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LIMELIGHT ――白光に眩む7

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 懐かしさが、胸に痛い。
 もう俺は死んでいるのに、まだ痛みを感じるのか……。
 次々と映っていく俺の記憶。たくさんの思い出と後悔がそこに残っている。過去の修正をはじめてからは、ずっと後悔ばかりが残っている。
 悔しさに唇を何度も噛み切った。握った拳を振り下ろす場所がなくて憤った。それでも辞めなかったのは、あの姿を知っていたから……。
「アーチャー……」
 知ってしまった理想は高みにありすぎて、俺には到底手が届かなかったけど、追いかけているだけでよかったんだ。
 先に結果を見ただけで、諦める理由にはならない。だけど、俺はいつしか諦めることに慣れて、こういうものだと悟ったつもりで、結局、何も掴めずに、何もかもを失って……。
 なんだったんだろうな、ほんと、俺って……。
 キンッ!
「はっ!」
 その甲高い音は、よく知っている。
「剣戟の……音……」
 ぱ、と近くの窓があの光景を映し出す。
 アインツベルンの古城。
 打ち合う干将・莫耶。
 途絶えることのない、剣と剣のぶつかる音、意地と意地を張り合う俺たち。
 そのうちに、古城から剣の突き立つ荒野へと場所を移し……。
「ああ、剣の丘だ」
 俺には至れなかった世界。アーチャーの固有結界。こんなに寂しい光景なのに、どこか俺には懐かしい。
「ああ……」
 もう見ることができないって思ってた。最後くらいその顔を見たいって、思ってた。
 だけど、見ていたら、やっぱり辛くなってしまう。他の窓に行こうとしたけど、どの窓も、アーチャーとの斬り合いを映している。
「なんで……」
 さっきまで、いろいろな過去が映ってたじゃないか。
 なんだって、急にアーチャーとの一騎打ちだけになってるんだよ。
 こんなのは、辛いだけだ。もういい、もう見たくない。会うこともできない面影を追ったところで、救われない。
 剣戟がうるさい。
 耳を塞いで大きな窓へ駆ける。あそこは真っ白だった。あそこには何も映っていなかったはず。
「は……」
 思った通り、真っ白なままだ。ほっとして窓に額を預けた。冷たさは感じない。ここがどういう場所かはいまだにわからないままだけど、俺に体温がないのなら、冷たいとか熱いとかわからないんだろう。
「だけど、寒いなあ……」
 震えてしまうのは、寂しいからか。
 もう、寒いって誤魔化さなくてもいいのか。
「あっためてくれよ、ここは、すごく、寂しい……」
 言えなかった言葉をこんなところで吐いたって、意味がない。
 コ……、ツ、ン。
 今、何か聞こえなかったか?
 剣戟の音に紛れて、今、確かに何か?
 コツ、コツ、コツ……。
 まるで一歩一歩確かめるように歩く足音みたいな……。
 思い切って振り向いてみる。暗がりに何かいる、ような気がするけど……。
 コツ、コツ、と二歩進んだ足が見えた。
 なんだ、いったい。
 なんか、映画とかで見た気がする。逃げ道のないところに追い詰められて殺される、とか……。
 そんなこと思い出したりするから余計に恐怖心が煽られてしまった。
「だ、誰、だ?」
 情けないけど声が震える。
 正体不明のものに出会ったら、誰だってこうなるだろう。いや、言い訳してる場合じゃない。俺に逃げ道はないんだ、何かそれなりに対抗する手段を考えないと……。
 ああ、もう、剣戟の音がうるさくて考えが纏まらない。
 どんどん近づいてくるのに、どうしたら……。
 逃げ道を探すことに俺は必死で、近づいてくる者が誰なのかなんて頭になかった。ただただうるさいくらいの剣戟の音と、自分の心臓の音がわんわん鳴り響いている気がして……。
「あ……」
 バカみたいに間抜けな声が出た。
 目に映った者を穴が開くほど見てしまう。
 ソイツは、俺のよく知る姿。さっきまで思い浮かべていた理想。
「アー……チャー……」
 ほっとしたのかなんなのか、脱力してソイツを呼んだ。
 ぴたり、と足を止めたアーチャーは目を瞠っている。
 言葉もなく、俺はただ呆然とするだけで……、そうしたら、アーチャーはつかつかと大股で歩いてきて、目の前で止まった。
「あの、なん――」
 なんでこんなところにいるのかと訊こうとした俺を、アーチャーは息が詰まるほど抱きしめた。



