はじまりのあの日22 違和感の正体と告白
「あは~、リンちゃん、アニキの奥さんケッテ~イ(決定)」
『神威の妹』から『神威の嫁』に昇格するわたし。カル姉のお姉発言が嬉しい。Mikiちゃんの『嫁決定』に、わたしの心歓喜
「まだちょっと気が早くない。俺がリンに捨てられる可能性もあるワケじゃない。ローファー談義から、えっらい所にWarpOut(ワープアウト)したな、話の矛先」
少し困り顔の紫様。それは、わたしの事を考えての言葉。わたしの将来を束縛しないようにと。後から聞いたこと、本当に優しい人。ただ、罰当たりのわたし、そんな思慮さえ読み取らず
「もう、がっくん、わたし、がっくん捨てたりしないもんっ」
言って、首にすがりつく
「はは、ごめんごめん。まぁ、将来はゆっくり考えて。それこそルカが言った。中華の街で、俺も言った。靴の言葉みたいに、素敵な道を歩けるように」
撫でてくれながら、彼は応えてくれた。それが嬉しくて
「うん、がっくん。でも、素敵な道は『がっくんと一緒』に歩くんだよ。あ、ローファーって言えばね、がっくん、とってあるよ、あの靴も~っ、けほっけほっ」
「リン、大丈夫、ほ~ら落ち着いて~。深呼吸~」
背中をさすってくれる彼。わたしの事、とことん気遣ってくれて上機嫌。わたし、首から手を離し、再び横抱き状態
「~っはぁ、ありがとうがっくん。なんか喉渇いちゃった」
「大泣きしたからじゃない、はい、コレ飲んで水分補給~」
りんごジュースを手渡してくれる。蛮勇告白の緊張と、その後の大泣き。やや脱水気味らしい、喉が渇いてた
「で、で、リ~ンちゃん、とってある靴ってな~に~」
「やぼ(野暮)さんでも気になります~ぅ」
Mikiちゃん、ピコ君、アホ毛を揺らして楽しそう。紫の彼『靴』の単語で、思い至って
「靴、ああ、昔贈ったアレのことじゃない。はは、もう履くことできないだろうに」
「だって、捨てられないよ。がっくんがハジメテ贈ってくれた、思い出の靴だもん」
「ぁ~、また知らないぉ話しだ~、するいよ~ぅ」
IA姉、ほっぺがリスみたい。不満げ全開、始まりの六人、いや、ルカ姉は知っている。誕生会の時、思い出話で話したから。それ以降、話すことはなかったけれど。神威の姉には古都でわたし自身が話した。だから知っている
「あのね、IA姉、9歳の誕生日。がっくんが来て、初めての鏡音の誕生日。みんなね、忙しくて、忘れられちゃった事があったの」
「子供だったよな~、リンとぶんムクレちゃってさ~。したら、がく兄だけは覚えててくれて」
片割れが眉を下げつつ、反省の弁。でも、誕生日、覚えてくれている方が嬉しいのは確か
「大事な双子の誕生日、忘れたらダメじゃない。で、靴と簡単な料理買って帰ったら、ふてくされてたじゃない、リンレン。ローファー贈ったら、うれし泣きまでしてくれて、さ」
思い出話で、一度話しがそれかかる
「あの日も、救けられたわね、神威君に。でも、話しがそれてるわよ~。ふふ、大事な双子、リンがどうして好きなのかしら、神威く~ん」
「レンも可愛がってたけどね、殿は。でも、リンには輪を掛けて過保護な理由が知りたくないかな、み~んな~」
メイカイ夫婦が軌道修正
「わ~たしも気になる~、がくさん、ど~して~」
「ワタシも気にかかりますわ~、神威さん」
ミクルカ姉の、レンサンドイッチ、この日爆誕『おまえ達二人の理由も気にかかるじゃない』そうつぶやき、一呼吸。わたし、多少、身構える。と、わたしの頭に手を置いて
「さっきまで話してたのがほとんど理由じゃない。細かい事は解らない。きっとこれから、少しずつ解っていくんだと思う。でも、これだけは確かじゃな~い」
