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LIMELIGHT ――白光に眩む7

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『ククク』
 魔神柱の笑い声が降ってくる。
「まさか……?」
 エミヤは一つの結論に思い至る。
『……そう、察しの通り、私の本体は、その男だ』
 聞きたくもない答えが返ってくる。ということは、魔神柱へ攻撃すれば、士郎が傷つく。だが、このままでは魔神柱がカルデアに……。
「……くっ!」
 口惜しさに歯噛みする。手も足も出せない。だが、
「熾天覆う七つの円環(ロー・アイアス)!」
 魔神柱への攻撃を防ぐより他ない。
「ちょ、エミヤっ?」
 突然、魔神柱を守る盾を繰り出したエミヤに立香が面食らっている。
「すまない、マスター……」
 苦々しく吐き出した。
 なぜ、こうなるまで気づかなかったのか。
 それに、なぜ、士郎は何も言わなかったのか。
「なぜだ、士郎っ!」
 このカルデアにいる誰よりも士郎の傍にいながら、エミヤには士郎のことが何もわからなかった。
 苦しそうであることは知っていた。何かを堪えているようだということもわかっていた。何かを吹っ切るようにセックスに溺れている気もしていた。
 何度もエミヤを呼び、結局、言葉にせずに終わることが何度もあった。あの時、もっと己が注意深く士郎を慮り、飲んでしまった言葉を引き出していれば、こんなことにはならずに済んだかもしれない。
「なぜ、お前は……、何も言わない……」
 今、そんなことを愚痴っても仕方がないというのに、こぼさずにはいられない。
「エミヤ!」
 呼び声に振り返れば、立香とマシュが駆けてくる。その後ろには、サーヴァントがずらりと居並び、すでに戦闘態勢だ。
 彼らの様子にエミヤはゾッとした。いつでも宝具を展開できる準備段階でいるのが見て取れる。エミヤ一人では防ぎ切れないことは明らかだ。
「ま、待てっ!」
 十メートル足らずの距離をあけて、立香が足を止める。
「待ってくれ、こいつを、」
「エミヤ? なに、どうし……、士郎さんッ?」
「こいつを剥がすまで、待ってくれ!」
「剥がす? どういうこと? 士郎さん、なんで、」
「理由など、わからない。だが、」
 立香が踏み出す。
「エミヤ、とにかく、何があったのか教え――」
「先輩!」
「マスター!」
 魔神柱の攻撃が立香に命中するかに見えたが、マシュの盾に阻まれて事なきを得た。エミヤは、ほっとしたものの予断を許さない状況は変わらない。今の攻撃でサーヴァントたちの気配が明らかに変わり、それぞれの得物を魔神柱に向けている。
 当然の反応ではあるのだろう。彼らがマスターである立香を守るのは当たり前のことだ。カルデアのサーヴァントとして、その行動はエミヤも取るべき行動である。
 だが、エミヤは動けない。
 エミヤは、士郎の傍らを離れることができない。
「エミヤ! これは、どういうことだい! 士郎くんに何が、」
 二人の話を聞きに行くと先に踏み出していたダ・ヴィンチが、近づく前に姿を現した魔神柱の攻撃を躱しながら、滑り込むようにエミヤの許へ辿り着いた。
「ダ・ヴィンチ女史……」
「理由など後回しだ。現状を聞かせてくれ」
 率直なダ・ヴィンチの言葉にエミヤは頷く。
「魔神柱と癒着している。攻撃をすれば、衛宮士郎がダメージを受けてしまう」
「なんだって?」
 ダ・ヴィンチは目を剥いて、士郎と魔神柱を交互に見た。そして、
「マスター! しばし、待機だ! いいね!」
 ダ・ヴィンチが立香に指示を出し、立香がサーヴァントたちを宥め、今にも宝具を撃ちそうだったサーヴァントたちが構えを解いていく。
