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梅嶺 七 ────金陵─────

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将軍達や兵士等が、調子付いて、良い気にならぬかが心配だがな。」
「大丈夫だろう。その辺は蒙摯も将軍等も、引き締めるべき所は心得ている。これ迄、太平であったが、禁軍はいつも『気』が締まり、厳しい所だったと言うぞ。」
「そうだな。梅嶺は持ちこたえられる。
梅嶺に近い、北の軍営二箇所に、兵を集めていてくれたそうたな。景琰に頼まねばと思っていたが、今回は周辺で同時に戦火が上がり、頼みあぐねていたのだが、戦英から、景琰が既に兵を移動させていると聞いた。流石、景琰だ。感謝せねば。」
「南楚は間もなく平定出来る。東海は既に落ち着いた。上手く運べばもう少し送れるだろう。
大々的に派兵しておいた。大渝も兵を増やしているのだろう?。幾らかでも効果があればいいが、、。」
「ふふふ、、、さすがというか、、。」
「当たり前だ、ずっと辺境を平定してきたのだ。それくらい訳もない。梁の皇太子たるもの、その位、動かせなくては。私は飾り物かではないか。
陛下も日に日に衰えが見える。私がやらなくて、誰がやるというのだ。」
「、、、陛下は、、、良くないのか?。」
「年齢から来る衰えなのだろう、、。あの一件から、陛下は母をも警戒し、太医の薬をも疑い、あらゆる者を拒んだが、、、。今は落ち着いておられる。以前よりも穏やかになっだ。」
「そうか、、陛下が、、、。」
感慨深げに、梅長蘇は遠くを見詰めている。
「陛下が、、、無理も無いだろうな、、。」
「だが、小殊、、心穏やかな今、父上は幸せそうだぞ。何か胸の支( つか)えがとれたような、、、すっきりとしておられる。」
「、、なら、、良い。」
体調が思わしくないとは聞こえてきていた。梅長蘇の気掛かりの一つだったのだ。
元は梁帝簫選が招いた事とはいえ、あの誕生日の宴以来、簫選は急激に衰えた。
「分かっている。今、陛下に倒れられては、更に辺境は混乱する。
心配は無い、身体は落ち着いている。
薬もちゃんと飲むようになった。太医が出すが、薬自体は母が煎じている。身体は回復しているのだ。
いずれ、母との蟠(わだかまり)も解けるだろう。」
梁の国政の実質は、全て皇太子になった靖王が取り仕切っている。
冊封されるのを待つかのように、周辺国から一度に攻められた。
靖王は政と軍の腐敗を取り除いている中途にあったのだ。
もしも、靖王もおらず、献王が皇太子のままだったなら、もしも、靖王が王位争いに敗れ、誉王が皇太子になっていたとしたら、、、。この状態をどれだけ収拾できただろうか。
靖王はこれだけの国難に、善処出来ていた。戦さを知る靖王が事に応 (あた)る事は、兄王二人よりは、まだ、幾らかでも希望はあった。
「ふふ、、、。」
梅長蘇が靖王を見て笑った。
「何?、何か可笑しいか?。」
「ふふ、、いや、、、皇宮に閉じ込められて、息が詰まっているのではないかと、、、な。」
「詰まるとも。」
「そうか、、。」
「気晴らしに、有能な官僚と語り、朝政に没頭できる。政の根幹だ。」
「ん。」
梅長蘇との、取り留めのない話が何よりほっとする。
優しげに靖王を見る梅長蘇の眼差しに、もやもやしたものが払われる心地がした。
━━━全てを知っているのだ、格好をつけてどうする、、。━━━
「、、、本心を吐いてしまえば、、、私も、小殊達と共に赴いて、大渝を蹴散らしたかった、、、。」
「私も景琰と共に、戦いたいと思ってる。
ずっと昔からだぞ。
共に馳せ、縦横無尽に大地を駆け巡り、あらゆる敵を蹴散らしたい。
私と景琰ならば、どんな敵をも撃退できる。ずっとそう思っていた。
そうすると、困った事に、いずれ敵がいなくなり、腕を振るえなくなる、、、。」
「ぷっ、、、困ったな。」
「仕方がなかろうな、、、。敵を探しに行くか。」
「それも、良いだろうな、、。
蒙摯や太子府の者達や、、お前の江左の配下の者達と共に。地の果まで、探しに行こう。さぞかし、楽しく痛快な事だろうな、、、。梁はこの先ずっと、安泰だ。」
子供の頃の様な、取り留めのない話だったが、靖王の胸の支(つか)えが溶けていく様だった。
梅長蘇にきっと、『ならぬ、己の務めを果せ』そう言われると思っていたのだ。
梅長蘇だけではなく、戦地に赴いた者達は、皆、靖王の歯痒さを知っているのかも知れない、それがありがたいと思った。
━━━前線に赴いた彼らが、苦労せぬ様に、私がしっかりと後方を守らねばならぬのだな。━━━
「また、共に戦える。必ずな。
私が贈り物をしておいた。程なく分かるだろう。
景琰、これから忙しくなるぞ。こんな所で呑気に、暇を潰して居られなくなる程にな。」
梅長蘇が言う。
言葉の奥に、力強さを感じた。
一人残された訳では無い、寂しくは無いと、、、そう思った。
皆、心は繋がっているのだと。ただ、それぞれの役目と、必要とされる場が違う。
靖王も、分かってはいたが、、、、前線に行けぬ負い目から、前に目を向けられなかっただけなのだ。
戦いの場は、何も戦場だけでは無い。
━━━金陵に戻ったのなら、私の側で支えて欲しいと思っていたが、、、。
私の立場を考え、小殊は断るだろう。
梅長蘇として、朝廷に仕えるのは拒むだろうが、昔も今も、共に梁の行く末を案じているのだ。
その部分は祁王の政の本筋として、林家の志や姿勢に重なる部分も多い。
私が望む政と、少しの擦(ず)れも無い
祁王が目指した政をする事は、小殊が私を補佐するのと変わりがないのだ。━━━
「ん。」
全ての気掛かりが取り除かれたように、晴れ晴れとする。
梅長蘇にもそれが分かったようで、互いの心の不安が、掻き消される様だった。


