていたからだろう。彼との『絶対的な差』を
「ありがとう、気合いが入るというものじゃない。やっぱり素敵な女性(ヒト)だな、メイコ女王陛下。さ、リン」
「応援するわ、わたし達の御館様」
手を引いてくれる彼、めー姉、悲しげな笑顔。視界の端に入った、めぐ姉、泣きそうな顔で勇馬兄にしがみつく。その勇馬兄、映画で観たんだろう、海の『隊』式敬礼、大まじめ。IA姉、この時以上に悲壮な顔は、今のところ観たことない。手を引かれ、歩く中、アル兄と大リーグ式タッチ。カイ兄と軽いハグ。みんなから応援される彼
作品名:はじまりのあの日22 違和感の正体と告白 作家名:代打の代打