「エミヤ、士郎くんの様子は?」
「意識はない。何度呼んでも、答えない」
「致命傷、というのでもないね。魔術回路が魔神柱と繋がっている感じだ。ふむ、背中から膨れ上がった魔神柱は、士郎くんの体組織を変換して……」
 ブツブツと独り言ち、ダ・ヴィンチは士郎の状態を分析している。
「ん? エミヤ、彼の左目はどうしたんだ?」
 ダ・ヴィンチは士郎の顔を覗き込み、エミヤに訊く。
「左目? それは、ここに……」
 エミヤは、先ほど手にした士郎の眼球を見せる。
「……戻すんだ!」
「は?」
「早く! その目は、いまだ魔術回路と繋がっていなかったはずだ。したがって魔神柱と、」
 ダ・ヴィンチの言葉をみなまで聞く前にエミヤは理解した。
「これが、士郎の意識を取り戻す術だな!」
 言いながら士郎の顔を片手で上げ、ダ・ヴィンチが左瞼を開ける。そこへ、士郎の左目を押し込んだ。
「士郎! おい! しっかりしろ!」
 肩を揺すれば、ぐらぐらと揺れる頭が不意に意思を持ったように上がる。
「おい?」
 窺うように士郎の顔を覗き込めば、琥珀色の瞳が何かを探すように左右に揺れた。
「士郎、正気に戻ったか?」
「ア…………チャ…………?」
 さ迷う瞳も手も、エミヤを捉えてはいない。
「おい、見えているのか? 士郎、私の声は聞こえているか?」
 頬を軽く叩けば、士郎の目はエミヤを捉えられないようだが、士郎の手はエミヤの腕を強く掴んだ。
「ぁ……ちゃ……」
 エミヤを呼ぶだけで、他の言葉は出てこない。
「お……、お前はいったい、何に、巻き込まれているのだ……」
 苦い思いで吐露すれば、
「……め……、っ、ごめ……」
 士郎は謝罪を口にした。
「なん……、お、お前が謝ることなど、」
 苦しげに士郎は顔を歪めて、何度も謝る。
「士郎くん、とにかく頑張るんだ。必ず剥がしてあげるからね!」
 ダ・ヴィンチが士郎の肩を、ぽん、と叩く。が、士郎は動きの鈍い首を、横に振った。
「おい、何を諦めている、お前は、」
「……は……ゃ、く、……ころ……せ……」
「何を、言って――」
「……ゃ……く…………けし……て……、く……」
 早く殺せ、と、早く消せ、とそればかりを繰り返す士郎に、エミヤもダ・ヴィンチも言葉がない。
「だめだ……、そんなことは、させない」
「そ、そうだよ、士郎くん。君にはまだまだ、働いてもらわないと、」
 二人して励ますも士郎は頑なに首を横に振る。
「ぁ……ちゃ……、は……ゃ……く……」
「そ、そんな……、そんな勝手な話があるか! 消したりしない! 殺したりしない! お前は、ここで、もっと甘えて過ごせばいい!」
「……ぁ……ちゃ……」
 琥珀色の瞳が滲んでいく。玉になった雫がいくつも落ちていった。
「泣くな……、すぐに剥がしてやるから……」
 士郎を引き寄せられないために、エミヤが歩み寄り、士郎の頭を肩に預けさせる。赤銅色の髪を撫で梳き、大丈夫だ、と囁く。
 だが、打つ手は見つからない。
 士郎に剥がしてやると言ったものの、どうすればいいのかなど、この場にいる誰にも答えは出せなかった。



***

「マスター、何をしている?」
「あ、獅子王……」
 ランサーのアルトリアが円卓の騎士たちを従え、カルデアの玄関口を出てきて立香と並ぶ。
「あれは魔神柱。倒さないのか?」
「た、倒すよ、だけどね、まだ、待って。ちょっと、今、まだ、士郎さんがね、」
「シロウ? ああ、あのエミヤの助手のことですね? よい腕をしていた。美味な食事というものは、戦意にも繋がる。彼のような者がいる軍兵は幸せ者だ」
「うん、そう。だから、もうちょっと、魔神柱と引き離すまで待ってもら――」