二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

鳥籠の番(つがい) 6

INDEX|2ページ/5ページ|

次のページ前のページ
 

それがスペースノイドの未来を切り開く為に必要な事だとしても、アムロはできる事ならばシャアにそんな道を歩んでは欲しく無かった。

ふと、アムロの脳裏に“人身御供”と言う言葉が浮かぶ。
いつだったか、同じように苦しんでいた男に、そんな言葉を発したような気がする。
“人身御供”…酷い言葉だ。
けれど、自分もその男と一緒にその重みを背負おうと思っていたからこそ、出た言葉だったと思う。
たった一人に背負わせるつもりなど無かった。
しかしそれを、自分はちゃんと伝えただろうか…。
「アムロ?」
思考に耽るアムロに、シャアが声をかける。
「え…あ、はい」
「どうした?」
「いえ…」
少し目を伏せるアムロの頬を、シャアが両手で包み込む。
そして、顔を上向かせ、視線を合わせる。
「アムロ…、私と共に生きてくれ…そして、私を支えてくれ」
切実なシャアの願いに、アムロはコクリと頷く。
「はい、俺は…貴方のものだから…ずっと貴方の傍にいます…。全ては…貴方の望むままに…」
アムロの言葉に、シャアは一瞬眉を顰めたが、直ぐに優しい笑顔を浮かべ、アムロの唇に自身の唇を重ねる。
「ああ、君は…私のものだ…」
「はい。マイマスター」
アムロはそんなシャアの背に手を回し、その少し頼りない背中を抱き締める。

『ああ…これは、シャアが“ ”に求めたものだ…今の俺はきっと“ ”の代わりなのだ…』

何故だか分からないし、誰の代わりなのかも分からないが、アムロはシャアを抱き締めながら、そんな事を思った。


連邦政府の高官達との交渉も終わり、アクシズはネオ・ジオンの物となった。
高官たちは、賄賂の金塊という、目先の欲に囚われ、自分たちがどんなに愚かな取引をしたのか分かっていない。
ネオ・ジオンの上辺だけの停戦を信じ切っている。

シャアは総帥服からスーツに着替え、ホルストとナナイに先にレウルーラへ戻りように告げる。
「私はアムロと少しその辺りを馬で走ってくる」
「大佐、危険な事は…」
心配するナナイに笑顔を向ける。
「少し気晴らしの散歩をするだけだ、それにアムロを護衛に連れて行く。ギュネイも空から護衛しているだろう?」
「それはそうですが…」
アムロもスーツに着替え、インカムを装着する。
「ナナイ大尉、何かあれば直ぐに連絡します」
「…分かりました」
「大佐、お気を付けて」
「ああ、すまないな。行ってくる」

二人は馬に跨ると、ゆっくりと林の中へと入って行く。
「そう言えばアムロ、君は馬に乗れたんだな」
「…そうですね。記憶は有りませんが、身体が覚えているようです」
馬の手綱を握り、アムロは馬に乗れている事に今更ながら気付く。
シャイアンでの幽閉中、娯楽の全くない中、屋敷の前の持ち主の趣味だったのか、厩舎で馬が飼育されていた。
屋敷の敷地内のみという制約はあったがアムロは乗馬を楽しむ事が出来た。
当然、それまで乗馬などした事がなかったが、元来、運動神経や体幹の優れたアムロは、少しの指導で直ぐに乗りこなす事が出来た。