■□■21th Bright■□■

「……アー……チャー……」
 掠れた声にエミヤは思わず腰を浮かせる。
「士郎?」
 そっと頬に触れれば、薄く開いていた瞼が、ぎゅ、と閉じられる。
「ああ、すまない、左側は見えないのだったな」
 再び少しだけ開いた瞼の奥で琥珀色の瞳がエミヤを捉える。
「たわけ……、無茶ばかりをして……、まったく、お前は、自分への配慮というものが抜け落ちている……」
 つい小言をこぼしてしまって、
「あ、いや、そういうことではなくて、だな……」
 エミヤは言い澱んで、士郎の頭をそっと撫でた。
「……ぁ……ちゃ……」
 目尻を伝ってこぼれ落ちた雫にエミヤはたまらなくなる。
「ああ、もう! まったく、お前は!」
 思い切り抱きしめようにも、士郎の身体は傷だらけだ。したがって、エミヤはその頭をそっと抱き寄せるにとどめるしかない。
「うぉっほんっ!」
 びく、とエミヤは顔だけを振り向く。そこには豊満な胸の前で腕組みをしたダ・ヴィンチが仁王立ちしている。
「あ……」
 士郎が目を開けたことで、ダ・ヴィンチがいることすら忘れ去っていたエミヤは士郎の頭を解放し、すぐに引き下がって側の丸椅子に戻った。
「感動の再会はまた後ほど、誰もいない時にでもしてくれたまえ。とにかく、主治医ではないけれども、私に診させてもらえるかい」
 ダ・ヴィンチは言いながら寝台に歩み寄り、士郎の身体のチェックを始めた。
「ふむ。どうにかなったようだね」
「では?」
「ああ、成功だ」
 ダ・ヴィンチはにっこりと笑んで答える。
「そ……うか……」
 ほっとため息をつくエミヤにダ・ヴィンチは微笑み、寝台から離れた。
「ま、士郎くんはまたリハビリだねぇ。よし。さ、もういいよ。感動の再会の続き、どうぞ」
「…………所長代理、そんなことを勧められても、だな……」
「そ? じゃあ、士郎くんに話してもいいかい?」
「ああ、そうしてくれ。手短にな」
「もちろんだよ」
 ダ・ヴィンチは大きく頷き、士郎にこれまでの経緯を掻い摘んで話し始める。エミヤの忠告通り、必要なことだけを伝え、詳しい話はまた後日、と、士郎の体調を慮って医務室を出て行った。
 エミヤが再び腰を上げようとすると、立香とマシュ、アルトリアとクー・フーリンがぞろぞろとダ・ヴィンチと入れ替わりで入ってくる。医務室はすぐに手狭になってしまった。
「マスター……、なぜ、彼女たちを……」
「いやー、断れなくてさー」
 立香がへらり、と笑って言い訳をする。
「貴方だけとはずるいです! 私もシロウの顔が見たい!」
「アルトリアさん! しーっ、です!」
「は! す、すみません!」
 アルトリアは、拳を握って意気込む声が大きい、とマシュに窘められている。
「んで、どうなんだ?」
 クー・フーリンがエミヤに訊けば、
「まあ、どうにか」
「動けるようになるのか?」
「傷がよくなればな」
「そっか。じゃあ、焼きそばは、もうしばらく我慢だな」