「殿下、、、そろそろお戻りになりませんと、、、沈様とのお約束に差し障ります。」
城壁への上り口で、太監が声を掛けた。

「そうか、、、分かった。戻ろう。」
靖王は太監の方を向いて、言葉を返した。
「小殊も一緒に行こう。お前に会いたい者は多い。」
靖王は梅長蘇を振り返る。

「!!、小殊??!!!。」
梅長蘇の姿が無かった。
「小殊!!!。」
「小殊!、何処に行ったのだ!!。」
遮二無二、辺りを探すが、何処にも姿が無かったのだ。
もしや、城壁から飛び降りたのではないかと、城壁の内側も外側も、どちらも探した。
何処にも居なかった。

「ここに、、、ここに上がってきた者が居るだろう?。」
大変な勢いで、太監に聞く。
不思議そうな顔をして、太監が返す。
「誰もお通ししてはおりませんが、、。」
「何っ?、、誰も??、。」
━━━私が話していた者は一体、、。
確かに小殊だったのだ。━━━





さらばだ
景琰




一陣の風が吹く。

風が過ぎた後を、靖王の視線が追う。
「小殊!!。」
靖王が着ている、外套が旗めいた。
襟に毛皮の付いた、紛れもない、梅長蘇の物なのだ。
━━━幻では無い。
小殊は、確かにここへ来たのだ。━━━

━━━私の錯覚で無いのだとしたら、、、。━━━

不吉な予感がした。


━━━小殊は、私が心残りだったのだ。
私に、何かを頼みたかったのか?。━━━



何も考えられなかった。

「、、、、殿下?。」
太監が心配気に尋ねる。


「もう少しだけ居たいのだ、、、、、。
大丈夫だ、沈殿の件は忘れてはいない。