さらに焼酎を含んで一呼吸、あえて、勿体を付ける彼。したり顔で微笑んで
「世界で誰よりリンが好き、この気持ちは俺が世界一。イヤ、平行世界だの何処世界だの、三千世界だの含めても、か。誰にも負けない、俺が一番、リンを好き。さっきリンが言ってくれたから、今はこう思ってる『一生、一緒に生きていきたい』って。側にリンがいないとか、考えられない。俺、重音が言うような『少女趣味』じゃないけど『リンコン』は確かじゃな~い」
もの凄い歓声、口笛、指笛、悲鳴とため息。それが祝福で有ることが幸せ
「オノロケゴッチ~。じゃ、リ~ン、おにぃの何処が好きなん~っ。ま、ウチらはちょっとは聞いてるかもな~。京の都でさ~ぁ」
「ぁ、ずる~い、リリィちゃ~ん」
「わ~ぁ、ぼくも聞きたかったです~ぅ」
リリ姉、先生に納まって幸せそう。IA姉、ちょっと不満。ピコ君は目が燦々輝く
「ん、ぅ~ん、解んない~。やっぱり全部。全部好き、優しいところも、声も全部。わたしを心配してお説教とか、不機嫌、治してくれたりとか、ぜ~んぶ『がっくん』が好き。膝の上も、お休みの魔法も、わたしを一番可愛がってくれることも。わたしも同じなのかも~、会ったあの日に好きになっちゃった。大好きお兄ちゃん。その好きがいつの間にか変ってたの『愛してる~』に」
周りの温かな視線が、もはや気にさえならない
「二人で贈り物、渡しあった時、わたし、すごくドキドキした。今、何でそうだったか解った」
「俺も同じ、実は相当トキめいた。今解ったじゃな~い」
彼と二人、微笑み合う
「え~なになに~、贈り物って。そういえば『お休みの魔法』も何~リンちゃ~ん」
「コレハ興味深い話題でゴザル。神威殿ハ殿様兼務のSorcerer
(魔法使い)でゴザッタカ」
Mikiちゃん、アル兄、ニヤニヤで訊いてくる。周りからのニヤケが半端ない。嫉妬されず応援される。どれだけ幸せか
「古都でね、カンザシくれたの、がっくん。紅と白、椿のカンザシ。めぐ姉、IA姉に手伝って貰ってね、二人だけになって。わたしもがっくんに、いつものお礼、したかったから~。優しくしてくれて、可愛がってくれて、ありがとうって、お礼の贈り物。きっとあの日、もうがっくんのこと大好きだった~」
「ああ、そうだったのか。それで別行動したんじゃない。めぐIAのリアクションの理由も解った。俺にくれたのはループタイ。刀の鍔がデザインの」
めぐ姉、IA姉以外のメンバー、思い至って納得。腑に落ちた顔で声が上がる
「じゃぁ、お休みのまほ~は~、に~さ~ん」
「お休みリン、イイ夢を、ってそれだけ。それ言うだけじゃない。だけどリン、それだけでよく眠れるらしいの。まぁたまに、おでことオデココツン。その程度のMagic、リンだけがかかる魔法」
お休みの魔法の正体を告げる彼。やや困り顔のイタズラ顔、眉を下げる
「わ、ステキです~ぅっ。大好きな人から、イイ夢なんてロマンチック~」
「そっか、リンがここ一番に付けてるもんな、今まで気付かない、おれたち間抜け~」
「ッス、リンがココイチに付けてんのって、全品ガクサンがプレゼントした品っすね。グ、グミサン、今度指輪、贈るス」
ピコ君、乙女顔で両手を組む。レン、やられたって苦笑い。勇馬兄、話題に格好付けてアピールしてみる
「っへへ~勇馬~ぁ、便乗アピ(アピール)じゃね~。あんま格好良くね~ぞ」
「漢気を魅せるには、又別の機、話題が必要でゴザロウ、勇馬殿。マダ精進が必要でゴザルナ」
作品名:はじまりのあの日22 違和感の正体と告白 作家名:代打の代打