「少し走るぞ」
「はい」
シャアは手綱を握ると林の中、馬を走らせた。
それをアムロが追いかける。
草木の香りと通り抜ける風が心地よく、二人は林の中を駆け抜ける。
久しぶりの開放感に、二人は時間も忘れて馬を走らせた。
暫く走って林を抜け、湖の畔で馬を降りると、二人並んで木陰に座り込む。
「久しぶりに良い汗をかいた」
「そうですね。気持ち良かった」
二人は見つめ合い、クスリと笑う。
そしてシャアはアムロの手に自身の手を重ねると、そっと指を絡める。
「大佐…」
「今は二人だ、名前でいい。それに木陰の下なら上空のギュネイからも見えない」
そう言うと、シャアはアムロの顔を引き寄せて唇を重ねる。
「シャア…ん…」
軽く重ねただけの唇から、シャアの舌がアムロの唇を割り開き、中へと侵入してくる。
それを、戸惑いながらもアムロは受け入れ舌を絡めていく。
「ふ…んん」
互いに貪るように求め合い、アムロの唇の端からは、どちらのものとも知れない唾液が溢れ出し、顎を伝う。
長い口付けの後、漸く離れた互いの唇から、名残り惜しそうに銀糸が伸びてプツリと切れる。
「不味いな、これ以上続けたらここで最後までしてしまいそうだ」
「シャ、シャア!」
流石に良い歳をした男二人が、外で事に及ぶ訳にもいかず、熱くなった身体を必死に鎮める。
「ふふ、私は一向に構わんが?」
「俺が構います!それに誰かに見られたらどうするんですか!?仮にもネオ・ジオンの総帥が!」
「ははは、冗談だ。流石にそのくらいの自制心はある」
「当たり前でしょう!!」
顔を真っ赤にして叫ぶアムロに、シャアはニヤリと笑うと、肩を引き寄せてその首筋に吸い付く。
「痛っ」
そしてゆっくりと唇を離すと、そこに綺麗に咲いた紅い花に満面の笑みを浮かべる。
「綺麗に咲いたな」
「え?あ!こんな見える所に!」
アムロが首に手を当てて叫ぶのを見て、シャアがまた声を上げて笑う。
「大丈夫だ、ギリギリ襟で隠れる」
「本当ですか!?」
「ああ」
悪戯が成功した子供のように笑うシャアに、アムロの顔にも笑みが浮かぶ。
「もう!」
「ふふふ」
二人は暫くその穏やかな時間を楽しんだ。

「さぁ、そろそろ行くか。私達の姿が見えなくてギュネイが焦っているだろう」
「ははは、そうですね。まぁ、彼もニュータイプの端くれです。俺たちの気配には気付いているでしょう」
「そうだな」
二人は再び馬に跨ると、来た道を戻るように林の中へと進む。
すると、その直ぐ近くを一台のエレカが走ってくるのが見えた。


カミーユとジュドーはハサウェイとクエスをエレカに乗せて草原をドライブしていた。
その時、カミーユは林の中から見知った気配を感じる。
「この感じ…クワトロ大尉と…アムロさん!」
カミーユはハンドルを切ると林に向かってエレカを走らせる。
「カミーユ?どうした?」
突然方向を変えたカミーユに疑問の声を上げたジュドーだったが、カミーユの向かう方向から、先日の戦闘でα・アジールから感じたものと同じ気配がある事に気付き、前方に視線を向ける。
「あの時のパイロット?って言うことは…アムロ…・レイ!?」
「それだけじゃない!クワトロ大尉も…シャアも居る!」
「え!?」
ジュドーが林の中に視線を移すと、馬に乗った男二人が見えた。
一人は白馬に跨り、金髪にサングラスを掛けた男。
もう一人は、栗毛の馬に跨った赤茶色の髪の細身の男。
二人もこちらに気付いたのか、馬を走らせ離れていく。
「逃すかよ!」
カミーユはハンドルを大きく切って方向を変え、アクセルを踏み込んでスピードを上げる。
「カミーユ!」
「きゃぁ!」
「わぁ!」
ジュドーと後部座席の二人は、振り落とされないように必死にエレカにしがみつく。
そして、林を抜けたところで羊の群れに行く手を阻まれたシャアとアムロが立ち往生しているのを見つけ、カミーユはギリギリまでエレカを近付けると、ハンドルをジュドーに預けてエレカを飛び降りた。
「カミーユ!」
カミーユはそのまま馬上のシャアに飛びつき、二人は芝生の上を転がり落ちる。
「大佐!」
作品名:鳥籠の番(つがい) 6 作家名:koyuho